暗闇
暗闇の中、誰かの泣き声が響く。
ーーごめん、ごめんね。
僕は何をしても平均以上できる子供だった。小学生の時は授業内容が理解できない友達が理解できなかったし、運動神経も良かった。でも先生はそんな僕が邪魔だったみたい。
ーーなんでだよ。
テストで満点取っても何も言われない。小学校の勉強だけじゃ物足りなかった。もっと難しい、まわりの友達には絶対解けないくらい難しい問題がやりたい。そしてそれを解いて、自分を認めてもらいたかったんだ。
ーーねぇ、どうしたの?
僕は中学受験をした。勉強すればするほど成績が上がるのが楽しくて。努力を認められてる気がして。気付けば放課後も休日も塾で勉強していた。そのうち、気づかなかったけれど、目標が「中高一貫に行く」ではなく「難関校に合格する」に変わっていたんだ。
ーー私の所為・・・?
僕は県内トップクラスの学校に合格した。もちろん嬉しかった。やっと解放される。これからはレベルの高いことができる。そう思っていた。でも現実は厳しかった。井の中の蛙の僕は、ほぼ同じ学力を持つ集団の中で初めての挫折に驚き、戸惑い、焦り、逃げた。僕が弱くて。僕が愚かで。
ーー何か言ってよ…。
今となっては言い訳になるけれど。僕が認めて欲しかったのは「勉強ができる僕」じゃなかったのかもしれない。例えば、「親が共働きだから鍵っ子なのは仕方がない」ではなく「この村は鍵っ子が少ないのに偉いね」みたいに、まわりとちょっとだけ違うところ。そんな小さなことすら認めてもらえないことが悔しかったのかもしれない。みんなは放課後お母さんが家にいるのに。僕はひとりぼっちなのに。それが募って、受験勉強に逃げたのかもしれない。わからない。
ーー今まで頑張ったね。お疲れ様。