【46話後感想返し】『クロサギ』ならぬ、『クロズキ(黒好き)』
エステラ「ジネットちゃん。下着がなくなったんだって?」
ジネット「はい。干しておいたものが一つ……」
エステラ「ちょっと待ってね。ヤシロを呼んでくるから」
ジネット「待ってください! まだヤシロさんが盗ったと決まったわけじゃ……」
エステラ「ヤシロ以外に誰がいるのさ? 軽く拷問にかければすぐに自白するはずだよ」
ジネット「ですが、疑う前に何か別の可能性がないかを考えてみましょう。それからでも遅くはないと思います」
エステラ「『ヤシロが盗った』以外の可能性?」
ジネット「はい」
エステラ「……ヤシロが食べた」
ジネット「さすがにそれはないと思いますよ!?」
エステラ「う~ん………………風で飛んだ、とか?」
ジネット「同じ条件下で一枚だけが飛んでいくのは考えにくいです」
エステラ「ちなみに、なくなったのはどんな下着なんだい?」
ジネット「えっと…………その……レースの…………少し透けている……」
エステラ「ヤシロが犯人だね!」
ジネット「断言ですか!?」
エステラ「ジネットちゃんがヤシロを疑いたくないのは分かったよ。じゃあ、こうしよう。ヤシロにカマをかけてみるんだ」
ジネット「カマ……ですか?」
エステラ「陽動作戦さ。それで、怪しい動きを見せたら犯人だと断定してもいい」
ジネット「どんなことを言えば、ヤシロさんは騙されてくれるのでしょうか?」
エステラ「そうだな…………『大切なものが無くなった』と言ってみて、それで慌てたり、なくなったものが下着であることを知っていたら犯人だとみて間違いないだろうね」
ジネット「なるほど。犯人しか知りえない情報を知っているかを聞き出すんですね」
エステラ「出来るかい?」
ジネット「やってみます!」
エステラ「ヤシロは手強いよ。気を付けて」
ジネット「お手柔らかにお願い出来ないか、伺ってみますね」
エステラ「いや、それはどうだろうか……」
――そして、ヤシロの部屋へ……(エステラは隠れてこっそり様子を窺っている)
ジネット「ヤシロさん。ちょっとよろしいですか?」
ヤシロ「なんだ?」
ジネット「その前に、出来ればお手柔らかにお願いします」
エステラ「(それは言わなくてもいいってばっ!)」
ジネット「実はですね!」
ヤシロ「干していた下着がなくなって、俺が犯人ではないかと探りを入れに来たわけだな」
ジネット「なぜそれを!?」
ヤシロ「いや、丸聞こえだったぞ。密談するなら場所を選べよ」
ジネット「そ、そうだったんですか……」
ヤシロ「ふ……悲しいぜ。お前たちに、そんな目で見られていたなんてな……」
ジネット「い、いえ! 決してそのようなことは……!」
ヤシロ「俺が、ジネットの勝負下着であるスッケスケの黒いTバックを盗んだだなんて!」
ジネット「そんな下着は持っていませんよ!?」
ヤシロ「面積が狭いわ、透けてるわで、もうほとんど穿いてないのと同じみたいなパンツを!」
ジネット「やめてください! 人に聞かれたら誤解されます! 穿いてませんよ、そんな下着!」
ヤシロ「ジネットは下着を穿いていない!」
ジネット「違いますっ! 穿いてます!」
ヤシロ「じゃあ、ちょっと見せてみろ!」
ジネット「分かりました! ちょっと待っててください。今スカートを脱いで…………って、見せられるわけないじゃないですか!?」
ヤシロ「分かったって言ったのに!?」
ジネット「ついです、つい! もう、懺悔してください!」
ヤシロ「お前たちが、俺が犯人だと決めつけるから意地悪したくなっただけだ」
ジネット「それは……確かに申し訳ないことをしました。決めつけはよくないですよね。ヤシロさん。どうもすみませんでした」
ヤシロ「分かってくれればそれでいいんだ」
ジネット「もう一度、庭に落ちていないか、確認してきますね」
ヤシロ「あ、その前にジネット。これを」
ジネット「これは?」
ヤシロ「今朝、中庭に干してあったお前のパンツだ」
ジネット「さっき盗ってないって言ったじゃないですか!?」
ヤシロ「『盗ってない』とは言ってない! 『盗ったと思われて悲しい』と言っただけだ!」
ジネット「でも、盗ったんですよね!?」
ヤシロ「盗った盗らないは重要じゃない! 盗ったと思われたことが悲しいのだ!」
ジネット「もう! ヤシロさん! 懺悔してください!」
ヤシロ「それから、これをエステラに渡しておいてくれ」
ジネット「……これは?」
ヤシロ「下着だ」
ジネット「まさか、エステラさんのまで!?」
ヤシロ「真っ黒でエッロエロのパンツだ。広げて見てみろ」
エステラ「ちょっと待ったぁ!」
ジネット「きゃっ! エステラさん!?」
――エステラ、下着を強奪。
エステラ「な、ななな、なんで、こ、こんなものがここに……っ!?」
――エステラ、下着を広げて見てみる…………と、黒く、股間に卑猥な刺繍を施したトランクス
ヤシロ「真っ黒でエッロエロの『俺の』パンツだ」
エステラ「紛らわしいよっ!」
――エステラ、パンツを床に叩きつける。
ヤシロ「折角やると言っているのに」
エステラ「いらないよ!」
ヤシロ「しかし、さっきので焦ったということは…………お前、持ってるな? 真っ黒でエッロ……」
エステラ「わぁー! ジネットちゃん、行こう! これ以上ヤシロと絡んじゃダメだ! ボクたちが損をする!」
ジネット「は、はい! ではヤシロさん、失礼します!」
ヤシロ「おー! それから、慣れないことはするもんじゃねーぞー!」
ジネット「はい! ご教示、ありがとうございました!」
エステラ「礼なんか言わなくていいんだよ、ジネットちゃん!」
ヤシロ「エステラの黒好きー!」
エステラ「うるさい! エッチ! バカ! こむら返りになれ!」
ヤシロ「おぉう…………この世界にもあるんだ……こむら返り。気を付けよ」