第1話 冒険のはじまり
ここから始まる
ヘッドギアを通して意識が沈んだ次の瞬間、視界いっぱいに文字が広がった。
〈 Farming Free Field 〉
〈 サービスを開始します 〉
――――――――――――――――
世界がまだ形を持たなかった頃。
ただ一柱の神がいた。
その神は空を創り、海を満たし、大地を築いた。
そして世界を見守るため、八柱の神を生み出した。
創造。
全能。
天来。
輪廻。
均衡。
生命。
永遠。
厄災。
それぞれの神は、それぞれの理を司った。
世界を構築する者。
世界を観測する者。
世界に変化をもたらす者。
魂の循環を司る者。
均衡を守る者。
命を繁栄させる者。
世界を保存する者。
停滞を終わらせる者。
だが――
思想は、やがて衝突する。
世界をどうあるべきか。
その違いは争いとなり、やがて世界そのものを巻き込んだ。
神代戦争。
神が剣を振るったわけではない。
だが世界は裂けた。
山脈は隆起し、
海は割れ、
森は暴走し、
大地は崩れた。
天地変動。
その混乱の中で――
人族のような弱き命は巻き込まれた。
新神は気付く。
守るべき命を、自らの争いで滅ぼしかけたことに。
だから新神は、その責を負った。
二度と人族が戦争の道具にされぬように。
誓いは――
呪いとなった。
人族は戦えない。
人族にはHPが存在しない。
人族は三度の致命打撃を受けると命を落とす。
それは世界法則。
誰にも覆せない。
だから人族は戦わない。
代わりに契約する。
神獣の残滓から生まれた生命。
モンスター。
人族はモンスターと契約し、代わりに戦わせる文化を築いた。
それが――
契約文明。
そして今。
契約の時代が始まる。
〈 Welcome to Farming Free Field 〉
――――――――――――――――
光が引く。
見覚えのある空間が広がった。
淡い光が漂う、事前登録で来たあの場所。
「……一ヶ月ぶりか。」
思わず呟く。
本当に長かった。
〈 お帰りなさい、辰馬様 〉
淡々とした声が響く。
〈 ナビゲーションAI、ファーブリーです 〉
「よう、ファーブリー。」
〈 お久しぶりです 〉
「ほんとにな。」
一ヶ月。
待つだけってのは、案外長い。
「お前、ずっとここにいたのか?」
〈 はい。待機しておりました 〉
「律儀だな。」
〈 職務ですので 〉
「真面目か。」
〈 辰馬様も予定時刻より三分早く接続されています 〉
「初日だからな。」
〈 とても楽しみにしていたのですね 〉
「……否定はしない。」
一ヶ月前は事前登録。
今日は違う。
今日が本当のスタートだ。
〈 まず初期設定の最終確認を行います 〉
「来たな。」
空中にウィンドウが展開された。
━━━━━━━━━━━━━━
プレイヤー名:バツ
種族:竜人系
レベル:1
HP:----
BP:10
LP:20
MP:69
SP:64
STR:15
VIT:15
INT:12
MND:11
AGI:17
DEX:11
LUK:9
━━━━━━━━━━━━━━
「やっぱHPないんだな。」
〈 神代時代からの呪いですね、人族にはHPの概念が存在しません 〉
神話で見た通りだ。
言葉で聞くより、画面で見る方が妙に実感がある。
「BPとLPは正式版で追加されたのか?」
〈 正式サービス開始に伴い使用可能となりました 〉
「なるほどな。」
〈 BPはステータス振り分けポイントです 〉
〈 LPはスキル習得ポイントです 〉
「スキルは後でだな。」
まずはビルドだ。
〈 BPはステータスへ振り分け可能です 〉
あぁ~これ悩むやつだぁ~。
えぇ~どうしよ。パワーか?スピードか?
