6話
リガディルと別れ街の方へと歩き出す。古龍がさっきまでここにいたせいか、魔獣の姿が見えない。
基本的に半数ちかくの魔獣はむやみに人を襲ったりはしない。自身の食料を求めての狩りだけだ。
それに魔獣の中には捕縛して飼いならし、一部では騎獣や地上での生活のお供として、さらに稀だがベリーみたいにハンターの共として戦う”賢獣”と呼ばれる魔獣もいる。
逆に人間や妖魔を好んで襲い、その魔力を喰らおうとする魔獣もいる。
辺り一帯を見渡せる開けた高原の中、妖魔も見当たらず無事に街の手前まで1時間も掛からずに着いた。どこの都市国家もそうだが、街全体を大きな城壁で囲み、妖魔や魔獣が近づかないよう大掛かりな結界が張ってある。そして、先程まで古龍がいたせいか、街の大門は閉まっていた。
隣の小門の所にウィンドウが開き、見た感じ隊長クラスの人間の映像に現れた。
「トーリアへようこそ。すまないが先程巨大な龍がこの街の近くで観測された。君らにも見えただろう?というより、その龍がいた方から来たようだが何か知っているかね?」
(や~ぱり、警戒しているよ。)
「はい。とりあえずこれを見てください。」と、自分の首に巻かれた隷属の首輪を指差す。
「これは隷属の首輪です。私達をしばっていたステリアの者達は、この間のクーデターでの敗走中に亡くなりました。先程の龍は私の賢獣を通じてその背に乗せてもらい、運良くここまで逃げてきました。神官の方に解呪を受けたいのですが、通していただけますか?」
「・・・しばらくお待ちください。」
チラッとチョコとベリーを見てそう答えてウィンドウが閉じる。
「やっぱり、パッと見じゃわからないか。」
「そりゃそうよ、世界協定で奴隷制度はもう1万年前に廃止されていたんだから。ちゃんと調べないと解らないんじゃないかな?それにわたしとベリーが不審の元みたいだしね。」
「・・・とりあえず、うまく中に入って解除できればいいなぁ~。」
しばらくすると小門が開き中へと案内された。
「それではこちらに武器とストレージリングを預からせて頂きます。」まわりに10人程の兵達がさりげなく付き従っている。当然、見えない所にも兵を待機させているのだろう。
「お断りします。」
今まで案内役をしていた隊長格の人は、目を細めてこちらを見てくる。しかし、俺としてもここは譲れない。ストレージリングは指から外したとたんに、今まで収めた物がその場で出てきてしまうのだ。ここで古龍を晒す訳にはいかない。
「私達の首輪は、今、契約をしていない状態です。言ってはなんですが、ここで武器を手放した時、いつ誰が私達に新たな契約の呪縛を押し付けてくるかわかりません。この武器が私達が自由を取り戻すための生命線です。見ず知らずのものに預ける気はありません。」俺は決意を固めた声で話した。
実際決意を固めているのは古龍の素材の方を隠すことなのだが、”あらかじめ用意していた言葉”を聞いた者には、その意志をちゃんと勘違いして受け取ってくれているようだ。
隊長格の男はともかく、まわりの兵士達はポーカフェイスを貫こうとしているのが、みえみえだ。
「街中に入れないのであれば、申し訳ございませんがどなたか解呪の魔法が使える神官の方を、街の門の外まで連れて来ていただけますか?」勤めて冷静に言ってみる。
「それはできない。もう夕暮れだ。夜はさすがに門の側でも危険がないとはいいきれない。」兵士は淡々と答える。
「わかりました。では明日の朝、門の前でお待ちしていますと神殿の方へ伝言をお願いします。」そうして俺はチョコとベリーを連れて外へ出ようとする。
「待ちたまえ!何を勝手に決めている!ここで武装解除しなさい!」隊長格の男は慌てて声を怒鳴りあげる。
「はっきりいって、あなたがたの態度は信用できません。失礼します。」ここぞとばかりに俺は門の外へとチョコとベリーをつれて戻っていく。
隊長格の男は顔を怒りにそめ、今にも剣を抜き、無理矢理捕らえようとする勢いだ。
「私達は明日の朝、神官殿がこちらに来ませんでしたら、このまま他の町で解呪してもらいましょう」
そう捨て台詞を残し、門の外へと出て行った。
予想以上に読んでくださっている方がいるようで、ありがとうございます。
がんばって書き続けますので、よろしくお願いします。