10話
怒涛の如くに進んだ儀式と時が止まった神官達の処理が無事終わり、大広間をあとにした俺達は客間と思われる部屋へと通された。
ソファをすすめられゆっくりと腰を落ち着けた俺達に、お茶をだされて一息つきゆったりと心地づく。
そして対面にはアルス協会の職員、右手に神官が座ってゆっくりと話はじめる。
「さて、今、夕食の準備をしていますので、それまでに少しだけお話をよろしいでしょうか?」
どうやら大神官が司会進行を務めるようだ。
「はい。」
とチョコが応える。
「まず、門のところでステリアからの敗走中にあなたがたを縛っていた者達が亡くなったと申しておりましたが、実際のところどの様な部隊だったか教えていただけませんか?」
「ええ。でしたらまずは、これをご覧ください。」
そうしてチョコは手をかざして、ストレージリングからテーブルの上に何枚ものIDカードを差し出す。
「こちらが私達がいた部隊、全員分のIDカードです。」
そうしてアルス協会の職員達は、早速おのおの手に取り確認作業をはじめる。
IDカードは普段その肉体と半ば同化していて、他のものが取り出したり偽造ができなくなっているが、亡くなると効力が切れ普通にカードとして持ち主の遺体の上に現われる。
「これは行方不明だったステリアの王族とその関係者達、指名手配中の者ほとんど全てですね。」
一人のアルス職員が傍らの同僚に話しかけている。
「ああ。これはうれしいビッグニュースだ。ありがたい。それと、このもの達はいろいろと所持していたと調べはついているのですが、何か知らないですか?もしくは、回収して所持していませんか?」
「それは、こちらです。」
そういってチョコはまた手を翳しテーブルの上にいくつかのケースを取り出す。
「こちらは様々なデータが入っているラクリマです。そしてこれがアルファ特殊研究所のデータと魔道具です。」
さらに難しい顔をしてそれぞれのデータ、特に研究所のデータが入ったラクリマと道具を確認していく職員達二人。
(やっぱりあそこって、外の人達にとってもかなりの問題を持つ施設なんだなぁ。)
二人の様子を見てしみじみと思う。(・・・よく生きてたな・・・俺・・・)
「ありがとう。これで全部ですか?他には何かなかったですか?」
「はい。あと残っているのは手入れをすればまだ使える剣が数本とアーマード、ストレージリングとブルーホワイトのリング、ラクリマと魔獣の素材だけです。」
「そうですか。わかりました。そちらは当然あなた方のものです。どうぞお好きになさって結構です。それと、今回のこのIDカードは懸賞金が掛けれれています。落ち着かれましたらアルス協会の方までお越しください。それとこちらのケースの方ですが、申し訳ございませんが回収させていただきます。ざっと確認しただけですが、これは禁術級のものですので世間に流布されては困りますので。一応中身の確認が終わりましたら、それ相応の謝礼金をお支払いさせていただきますのでご容赦ください。」
そう言って頭を下げるアルス職員達。
「それとデータの中身なのですが、何かご存知ですか?」
「一応は・・・。ですが、とても覚えていられませんよ。かなり不快な内容ですし、なにより術式は難解すぎてちょっとやそっとじゃ覚えられません。」
「たしかにその通りですね。ですが一応データの中身については、なるべく人にお話しないようにお願いします。」
「それでは、今日の所はこれでよろしゅう御座いますね?どうやら夕食の用意が整ったようです。こちらのお二人もお疲れでしょう。」
「はい。落ち着かれましたら、また後日アルス協会の方までお越しください。詳しい事情聴取はその時に改めてさせていただきますので、よろしくお願いします。」
そう言ってアルス協会の人達は帰っていった。
いよいよGWですね。
少しでも休日のひと時にお役に立てれば幸いです。