いやでも戦闘しないしなぁ~。
〈 自動振り分けシステムがあります。使用しますか? 〉
「テンプレあるのか。」
〈 バランス型・攻撃型・防御型などの基本設定があります 〉
「便利だな。」
最初から全部考えるのは面倒だ。
街も見たいし。
「バランス型で。」
〈 自動振り分け:バランス型を適用します 〉
数値が光り、変化する。
━━━━━━━━━━━━━━
STR:15(+2) → 17
VIT:15(+2) → 17
INT:12(+1) → 13
MND:11(+1) → 12
AGI:17(+2) → 19
DEX:11(+1) → 12
LUK:9(+1) → 10
BP残量:0
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「へぇ、分かりやすい。」
〈 レベルアップ時も同様の表記で成長します 〉
「それは助かる。」
ふと疑問が浮かぶ。
「これ、あとから振り直しできんの?」
〈 できません 〉
「即答だな。」
〈 ステータスは魂に刻まれる数値、ですので初期振り分け、およびレベルアップ時のBP配分は取り消し不可です 〉
「マジか。」
まじかぁ~。
〈 プレイヤーごとの成長履歴もゲーム体験の一部と位置付けられています 〉
「……なるほどな。」
取り返しがつかない分、プレイの個性になるってことか。
「……いや、ちょっと怖ぇな。」
〈 それも含めてゲーム体験です 〉
「運営の思想が強いな。」
その時。
「キュ。」
足元から声がした。
「あ。」
完全に意識の端へ追いやってた。
小竜だ。
猫くらいのサイズ。
丸い顔。
小さな翼。
尾の先だけ赤い。
そして――
青紫の鱗。
「……やっぱ似てるな。」
俺の髪色とほぼ同じ。
「キュ?」
「いや、なんでもない。」
〈 名称登録が可能です 〉
「そういやまだだったな。」
〈 一ヶ月ぶりの再会です。名前を与えますか? 〉
「なんか言い方それっぽいな。」
〈 辰馬様にとって最初の相棒ですので 〉
……。
少し考える。
光。
輝き。
この鱗に似合いそうな名前。
「じゃあ、ルクス。」
小竜の瞳がきらっと光った。
「キュ!」
〈 名称登録完了 〉
ウィンドウが開く。
━━━━━━━━━━━━━━
モンスター名:ルクス
種族:小竜
レベル:1
信頼度:初期
HP:93
MP:69
SP:62
STR:16
VIT:15
INT:12
MND:11
AGI:16
DEX:13
LUK:12
スキル
火爪 Lv1
━━━━━━━━━━━━━━
「……。」
強くね?
いや、口には出さない。
でも普通にいい引きだ。
ルクスが嬉しそうに鳴く。
「キュ!」
「お前、自覚あるだろ。」
〈 モンスターは信頼度に応じて意思理解が進みます 〉
「最初からしゃべってはいるんだよな?」
〈 はい。ただし、辰馬様が正確に理解できるとは限りません 〉
「なるほど。」
つまり、ルクスは最初から何か伝えようとしている。
でも、それを俺がどこまで理解できるかは別。
面白ぇな、この仕様。
「キュ。」
「……まぁ、これからだな。」
ルクスが満足そうに鳴いた。
〈 初期設定は完了しました 〉
〈 ワールド転送を開始します 〉
足元に魔法陣が広がる。
ルクスがぴょんと肩へ飛び乗った。
「キュ!」
「おっと。」
軽い。
でもちゃんと生き物の重さがある。
〈 初期転送先:テラノア外縁転送広場 〉
光が弾ける。
身体が浮く感覚。
風。
匂い。
空気。
世界そのものが押し寄せてくる。
そして――
視界が開けた。
草原。
青い空。
流れる雲。
遠くに見える巨大な城壁。
その向こうに広がる街。
初期都市――テラノア。
「……。」
思わず息を呑む。
ゲーム画面の向こうじゃない。
本当に世界に降り立ったみたいだった。
「これが……FFFか。」
肩の上でルクスが鳴く。
「キュ。」
口元が自然に上がる。
「よし。」
街を見つめる。
「冒険、始めるか。」
※ステータスの数値を修正しました。
さぁプロローグが終わり、冒険のはじまり。
FFF結構設定こだわって組んでるので皆さんに好きになってくれたらいいなぁ~。
私の好み全開です。契約獣っていいよね!!
では、今回もお読みいただきありがとうございます。
高評価、感想・ご意見等お待ちしております。




