【84話後感想返信】追伸が長いジネットの手紙
ジネット「ふんふっふ~ん、ふんふっふ~ん、ふんふっふ~ん、ふんふっふ~ん……」
ヤシロ「……なぜ鼻歌がワルツ調……?」
ジネッ ト「あ、ヤシロさん」
ヤシロ「何やってんだ?」
ジネット「シスターにお手紙を書いているんです」
ヤシロ「会いに行けよ!? すぐそこだろう、教会!?」
ジネット「いえ。でも、たまにはお手紙もいいかなと思いまして」
ヤシロ「まぁ、手書きの文字は心が伝わるっていうからな」
ジネット「それで、おかしなところがないかを確認していただけませんか?」
ヤシロ「俺が?」
ジネット「はい。お願いします」
ヤシロ「分かったよ。じゃあ、ちょっと読んでみろ」
ジネット「では……こほん。『シスター。お元気ですか? わたしは今日も陽だまり亭のお仕事を楽しくやっています。お仕事があるというのはとてもありがたいことですね。シスターに教わった他人を慈しむ心を大切に 、今日もお仕事に精を出したいと思います。――追伸。最近は川魚がとても美味しいですよ。教会のみんなで魚釣りにでも行ってみてはいかがですか? あ、でもその前に領主様と川漁ギルドの方に川での漁を行う許可を取ってくださいね。もっとも、しっかり者のシスターのことですからその点は抜かりないでしょうが、念のため。少々おせっかいが過ぎたでしょうか? そこがわたしのいけないところかもしれないなと、最近反省することもあります。この間も、ヤシロさんが湯浴みをしたいとおっしゃったのでお湯を沸かし、大きなタライにお湯を張ったのですが、……余談ですが、陽だまり亭では各部屋で湯浴みを行うようにしています。浴場は設けず、各人で入浴後の片付けを行います。なかなか苦労しますが、湯浴みの気持ちよさのためなら頑張れます。――話が逸れてしまいましたね。すみません。それで、この間、ヤシロさんに湯浴みのご用意をして差し上げたのですが、わたし、うっかりとお湯加減を確認するのを忘れてしまいまして……それで慌ててヤシロさんにその旨をお伝えしようとしたのですが……扉を開けた時、ヤシロさんはちょうど服を脱がれている途中で、上半身が露わになっていました。わたしは、ヤシロさんのお着替えを覗いてしまったのです。手紙という形ではありますが、その件に関して懺悔をさせてください。……全能なる精霊神様、罪深きわたしの懺悔をお聞き届けください。願わくは、この身の汚れが浄化されんことを……それでですね、わたしは「きゃー」と言い、ヤシロさんは「うわっ」と言いましたが、わたしはやはりお湯加減が気にかかりましたので、お部屋にお邪魔させていただき、お湯加減を確認したんです。そうしたら、ちょうどいいお湯加減で、これならヤシロさんも気持ちよく入浴出来るだろうと一安心しました。シスター。お体には十分お気を付けください。では。かしこ』」
ヤシロ「追伸、長いわっ!」
ジネット「あぅ、いえ、その……書いているうちにどんどんと楽しくなってしまいまして……」
ヤシロ「お前、追伸で三枚使ってんじゃねぇかよ!?」
ジネット「随分と推敲したのですが……」
ヤシロ「なぁジネット」
ジネット「はい」
ヤシロ「行って直接おしゃべりしてこい」
ジネット「そうですね。はい、そうします」
ヤシロ「…………すげぇ無駄な時間を過ごしてしまった……」