11話
質素だが久しぶりの食事と入浴をいただき、客室でゆっくりとくつろぎながら改めて大神官と話しはじめる。
「当面の間はこちらの神殿でゆっくりと滞在していただいて大丈夫ですのでご安心ください。」
「「ありがとうございます。」」
「その間にこれからどうするか、一緒に考えていきましょう。ある程度までは、神殿とアルス協会とで今後の身の振り方を保障いたします。」
「チョコはこれからどうするんだ?」
「わたしはまだ何も浮かばないわ。自由になれるなんて夢にも思ってなかったし・・・」
「そっか」
「シロウさんはどうお考えですか?」
「ん~、ぶっちゃけ保障ってどのくらいの期間っていうか、仕事の紹介とかってできそうですか?俺って痕諾者なのって知っていますよね。」
「・・・はい。正直に申し上げますとシロウさんにおかれましては、かなりきびしいとしか申しあげられません。」
「ですよね~」
「ええ。世間ではいつ暴走するかわからないと思われがちですが、本来”痕諾者”とは、前世の記憶をもっていて狂戦士になりやすいと謂われていますが、実際のところ妖魔や魔獣、人などを多数、倒し続けますと狂戦士になります。ですが、本来それは他の人達も同じです。・・・統計的に倒した数が、普通の人達より少ない状態で狂戦士化したとしかいえません。」
「まあ、それでも世間はそうは思っちゃくれないわけだ。」
「はい。力が及ばず申し訳ございません。ですが神殿にて下級神官見習いとして一から学び、神に仕える道へと進むことはできますが・・・」
「俺は、one of the zillionだからレベルアップができないし、元来の霊力がかなり低い。」
「ええ。修行によりレベルアップできなくとも霊力などを上げる事はできますが、他の者に比べればかなり厳しいでしょう。」
「やっぱりそうなるんだよなぁ。」
「・・・つまり、どうゆうことなの?」
常識をデータでは知ってはいるが世間の実情は知らないチョコには、いまいちこうゆうことは把握できてない。
「ああ、人はみんな仕事してお金を稼いでそれで生活をしているんだけど、俺には就職先がないってことだ。」
「マズイじゃない!」
「まぁなぁ。元々、わかってたことだし、いいんだけどさ。」
「わかってたからって、どうすんのよ?」
「あ~、ちなみに今まで他の痕諾者ってどのような仕事をしていたか、わかってる範囲で結構ですの教えてもらえます?」
なんとなく、想像つくけど一応聞いてみる。
「・・・たいていの方は、やはりハンターとして活動していたようです。なかには神殿に勤めをしていた方もいらっしゃったのですが一般信者の方達との折り合いがつかず、心労から辞められてしまいました・・・。しかし、ご家族の中に理解者がいらっしゃった方達は家で内職などをして、つつましく生活していた方もいらっしゃいます。」
「やっぱり、そうなります?」
「・・・はい。」
「で?なにか、考えでもあるの?」
「ん、ハンターになって稼ぐしかないだろ?」
「でも、アンタは・・・ああ、そうゆうこと。」
「ああ、アテはある。なくても元々そうする予定だったし。それに今はベリーもいる。俺はハンターになって、狂戦士になる前に一攫千金を稼ぎ出し、速攻引退してやる!」
膝の上でおとなしくしている相方を見やる。
「いいか、ベリー!!合言葉は”目指せ25才からの悠々自適な老後生活!!”だ!!!!」
「あぎゃぁ!!」
「よし!あとは魔力やレベルアップできない問題はラクリマ集めてどうにかするしか・・・ないんだよなぁ・・・」
ラクリマのレベルアップは一定値を超えるとかなり大変なのだ。
「・・・大丈夫なのですか?」
大神官は俺の発言に不安なようだ。あたり前だが・・・
「大丈夫ですよ。」大神官にそうチョコは応えて
「それと、しばらくはアンタに付き合ってわたしもハンターになるわ。」
「いいのか?」
「別にかまわないわ。今のところ他になにも浮かばないし。」
「・・・チョコさんが一緒でしたら、とりあえず無理をしないかぎりは大丈夫だとは思いますが・・・本当によろしいのですか?」
「まぁなんとか。それと明日にでもこの街で口の堅い、腕のいい武具魔工師を紹介していただけませんか?」
俺はニヤリと笑ってそう応えた。




