【85話後感想返信】エステラ、ナタリアに速読を学ぶ
エステラ「むわぁ~……」
ナタリア「なんですか、お嬢様。可愛い声を出して。私を誘っているのですか?」
エステラ「……冗談でもやめて……」
ナタリア「では、シャキッとしてください」
エステラ「朝からずっと細かい文字を読み続けてて、目が限界なんだよぉ……」
ナタリア「それは、お嬢様の読む速度が遅いからです。速く読めば、こんな仕事はすぐに片付いてしまいますよ?」
エステラ「そうは言うけどさぁ、内容をしっかり確認しながら速く読むなんて無理だよ……」
ナタリア「弱音なんて、お嬢様らしくもない! なんのために、今日は際どいTバックを穿いてらっしゃるんですか!?」
エステラ「か、関係ないでしょ!? …………って、なんで知ってるの!?」
ナタリア「この前の、彼とのデートの後、私に内緒でこっそりお買い物に行かれましたよね」
エステラ「……バレてたのか……でも、今日それを穿いてるっていうのはどこで?」
ナタリア「お嬢様の下着はすべて把握しております。穿かれていないすべてのパンツを調べれば、おのずと答えは導き出されます!」
エステラ「怖いよ、その記憶力!? そして無駄な労力っ!」
ナタリア「Tお嬢様。速読のコツをお教えしましょうか?」
エステラ「コツはいいから、Tお嬢様呼ばわりを今すぐやめてくれるかい?」
ナタリア「文章は、一行ずつではなく、ある程度まとめて見るのです」
エステラ「見る?」
ナタリア「書類の上に長方形のボックスをイメージしてください。その範囲を一度に見ます」
エステラ「そんなんじゃ読めないよ」
ナタリア「読むのではなく理解するのです」
エステラ「…………なんか、無理そうだな、速読」
ナタリア「少しお借りしてもよろしいですか?」
エステラ「ん? どうぞ」
ナタリア「では……」
――ナタリア、大型コピー機の自動給紙ばりの速度で書類をめくっていく
ナタリア「理解いたしました」
エステラ「速っ!? 本当に全部読んだの?」
ナタリア「読むのではなく、理解するのです」
エステラ「じゃあ、ちょっと貸して…………いい? 質問するよ」
ナタリア「どうぞ」
エステラ「じゃあねぇ…………モーマットからの嘆願書で……」
ナタリア「作業効率が上がり過ぎて手が空くものが出始めたから、という理由の新しい農地の開墾要請ですね。砂糖大根の栽培に備え、許可をお出ししてもよろしいと思われます」
エステラ「…………ちゃんと理解してる。八枚も先の書類なのに……」
ナタリア「ちなみに、三枚目の隅っこに書かれたお嬢様の落書き、『ふぇ~ん、もうお仕事したくないよ~ぅ』の横に描かれたお嬢様の自画像は、若干胸が大きく描かれています」
エステラ「そんなとこまで見なくていいから!」
ナタリア「ちなみに、昨晩のお嬢様の日記の一文。『お子様ランチに好きな人の名前が書かれた旗を立てて、全部食べると両想いになる……な~んて、ないよねぇ』という発想は可愛らしくて、私的に『有り』です!」
エステラ「なんでボクの日記を勝手に読んでるのさっ!?」
ナタリア「それから、最近ずっと穿かれていない、フリルが付いたピンクのパンツ、そろそろ穿いて欲しいです」
エステラ「もう速読一切関係ないじゃないか!?」