【80話後感想返信】ネックとチックがお金持ちになったら
――ある日の四十区
ミリィ「ネック、チック。こんにちは」
ネック「Hi! ミリィ! ご無沙汰だね!」
チック「僕は昨日、とても一生懸命算数の勉強をしたよ」
ミリィ「算数……みりぃ、苦手…………チックはえらいなぁ」
ネック「僕も勉強をしたんだよ」
ミリィ「なんの、勉強?」
ネック「美味しい野草の研究さ」
チック「聞いてくれよミリィ。ネックはずっと食べ物を食べてばかりいるんだ」
ネック「HEY、チック。当り前じゃないか。だって、食べずに飲んでいたら、それは食べ物じゃなくて飲み物になっちゃうだろう?」
チック「オゥ、ゴッド! こいつは一本取られたぜ!」
ミリィ「……あの、野草……とか、食べてるの?」
ネック「そうさ。ミリィも昔、一緒に食べたろう。花摘みにいって、山の中で」
ミリィ「うん……ネックは食べられる野草に詳しかったね」
チック「そこだけは、ネックに敵わないところだね」
ミリィ「でも、もう、そんなものを食べなくても、美味しい物沢山食べられるよね? お金、いっぱい稼いでるんでしょ?」
ネック「確かに。てんとうむしさんといい人のおかげで、僕たちの暮らしは楽になったよ」
チック「あの二人は神様みたいな虫と人だよね」
ミリィ「チック……てんとうむしさんも人、だよ……?」
ネック「でもね、僕はどんなご馳走よりも、あの頃……、まだ小さかった頃に三人で食べた野草の味が一番美味しかったって思うんだ」
ミリィ「ネック……」
チック「だから、僕たちの暮らしは前と何も変わってないんだよ。お金は、畑の設備と、これから砂糖大根の栽培を始めようって人のために使ってるんだ」
ミリィ「ぇ……そうなの?」
チック「だって、みんなで幸せになったら、街全部が幸せになるだろ?」
ネック「『僕たちだけが幸せ』よりも『みんなで幸せ』が最高にクールだよな!」
チック「いいや、とってもホットさ!」
ミリィ「でも……あの…………四十区の人って…………昔、二人のお父さんを…………」
ネック「確かに、父さんは騙されたのかもしれない。けど、それが悪いことだとは思わない」
ミリィ「……どうして?」
チック「だって、そのおかげで、いい人やてんとうむしさんに会えたんじゃないか。僕たちは最高にハッピーさ!」
ミリィ「…………すごい。二人とも、かっこいい」
ネック「おいおい。褒めたって鼻血しか出ないぜ」
チック「僕はエクトプラズムを出せるぜ」
ミリィ「ぁう……どっちも、出さないで、ね?」
ネック「お金はね、ミリィ。必要な人が使えばいいんだよ」
チック「お金じゃ買えないものを、僕たちはいろんな人からもらったんだ。もう十分さ」
ネック「って、言えるのも、お金があるからなんだろ、この成金野郎!」
チック「あぁそうだよな! 余裕かましてるんだろ、この成金野郎!」
ミリィ「……くすくす……二人とも、変……っ」
馬「ブルヒヒヒーーンッ!」
ミリィ「きゃっ!?」
――突然、どデカイ馬車が畑に横付けされる
ミリィ「……な、なに?」
ネック「おっと、もうそんな時間か。ミリィすまない。ビックリこきまろだったな」
ミリィ「ビックリ……え、なに?」
チック「まったく、ウッカリこきまろだったぜ」
ミリィ「ウッカリ……え、なに?」
ネック「こうしちゃいられない、さぁ、チック。急ごう!」
チック「あぁ、急ごう!」
ミリィ「ね、ねぇ! どこ行くの?」
ネック「陽だまり亭さっ!」
チック「朝昼晩と、マグダたんに会うために、毎日馬車で通っているんだ!」
ミリィ「…………え?」
ネック「さぁ、御者さん! フルスピードで頼む!」
チック「ランチタイムは待っちゃくれないんだぜ、御者さん!」
御者「特急料金が発生しますが、よろしいですか?」
ネック・チック「「オフコース!」」
御者「アイアイサー! ハイヨー!」
――馬車、ネックとチックを乗せて、猛スピードで走り去っていく。
ミリィ「…………なりきんさん、だね……二人とも」