8話
小門をくぐり、街の入口の広場には3台の車が用意されていた。
そのうちの1台に俺達と神官が乗り込み、俺達の車を警護するように前後にオープンカータイプの車に先程のアルス協会のハンター達が乗り込む。それを先程の兵士達が無表情で見送っていた。
大通りを進みながら俺達は会話をせず黙って街の景色を眺める。
チョコとベリーにとっては初めて見る普通の街だ。本来であれば色々と声をあげるところなのだろうが状況も状況だし無理も無い。
俺は5才まで普通の街で家族と暮らしていたから、違う街だがなんとなく懐かしい。
この世界は元いた現代日本の世界より技術力が進んでいる。初めてそれを知った時はビックリしたものだ。普通、漫画や小説では魔法のある世界は中世くらいの生活で、転生者やその世界に落ちてきた人は現代技術や知識を利用して無双するものだが、ここはどちらかというとSFの未来世界だ。ムリ!
今乗っている車も車輪がついてなく30センチくらい浮いている。軍は数は少ないがいわゆる人型機動兵器アームゴーレム、アニメのロボットみたいなものまである。まあパイロットの適性やら使用におけるコストなどなど色々な諸事情により世界中に普及はされてはいるが戦闘現場に出張ってくることは少ない。基本各国の妖魔や魔獣の防衛に配備されている。
ちなみに当然というか、かわりに金属資源が少ない。街の外は妖魔や魔獣が徘徊する世界だ。当然そうなれば安全な鉱山が少ない。
そのせいか逆にセラミック技術が発達し日常生活にはさほど困ることはない。それに妖魔を倒すと砂のように消滅し、かわりに残すラクリマの存在が大きい。
このラクリマは色々な汎用性がある。
たとえば古代アルブ族が残したチャントと呼ばれる特殊な魔法の内、複製の魔法がある。この魔法は、食糧や生命に関する物以外なら、ラクリマの質と量しだいで複製したい物がその場にあれば同じ物ができあがる。それこそ只の金属だけではなく、大量にラクリマが必要になるがオリハルコンやヒヒイロカネも(あるんだなぁ、さすがファンタジー世界)製作可能だ。なので鉱山ナシでも一応やっていける。
それとラクリマには魔力を貯めておける性質がある。いわゆる電池やバッテリー、タンクみたいなもの。ビーダマくらいの大きさでも、いくつものラクリマを融合し質を高めれば、かなりの量の魔力を保持できる。
さらに何某かの術式を書き込み魔道具としても使用できる。
まさにこの世界の必需品のひとつだ。
「見えてきました。あそこが神殿です。」
そうこうしている内に神殿に着いたらしい。車を降り神殿を見上げる。かなり大きいが細部を見渡す余裕は無い。
(あぁ。いよいよかぁ。なんか緊張してきたなぁ・・・)