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one of the zillion ~アルス戦記~  作者: 粋生
第1章 奴隷と賢獣と人造精霊
23/24

22話

今日はいよいよ迷宮への初挑戦をする。

俺の目標”25才からの悠々自適老後生活計画”のはじまりの日だ。


家からバスに乗ること30分、都市の西の外れにある世界最古の迷宮の一つ”終りの迷宮ファーストダンジョン”にたどり着く。

ここは1600階層ある大迷宮らしい。大昔に英雄2人だけが、最下層の最奥の間に到達したことがあるらしい。

現在のトップ攻略組が、アルス協会の精鋭アルスナイツで、400階層あたりまで活動している。

迷宮内では色々な素材が取れるらしく、そこまで到達すれば迷宮内でとれる全ての物が採取できるそうだ。なのでそこから先の階層は深入りせず、1階から400階までが主な探索階層となっている。


バスを降りると目の前に永い年月を感じさせる古い建物があった。迷宮の入口”アルス協会探索支部”である。

さっそく中に入り、受付に声をかける。


「すいません。初めてなんですけど・・・」


「はい。迷宮探索ご希望ですね?ではまずこちらにカードの提示をお願いします。」


俺とチョコがカードを渡すと受付の職員がハンターかどうか確認する。


「はい。ありがとうございます。このまま奥に行きますと改札口があります。そちらでお一人づつカードを当てると通行できるようになります。改札を抜けますと迷宮内への入口”ポーター”がありますのでそちらから迷宮へお入りください。

なお、迷宮探索からの帰りは別の改札口から出ていくことになりますが、そちらでもカードの提示が求められます。これは誰が迷宮に潜っているか、無事に帰還できているかを確認する為です。


迷宮は毎月13~15日の間は変成期がありますので、その間は迷宮ないには入れません。ちなみにその期間中に迷宮に取り残されていますと、助かりませんので変成期の前に長期の探索はお気を付けください。それと変成前と後では迷宮内での地理が変わっていますので、お忘れずにお願いします。


なお、迷宮内で取得できましたアイテムは、出口改札を過ぎまして買い取りカウンターが奥にございますので、そちらで買い取らせていただけます。なにかお持ちになりましたらお寄りください。もちろん、そのままご自身でお持ち帰りなされてもかまいません。ただし、カードの星の数にも影響ございますのでご留意ください。


あと、迷宮内でIDカードを発見しましたら必ず受付までお持ちください。死亡確認をとりまして、カード内残金1割を拾われた方に謝礼金としてお受けいただけますので、よろしくお願いします。

ここまで、何かご質問等はございますでしょうか?」


「・・・いえ。大丈夫です。」


「また後日ご質問等がございましたら、当受付または当迷宮探索ホームページにてご確認ください。それでは無事の帰還と成功をお祈りいたしております。」


「・・・ありがとうございます。」


朝から初めての迷宮挑戦であり、ハンターとして生きていく記念すべき第1日ということもあって結構緊張していたのだが、ここでまさかの事務説明で気がそれて、すでに昨日の夜にホームページをチェックしていた俺はもう疲れてしまった。

いや、大事なのはわかるんだが・・・調べてきたし・・・


(あ~、俺のやる気よ・・・帰って来い・・・)




受付をすませ通路を奥に進むと、いくつもの自動改札機がある。アイラは精霊なのでそのまま通過させ、俺は肩にベリーを乗せ、改札を通る。


(ああ、前世で毎日スイカで通勤してた時を思い出すなぁ)


そのまま進みすぐ角をまがると、地面に白く淵が光っ丸い魔方陣のようなものが見えてきた。どうやらこれがポーターのようだ。


「あれか?」


「そうみたいね。」


「ふむ。わらわも数万年いきておったが迷宮にふみ入れるのはじめてじゃの。前は体が大きすぎてポーターに体がおさまらんかったからの。」


「あぎゃぁ。」


「まあの。そうゆうでない。」


「そんじゃ、いってみますか?」



俺たち4人?はポーターへと足を踏み入れる。


一瞬煙のように光が舞い上がったかと思うと、そこは小さな小部屋に景色が変わっている。向かいには灰色のまるで液体のような光の膜が門の形に張ってあり、どうやらそこが入口のようだ。


