21話
神殿の人達と再会を約束して別れ、空の旅にて一路ハンターのメッカである解放都市に着いた。カオルも一緒だ。なんでも夏休みの課題があるので、一時帰郷も終りだとのこと。
「あ~、やっと着いた~。」
「ほんとじゃの。以前のわらわなら、もっとはよう着いたもんじゃがの。」
空港では魔工士のじいさんの弟子であるムタンさんがプラカードのようにウィンドウを開き出迎えてくれた。
「おお、ようこそ解放都市へ。今日は俺が案内役をするんで、よろしくな。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
なんでもこの人アルス協会所属の魔工士らしく、協会側が気を付って俺達と関係あるじいさん経由で派遣されたらしい。
「ごめんなさい。ボク、これから友達と前から約束があってこのまま行かないと・・・」
「いや、べつにいいって。俺たちが急に高原都市に来たことだってわかってた訳じゃないんだしさ。」
「すいません。でも来月には時間が作れますのでその時にはまた改めてこの街や学園をご案内しますね。」
「ええ。その時にはお願いするわ。またね、カオル。」
この後、ムタンさんには長期契約可能なアパルトマンを紹介してもらい、1番安い区画、都市南東部の部屋を半年契約で借りた。学園も近いので通学にも便利だろうとのこと。
本当はチョコには学生寮を用意してくれていたのだが、アイラと一緒にいられなくなる為、目を光らせてゴネて、わざわざ広い部屋を借りることになった。無駄な出費である。
家具付きの部屋で、別に広い倉庫が付いていたのがありがたかった。チョコが今までストレージしていた、解体してあった肉を仕舞う。倉庫はストレージリングと同じように粒子化して仕舞える嬉しい機能付きだ。
ムタンさんには魔工房の場所と、来月の下旬に学園に行き簡単な編入試験と、その時に学園の制服と備品を受け取ることなど色々教えてもらった。なんでも息子がアルス学園で魔工学を専攻して通っているそうだ。なにか学園でわからないことがあれば、いつでも聞くといいと言われ、俺達はお礼をいってムタンさんは帰っていった。
とりあえず住む所も決まったし、生活用品の買い物と昼食をかねて街へとくりだした。
街は高原都市よりも賑わい、道行く人々の好奇の視線をいつも通り浴びながら買い物と昼食をなんとか済ませた。
ちなみに金銭管理は俺である。
だって、チョコってお金を使った事がなくて金銭感覚0なんだもん。アイラの専用食器に一個千L以上のを購入しようとするんだもん。貧乏性の俺は泣きそうになった。ちなみに1L10円位の価値だ。俺が泣きそうになる気持ちも少しは分かるだろう。
『アイラ、それはダメだっ!あっちのにしなさいっ!高すぎるっ!』
『うむ。わらわも、これはのう・・・』
「母、カップや皿はそれでよいのじゃがスプーンとフォークはあれがよいのじゃ。」
『おお~いっ!よくないっlよくないっ!気に入らないのは、それだけかよっ!しかも、スプーンとフォークはそっちの方が高いじゃねえかっ!』
『こまかいことを気にするな、父。』
念話でアイラにあっちの安いのを勧めるよう、うまく駄々をこなさせようとしたが逆に高くついた。
結局、高価な物はそれだけにすませ、安物しか売ってなさそうな店を見つけて、その他の物はなんとか事なきを得た。
・・・凄い疲れた・・・
その日の夕飯、チョコがキッチンに立つ。
出てきた物は、俺にはただ焼いてソースをかけた古龍のステーキ、ベリーにはいわゆるペットフード、そして、アイラは市販の離乳食。チョコ自身もインスタント食品だ。
「あ~、なんか俺だけ豪華に見えるんだが?いいのか?」
「そう?別にこんなもんじゃない?食事って?神殿でも食事はこんな感じだったじゃない。」
(確かに、神殿でも食事はパンとスープにおかずが一皿だったけど・・・そういや、昼飯もチョコは質素だったな。奴隷時代の食事しか覚えてないのか?離乳食なんてもの知ってるくせに。まあ、おいおい環境に順応していくだろう。)
「「「いただきます!」」」
「あぎゃぁ!」
何気に俺達はしっかりいただきますを言う。アイラもしっかりとチョコのスパルタ教育?の結果がでている。意外といい母親なのか?
「うっ、うまいっ!こんなステーキ今まで食べたことがないぞっ!!」
「そう?単に焼いてソースかけただけなんだけど。よっぽどいい肉なのね。」
「ああっ!いやっ!すげーよっ!マジでうまいっ!さすが古龍の肉っ!まさに、キング オブ 肉だっ!!最高だっ!!うまうまっ~!」
「・・・・・・父よ・・・娘の前で娘の肉をおいしそうに食べるのはどうかと思うのじゃが・・・」
「何を言う娘よっ!父はお前を褒めているのだっ!!まさに”キング オブ ドラゴン”!!最高だっ!!さすがは竜王と言われていた事はあるっ!アイラッ!!もっと誇れっ!喜べっ!お前は最高だっ!!」
「うむっ!そうであろっ!わらわは、りゅうおう!最高じゃっ!もっとほめれ?たべれ?わらわは最高じゃぁっ!!」
アイラの高笑いが鳴り響く・・・・・・
「あぎゃぁ・・・」
それをなんとも言えない目で眺めるベリーであった・・・
「そうそうアンタは今日から毎食ステーキだからね。アンタの為にもリガディルとの約束の為にも早く完食しなくちゃね。」
(いや、たしかに旨いんだけど・・・3食毎日はもたれるし・・・さすがに飽きるような気が・・・まあうまいから、いっか。)
・・・・・・なんとか、1ヶ月は耐えられた・・・が、飽きていた・・・・・・




