【80話あとがき】こんな男子会はいい……
――夜。陽だまり亭二階・ヤシロの部屋
パーシー「なんだよぉ、狭い部屋だなぁ」
ベッコ「左様でござるか? 拙者、これくらいが最も落ち着くでござるが」
ウーマロ「オイラは、もうちょっと広い方がいいッスね。大きいソファが置きたいッスから」
ヤップロック「我が家は個室がありませんので。羨ましい限りですよ」
アッスント「私は水洗トイレに興味があるんですよ。夜、トイレに行く際、どれほど便利なのか……是非検証してみたかったんです。飲み物、取っていただけますか?」
セロン「あ、はい、どうぞ」
アッスント「どうも」
セロン「僕なんか、家を出る時に彼女にすごく羨ましがられましたよ。『英雄様の部屋にお泊まり出来て羨ましい』って」
ベッコ「うむ! その気持ちは痛いほど分かるでござる!」
ヤップロック「あ、それはウチも同じでしたよ。妻と子供たちがうるさくて……『お父さんだけズルい』と。いやぁ、困りましたよ。あははは」
ベッコ「むむむ! その気持ちも痛いほど分かるでござる!」
モーマット「なぁ、ヤシロ。すまねぇが、俺ぁ先に寝ちまっていいかな? 明日は朝一でベニバナ摘みなんだ。…………ふゎぁあ……もう、眠くてよ」
アッスント「おや、ダメですよ、モーマットさん。これからみなさんで恋バナをするのですから」
モーマット「でもよぉ、アッスント。俺らがそんな話で盛り上がると思うか?」
アッスント「盛り上がるのではなく、『盛り上げる』のです」
モーマット「あほらしい。俺ぁもう寝るぞ!」
アッスント「……ならば。『精霊の……』」
モーマット「ちょっ!? お前、何やってんだ!?」
アッスント「今日という素晴らしい日を台無しにする行為……たとえこの身がカエルになろうとも、見過ごすわけにはいきません!」
モーマット「お前、ちょっとどうかしちまったんじゃねぇのか!?」
ベッコ「あいや、待たれい! 拙者はアッスント氏を支持するでござる!」
モーマット「マジかよ!?」
ヤップロック「私もです!」
セロン「もちろん、僕もです!」
モーマット「……もう、好きにしろよ……」
パーシー「あ~……オレは、別にどっちでもいいんだけどよぉ……あ、でも、恋バナってことは…………オレ、ネフェリーさんの話を…………むっほゎぁあっ! 照れる! 照れるぜ!」
ウーマロ「オイラは、マグダたん一筋ッスから、照れることなんて何もないッス」
モーマット「俺ぁ別に好きな女なんていねぇぜ?」
アッスント「いいのですか? そんな『嘘』を吐いて」
モーマット「なっ…………ななな、なんのことだよよよよよ……」
アッスント「モーマットさん…………あなた、領主の娘さんのことが……」
モーマット「どぉぉぉわぁぁぁぁぁぁあああっ! な、ななななな、なんで知ってんだよ、お前が、そんなことっ!?」
ウーマロ「ぅへぇ~! 領主様のお嬢様ッスか? 無謀ッスね~!」
モーマット「うっせぇな! ただ憧れてるだけだよ! いいだろうが、別に!」
パーシー「そんなに美人なのか?」
モーマット「そりゃあ…………言い表せない美しさだぜ……」
パーシー「へぇ~……ま、ネフェリーさんには敵わないだろうけどな」
モーマット「はぁ!? あんなニワトリと一緒にすんな!」
パーシー「オィ、テメェ!? もう一回言ってみろっ!?」
モーマット「あぁ、言ってやるぜ! あんな獣特徴出まくりの男っぽい女と、精霊の如く美しいお嬢様を比べんなつったんだよ!」
パーシー「そこがいいんだろうがぁ! あの、獣特徴がよぉ! 表出ろ、ワニ! ぶっ飛ばしてやる」
モーマット「望むところだ!」
ベッコ「落ち着かれよ、お二人とも! 恋バナは皆で楽しく、きゃっきゃうふふしながらするものでござるよ! そうでござるよな、ヤシロ氏!?」
ヤシロ「つうかお前ら、全員帰れよ! 狭いんだよ!」
ベッコ「しかし、ジネット氏たちがお泊まり会をすると聞いて、こちらでも開催しようという流れになっていたではござらんか!?」
ヤシロ「俺は許可してねぇ!」
アッスント「ヤシロさん。大丈夫です。……そのうち慣れますよ」
ヤシロ「帰れぇぇええっ!」