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one of the zillion ~アルス戦記~  作者: 粋生
第1章 奴隷と賢獣と人造精霊
10/24

9話

神殿の奥へと進んでいくと、大広間らしきホールへと通された。


「それでは早速はじめましょう。」


神官達はこちらの気持ちを慮ってか焦らしたり余計な事を挟まず進めていく。


「それではお一人づつはじめます。まずはどなたから行いますか?」


俺達は顔を見合い


「レディファーストで」


俺はそう言いチョコを進める。


「それじゃお先に。」


そう言いチョコが前に進む。


「お願いします。」


そして四柱神それぞれの神に仕えるの4人の神官達は、チョコを中心に四方を囲むように立ち、朗々と歌詞なき歌を謳いはじめる。神官達だけが使える神聖魔法だ。

それは他の魔法とは異なり己のエナジーを込め祈りのように神へと謳い捧げる。

そしてチョコの首輪が光りはじめる。

謳い終わり光りがおさまると黒かった首輪が今は金色の首輪へと変わっている。


「「「「オオオオオオオオオォォォォッッッッッ!!!!」」」」


あたりにいる大勢の神官達とアルス協会の面々が驚きの声をあげる。


(いや、たしかにすごいんだけど大げさすぎじゃない?)


「驚きました!おめでとうございます!これで隷属の呪縛は解かれました。しかもあなたの首輪はかわりに神器になっています!」


(はい?)


「かつて奴隷廃止法が施行されるまでは、たくさんの奴隷達がいました。しかし中には奴隷から一般市民へと解放される者達も当然いたのですが、解呪されると普通は首輪の色は白になります。しかし、かなり稀ですが神はその者を認められ、恩寵として金色の首輪へとかわる事があります。それが神器です。」


「なにか色以外に違いでもあるんですか?」

チョコは首をかしげて聞き返す。


「はい。神器を賜った者はそれぞれに違った加護が与えられます。特にあなたの物は強力な加護が与えられています。身体操作補正、魔力操作補正、身体回復率向上、魔力回復率向上の力が備わっています。」神官たちは顔を上気しながら話す。


「それって、たしかにすごいけどマズイわね。これを狙ってくる者たちが頻繁にきそうね・・・面倒だから、とっと売り払っちゃおうかしら・・・」

チョコにとっては、有難迷惑らしい。罰当たりな発言をする。


「その神器は取り外しができません。解呪したとはいえ、元々その首輪は取り外し出来る様な作りになっていません。なので、その神器も一生はずせません。」

神官がチョコの発言に少々慌てて説明を始める。

「それと、その神器はあなたが亡くなると同時に加護を失い、白い首輪となります。故に”認められし者””加護””祝福”などと謂われています。その事は神器を知る者には一般常識ですので狙われる事もありませんよ。もちろん、解呪したのは隷属の呪縛だけ。チョーカーとしての機能は残っていますので大丈夫ですよ」


「それならば安心ですね。」


そして神官達やアルス協会の人達はざわざわと話しあう。


”チョーカー”正式名称”パーソナルモバイルニューロンエーテルリンケージデバイスチョーカー”略してチョーカー。解り易く言うとパソコンの機能はほぼ全部揃っている。ちなみに、思考操作、音声操作、ウィンドウに直接触ってのタッチパネル操作の機能の3つの操作方法がある。

なにより一部の術式を除き魔術の術式をインストールし自前で覚えなくても使える様になるのが大きい。もっとも容量にも限界があるので術式次第ではそれ程の数をダウンロードできないのだが、メモリをある程度まで増設することもできる。謂わば魔法使いの杖だ。これが開発されたことにより、この世界では戦闘時で詠唱魔法を使われることがない。必要なのはエナジーの量と操作能力などの個人センスだ。ちなみに、バンクル型やピアス型など様々な形態があるが、メモリが容量が大きいのはチョーカー型なのでこれを装備するのが一般的である。



(にしても完全に俺とベリーが残っているのを忘れてないか?)


「静まりなさい!まだ解呪の儀式は残っています!」

一人、簡素だがより立派な神官服を身に纏った女性が一喝する。


「申し訳ございません。神器がもたらされたのは実に1万年振り。皆が興奮するのは無理はないのですが、あなた方にとっては自由を取り戻す大事なことですのに・・・わたくしの監督不行届きです。本当に申し訳ございません」

そう言って頭をより一層下げてくる。おそらく、この神殿をを預かる大神官なのでろう。


「「「「申し訳ございませんでした。」」」」


大神官の一喝で気づいたのか、他の神官達も一斉に謝ってくる。


「・・・いえ、いいですよ。続きをお願いします。」

人に頭を下げられたことがないから、微妙に扱いに困る。


「それでは続けましょう。こちらへ。」


「ベリー、次はおまえだ。先にいっていいぞ。」


「あぎゃぁ」

そういってベリーが神官達の前に進む。


(いや~、あんなことの後に受けるのはプレッシャーだわ・・・神器って、かなりのレアモノなんでしょ?・・・なのに、まわりの目が期待に満ちてるし・・・スマン!ベリー!先に玉砕しといてくれ!俺にはこの雰囲気重過ぎる!!)


そしてベリーの儀式が終了するが・・・


「「「「「オオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッッッッ!!!!!!」」」」」


ベリーの首輪も見事、金色になっていた。


「おめでとうございます・・・あなたにも神の祝福を授かりました・・・しかも・・・その力は・・・伝説の”破邪”です・・・・・・歴史上、破邪の力を持つ者は一人しか存在していません。1万年前の英雄の一人、”破邪の姫御子”だけです・・・驚きました・・・あなたが二人目ですよ・・・いや一匹目と言った方がいいのか・・・とにかく、おめでとうございます。」


「あぎゃぁ!」


破邪の魔法は各国が1万年以上もの永きに渡って研究を続けているが今だ開発に成功してない魔法だ。

それを賢獣のベリーが授かった。


(うおおおおぉぉぉぉぉっ!!!ベリ~~~~~ッ!!!めでたいけど!!めでたいけどもよっ!!空気を読んでくれ~~~っ!!!広間の連中、凄い無言のプレッシャーを俺に掛けてきてるぞ!!どうすんだこれ!!どうすんの!!)


「それでは最後に・・・どうぞこちらへ。」


「・・・・・・はい・・・」


(・・・この流れは・・・おそらく俺は神器をさずからない・・・その自信が俺には元からあっが・・・これで確定だろう・・・テンプレってヤツだな・・・まわりの人達の反応に対して・・・どうすっかなぁ・・・期待が大きい分、落胆して逆に場の空気が止まるぞ!時とめちゃいますよ、俺!・・・まぁ俺のせいじゃないしなぁ・・・う~ん~・・・)


そうして光がおさまり、予定調和のように俺の首輪は白かった・・・


あんのじょう時が止まる中


「おめでとうございます。これであなたも自由です。」


一人、時を止めずに活動する存在がいた・・・大神官である。


「・・・ありがとうございます。」


(すげぇよ!アンタ!マジッパッネェッスッ!!さすが大神官だよ!!ホントありがと!!さすがだよ!!一人でどうしようかと、アレコレ考えマクるところだったよ。)


その喜びと感動にうち奮えて奴隷から解放された事に気づいたのは、別室にいって今後の話をするまで忘れていた俺であった・・・

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