13話
その日はそのまま神殿に戻って過ごしていた。
チョコは大神官と別室へいき、そしてカオルはなにも知らない俺に色々な話をしてくれていた。
(・・・一生懸命、話してる・・・かわいいな・・・)
「邪神が生まれるまでは三貴神、太陽の神と双月の神と地星の神の三柱神しかいませんでした。この三貴神は今もこの世界を維持する為に恵みを常にもたらしてくれています。太陽も月も大地も一つ欠けてもこの世界は維持出来ません。そしてこの三貴神の力が絶妙なバランスにより世界は今も生命を育んでくれています。
しかし太古の昔、あらゆる叡智を己が物とし、現代よりも遥かに優れた力を持っていた一族、古代アルブ族の1人が己の娘を亡くし甦えらせようとして失敗し、生み出されたのが邪神です。しかもこの時、空に浮かぶ双月の一つが砕け散りました。それにより大半の月の欠片は大気との摩擦熱により塵となってこの世界中に降り注ぎ、さらに三ヶ所に月の欠片が落ちました。一つは海に、もう一つは砂漠に、最後の一つは解放都市に在り、それが今は現存する最古の迷宮となっています。」
(・・・・・・ベリー・・・欠伸をするな・・・・・・ああ・・・・・・セミが鳴いている・・・もう夏だな・・・・・・)
「邪神はこの時、月の欠片と世界中にある、大地からエナジーが溢れる魔孔の力を使って妖魔を創造し世界を蹂躙しました。しかし月が砕け散った時には、世界の人口はすでに50分の1まで減っていたと謂われています。ですが、生き残っていた全ての種族達をまとめあげて、反旗を翻した者がいました。それがアルスです。そして最後には邪神の居城にまで攻めのぼり、四人の勇者に神への道を開き、邪神を相討ちにもたらしました。
それが今は四柱神と呼ばれている存在です。四柱神は肉体を失った今でも祈りを捧げれば応えてくれています。それが神聖魔法と呼ばれているものです。
同じように邪神も滅びましたが、死の間際にこの世界に呪いをかけました。全ての魔孔を迷宮化し妖魔を生み出し続けるようにしたのです。神々は死の間際でしたが幾つかの魔孔を迷宮化から防ぎ、他の魔孔にもその後の人間達が解放し易いようにと力を揮い、そして亡くなられました。
その後に残された人達によって妖魔を駆逐し、世界中の魔孔を解放せしめ、砕けた月の神の半神の復活を成す為の組織、それが創生神殿と亡くなったリーダーの名前を冠された対妖魔戦の戦士、ハンターを統べるアルス協会です。」
(・・・・・・ああ・・・長いな・・・もっとはしょってくれ・・・・・・空が青いな・・・・・・)
「そして一万年前にある英雄達により世界中の魔孔が解放され、月の欠片が遺された迷宮も最下層まで攻略しました。しかし、その時に解ったことはただ攻略しても解放にはいたらない。永い年月を掛けて少しづつこの星に蔓延する太古の邪気を浄化していき、月の半神が復活した時に迷宮や妖魔が消え、この世界に平和がもたらされると謂われています。」
(・・・・・・そろそろ・・・限界・・なんですが・・・・・・)
「そして邪神に関わる研究や生命の冒瀆などが禁術と呼ばれ、そちらに関してはお二人の方が詳しいですよね?」
(・・・・・・ベリーは気持ち良さそうだな・・・ぐっすりだ・・・・・・チョコは大神官に呼ばれて、そっちに行ったっきり帰ってこないし・・・どうしたんだろ?・・・・・・)
「シロウさん!?」
「・・・はい。技術的なことはともかく、多少は知っていますです。はい。」
そう俺達のいた研究所のテーマの一つだった。
「まだ大分お疲れのようですね。今日はもうお休みください。」
「・・・・・・はい。」
カオルのせいなんだけどね。オドオドしていてもさすが神官、説法関係は止まらない。今度からカオルに話をふる時は気を付けよう。
・・・・・・そうして一日が終わっていく。




