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オリジナル/短編

ある森のカメとキツネとタヌキの話。

作者: Tomokazu

ある森の奥に、動物の王国がありました。


その国の掟は3つありました。


一、決して殺し合いをしないこと

一、欲を出さず、協力し合って仲良く過ごすこと

一、食事は分け与えられたものを食べること


動物たちはその掟を守り、平和に暮らしていました。




今日も王様ジカの命令で、動物たちに食事の配給が行われます。


食事は、動物の体の大きさに合わせて、多すぎず少なすぎず、それぞれに適度な量になるように調整されています。掟に「欲を出さず、協力し合わなければならない」とうたってあるので、本来はそれで十分なのです。


でも、やっぱり中には欲深くて、配給の量じゃ足りないや、と思うものもいました。


キツネは自分の配給をいちはやく食べてしまった後、今日も別の動物の配給を食べてやろうと考えていました。すると、ちょうどのろまのカメが、これからもらった配給を食べようとしているところでした。


「カメくん、悪いんだけど、僕にその食事を分けてくれないかな。実は僕の配給、ほとんど腐ってて食べられないからとってもおなかがすいてるんだ」

「うん、いいよ」

カメが笑って云うと、キツネはいちもくさんにカメの食事にかぶりつきました。そして、あっという間に、ほとんどを食べてしまいました。


「ありがとう助かったよ」

キツネはそういうと、ぷいっと踵を返して、機嫌良く尻尾を振りながら、森の中へと駆けてゆきました。




一部始終を見ていたタヌキが、カメのもとへやって来て、云いました。

「カメくん、君は騙されているよ。キツネはね、自分の食事を食べてしまった後で、まだ食べ足りないから、いっつもあんなことを云って、別の動物から食べ物をもらっているんだよ。あんなズルいやつの云うことなんか、聞いちゃダメだよ」


すると、カメはムッとして云いました。

「そんなわけないよ。キツネくんはとってもいいやつだもの。だって、みんな僕のことをのろまだってバカにするけど、キツネくんは僕に優しく話しかけてくれるんだ。きっとみんなだって、キツネくんがとってもいいやつだから、そのお礼に食べ物を分けてあげてるんだ。そんなこと云うなんて、タヌキくんはとってもヤなやつだよ!」


カメがムキになってそう云うので、タヌキは黙って去りました。カメのことを、かわいそうなやつだ、と思いました。何せ、キツネの性格の悪さは、森中で有名なのです。キツネは色んなズルい手を使って、自分が楽になろうとしたり、得したりしようとするのです。そして、キツネがそうする度に、いつも損をするのは、カメのようなおひとよしなのでした。


だけども、そんなタヌキは、カメに対してキツネが悪いやつだなんて云っておきながら、どういうわけかそんなキツネととっても仲が良かったのです。


よくふたりでおしゃべりもしますし、どんぐりとりにだってよく一緒に出かけます。ひどいときには、キツネが誰かから奪った食事を、一緒に食べたりもしているのです。




カメは、それから毎日キツネに食べ物を分けてくれと頼まれるようになりました。その度に、カメはキツネに自分の食べ物のほとんどをあげていました。じきに、カメは弱ってきて、病気なり、寝込んでしまいました。そして、死んでしまいました。


カメが寝込んでいる間、キツネは一度たりともお見舞いに訪れませんでした。


----------


ここは、タヌキの家です。タヌキとお兄ちゃんダヌキが食事をとりながら、話しています。


「カメもバカなやつだよ。あんなキツネに騙されて、挙句の果てに死んじゃうなんて」

タヌキがお兄ちゃんダヌキにこう云いました。すると、お兄ちゃんダヌキは不思議そうな顔をして、聞きました。

「じゃあ、なんでお前はあんなキツネとよく遊んでるんだい?」

タヌキは云いました。

「僕だって、あいつは本当は嫌いさ。だけど、僕と同じような遊びができるやつは周りにキツネぐらいしかいないし、あいつとつるんでいると何かと得なんだ。だから、仕方なくあいつと付き合ってるのさ」


そう云って、タヌキは窓の外を見ました。


「あっ、もうお日さまがあんなところにある。今日はこれからキツネととなりの森まで出かけるんだ。とっても珍しい木の実がいっぱいあるんだってさ」

タヌキは飛び出すように家を出てゆきました。


窓からタヌキを見送っていたお兄ちゃんダヌキは、タヌキの姿が完全に見えなくなってからこう呟きました。


「まったく、どいつもこいつも…だな」


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