「よし、いくぞっ!」


そういって、膜の門を潜り広いホールにでる。四方には同じ膜の門がありどうやら全て小部屋ならぬ大部屋で区切られているようだ。さっそく、どの門を選んで進んでいくか決めなければならないようだ。


「どうしよっか?」


「そうね。べつに時間制限があるわけじゃないんだし、どれでもいいんじゃない?罠とかないんでしょ?」


「まぁ、そうだな。よし!ベリー、今日はお前の好きな方へ行っていいぞ。」


「あぎゃぁ。」


ベリーはキョロキョロと四方を見回し右の方を選んで飛んでいって振り返った。


「よし、いきますか!」


妖魔と魔獣は似ているようだが、わかりやすい特徴の違いがある。まず妖魔は全種類、目が赤い。そして倒すと光をともなう砂のように消えていきラクリマを残す。

魔獣は倒しても消えたりしなし、目も赤くない。せいぜい興奮して目が赤く血走るくらいだ。


そんな妖魔が門を潜ると人の子供位のサイズで、ネズミのような姿で出迎えた。

数は6体。

俺はすぐさま右手を1体の妖魔にかざし、思考操作で破邪弾の魔術をまるでトリガーをひくように発射した。発射された光の弾丸は、まっすぐと狙い通りに1匹の妖魔に当たり、一撃で砂のように消えていった。


同じ様にチョコもすぐさま対応していて、3体の妖魔を撃ち倒していた。俺が狙って1体を倒すのに3体を倒すのが同時なのも技量の差が如実に現れている。当然、全て一撃。


残り3体は撃っている間に俺達との距離を詰めてくるが、俺たち2人が最初の3体を打ち倒している内にアイラとベリーもすぐさま行動を起こしていて相手妖魔に飛び出し、ベリーはその身に破邪の力をオーラのように纏って敵に強力な爪をすり抜け様に切り裂く。アイラはなんとただのパンチ。お互いその一撃で、妖魔が俺とチョコのところに到達する前に倒してしまった。


「ふ~。心臓に悪いな。門を潜ったとたんに戦闘開始か。これから先もこんな感じなのかな?」


「どうだろ?まあ少なくとも150階層位までの妖魔なら、今の一撃を見るとたぶん全部一撃で倒せるわよ。」


「まじか?!じいさんに言われたようにレベル1に設定してんのに・・・」


「まあね。っていうか、完全オーバースキルだわ。もっと威力を落とせないの?完全に力の無駄使いよ。」

チョコが呆れて言ってくる。


「いやぁ、一応あるけどじいさんの設定だとこれより下は対人用の気絶レベルになってんだよなぁ。実際、破魔弾のレベル1と同じ力しか消費してないし・・・」


「破魔弾のレベル1って対人用の気絶レベルの威力なんだけどねぇ。同じエナジー量でもアンタのは、破魔弾のレベル5クラスの威力があるわ・・・」

なんだかウンザリしながら言ってくる。


「でも、これで安全にいけるってことが証明されたな!俺のラクリマはレベル4を使用しているから、レベル1の弾なら単純計算で片手分で480発、両手合わせて最高960発は撃てる!もしかして、俺の無双のはじまりかっ!?」


「アイラ、ベリーお疲れ様。うまく射線上に入らずに飛び込んでいけたわね。すごいわ。」

シロウのセリフにかまわず、アイラとベリーに話しかける。


「これくらい、わらわにとっては造作もさいことじゃ。」


「あぎゃぁ。」


(来たかっ!俺の時代っ!しかもっ!25才からの悠々自適生活も見えてきたぞっ!)





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