16話
俺達は広い地下室をでて、客間のソファに腰を落ち着けた。じいさんは興味津々だったはずだが、チョコの一撃をみて、「武具製作しなきゃならん。」と言い訳して地下の作業場へと戻っていった。
『うっぐぅっ・・・えっぐっぅ・・・ひどいのじゃ・・・いきなり・・わらわが、いったい何をしたというのじゃ・・・っひっくぅ・・・』
一人がけソファを占拠し裸でそのお尻に濡れタオルを置いて寝そべる、一人まだ泣きながら訴える赤ん坊がいた。
『あぁ~、おまえ、念話しかできないのか?さっきはしっかり悲・・・なまの声をだしていたが・・・』
俺も同じく念話で赤ん坊に話しかける。
『・・・あぁ・・声か・・「ああ・・ああ・・どうじゃ?・・うまく声がでておるかの?」』
念話をしながらがんばって発声をしくる。
「ああ、ばっちりだ。」
「赤ちゃんがしゃべった・・・」
向かいのソファに座るチョコが食い入るように赤ん坊をみる。
「あぎゃぁ?」
「うむ。まだかなり痛いが、大事ない。大丈夫じゃ。」
ベリーの鳴き声に応える赤ん坊、何をいっているかわかるようだ。
「しかし、なんなのじゃ?・・えっぐぅ・・・わらわは人身変化の術など使っていないのじゃ・・・」
「あ~、とりあえずそのまま聞いてくれ。」
痛みで顔をしかめる赤ん坊に動かぬように声をかけて話しはじめる。
「えっと~とりあえず・・・そうだな・・・自分が古龍で狂戦士化してたのは覚えてる?」
「・・・わらわは、りゅうおうじゃ。あ~、そういえば・・・暴れておったの・・・あれが狂戦士というものかりゃ?」
「えっと・・・自覚ない?」
「・・・いや、少しづつ思い出してきたのじゃ・・・しかし・・・わらわは最後に・・・おそらく死んだはずじゃ・・・なにが、どうなっておるのじゃ・・教えてたもれ?」
「簡単にいうと一度死んで、そのあとに一種の転生の術で人造精霊として俺がつくった・・・はず。俺と魔力のパスが繋がってるのはわかるか?」
「ん・・・。たしかに・・・お主とつながっておるの。」
「何を言っているのかしら・・・?」
「「ビクッ!!」」
何やらいきなりチョコの目にまたハイライトが灯る・・・
「・・・えっと・・・どうしました、チョコさん?」
俺はビクつきながら恐る恐る尋ねる。
「つくったとか・・・お主とか・・・そんなんじゃないでしょ。・・・この子は、アンタが生んだんでしょう。だったら親子・・・父と娘・・・。言葉遣いはしっかりしなさい・・・。」
なにやらまた変な常識のスイッチが入ったチョコ・・・
『マズイッ!』
『なんなのじゃっ!?なにがおこっておるのじゃ!?おしえてたもれ!?』
『とっ、とりあえず合わせるんだ!じゃないとさっきの一撃を何発もくらう事になるぞ!!』
『なにっー!!いやなのじゃっ!!いやなのじゃっ!!わらわが、いったい何をしたというのじゃっ!!お主!お願いじゃっ!たすけてたもれっ!』
『わかってるっ!俺もあんなのくらったら死んじゃうよっ!とにかく!まずはあやまるんだっ!それと、俺達は親子!俺が父!おまえが娘!とりあえず合わせろっ!いいなっ!?』
『わっ、わかったのじゃっ!!』
一瞬で念話で激しく言葉を交わして方針を固める二人。
チョコのハイライトとオーラの光が増し、ゆらっと近づいてこようとしてくる。その前に慌てて二人は会話をはじめる。
「うっ、うん。つっ、つくった、なんていって悪かった。俺が今日からお前の父だ。我が娘よ。」
「うっ、うむ。わらわが娘じゃ。ちち、よろしゅうしてたもれ?」
「ああ!俺達は親子だ!仲良くしようなっ!」
「よろしい。」
チョコのハイライトが消え満足そうにうなずく。
ほっと一息つく二人。
「あぎゃぁ。」
何事も無かったようにさりげなく遠くに避難していたベリーが戻っていた。
(・・・おまえ、少しはたすけろよ・・・)




