腐敗の大地を救え!始まる調査とそれぞれの使命。
「よし、じゃあ始めようか。まずは何から手をつける?」
皆を代表してケルネリウスが前に出れば、アンネリーゼは一瞬考え――そして、にっこりと笑った。
「まずはこの地を調べることから始めましょう!
ケルネリウスは土壌を調べてくれる?
キャスバルは“幻のお酒の泉”を見に行ってほしい。
それから、エリザベッタは私と一緒にこの辺りの果樹を調べましょう。
メメント・ムーンとメメント・ソレイユには別のことをお願いするわ!」
それぞれに指示を出すと、皆はすぐに動き始めた。
「了解。土壌の状態を調べるには、少し深く掘る必要があるな。
腐敗の根がどこまで広がっているか、見てみよう。
久しぶりに土壌研究ができるとは……フフ、しかも腐敗した地なんて……腕が鳴る」
「ふむ。面白そうだな……我も一緒に行こう」
「いや、ついてこなくていい」
「そんな冷たいことは言わないでくれ!! 我も一緒に行くぞぉぉぉ!!」
ケルネリウスは腰の道具袋を確認しながら、意気揚々とシルトクレーテから降りる。
そして、なぜかラケルもケルネリウスと一緒にバックースの地へとついていった。
それに続くように、キャスバルも動き出す。
「幻のお酒の泉ね……本当にあるのかどうか、確かめてくるが……
一体どこにあるのか、目星はついているのか?」
バックースの地もかなりの広さがある。しかも幻のお酒といわれているくらいだ。
泉を探すのは難易度がかなり高いだろう。
アンネリーゼもこの地に来たのは初めて。
もともとこの地に来たら人海戦術で探す気満々だったのだ。
少し悩んでいると、シルクトレーテが声を発した。
「ふむ……泉の場所は変わっていないだろう。どれ、儂の分身体を連れていくとよい」
そう言うと、祠の横から小さな海亀が顔を出す。
「うぉっ!?」
思わぬ出来事に、キャスバルだけでなく、この場にいた皆が驚いた。
海亀はゆっくりとキャスバルの肩に登ると、シルクトレーテより少し高い声で話し出した。
「さぁ、出発しよう!!」
「あ、あぁ……じゃあ行くか」
驚いていたキャスバルだったが、すぐに気持ちを切り替えて森の奥へと足を向けた。
***
一方、メメント・ムーンとメメント・ソレイユの面々は、アンネリーゼの方を向いて首を傾げる。
ディアナがきょとんとした顔で尋ねた。
「私たちには……何をすればいいの?」
アンネリーゼは少しだけ声を落とし、紙を差し出す。
「あなた達には、シルクトレーテと一緒に新しい曲を覚えてほしいの。
もちろんダンスも考えて頂戴。
ただ……効くかはわからないから、高望みはできないんだけどね」
その紙には歌詞が書かれていた。
「メメント・ソレイユの六人には……剣舞をできるようになってもらうわ!
メメント・ムーンの曲に合わせて剣舞をしてほしい。
内容は任せるから。
そうね……ソレイユのリーダーはリック。あなたに任せるわ!」
「え……!? 俺……ですか?」
まさか自分が指名されると思っていなかったのか、リックは驚いた。
「えぇ。あなたが今まで神官たちを束ねていたことは知っているから。
ぴったりだと思うのよ。それにほら……」
周りを見るように言えば、皆がしっかり頷いていた。
「皆が認めてるんだから、頑張って!」
「わ、わかりました」
リックとの話が終わると、待っていたかのようにエリザベッタが話し出した。
「じゃあ、私たちは果樹を見に行きましょうか。
腐ってるのか、それともまだ生きてるのか……見極めるのは得意よ。
行きましょ、アンナ!!」
エリザベッタはアンネリーゼの手を取ると、一緒に歩き出す。
残った面々に手を振れば、笑顔で振り返してくれる。
その顔は以前とは違い、アンネリーゼの信頼に応えようとする静かな決意がにじんでいた。
アンネリーゼはその背中に温かさを感じながら、エリザベッタと並んで歩く。
「ふふ、なんだか不思議ね。いつも私が手を引っ張ってる側だったから、変な感じがするわ!」
「たまには引っ張られる側も悪くないでしょ?
……ほら、あんたって何でも一人で抱え込みがちなんだから。
こういう時くらい、私を頼りなさいよ?」
エリザベッタの優しい叱咤に、アンネリーゼは小さく笑った。
(そうね……皆がいる。だから、絶対大丈夫! あと二ヶ月あるんだもの!)
二人の足音が、腐敗した果樹園へと向かっていく。
***
「ふむ……この異臭はすごいな」
ケルネリウスがシルトクレーテから降り、土壌の確認を始める。
いくつかのサンプルを採取しながら、腐敗の広がりを見極めようとしていた。
その傍らで、ラケルがパタパタと小さな羽根を動かしながら、手で鼻を塞いでいた。
「お前、なんで俺についてきたんだよ」
「い、いいだろう……暇だったんだよ」
ケルネリウスはちらりとラケルを見て、ふっと息を吐いた。
(あぁ……誰も相手にしてくれなくて、寂しかったんだな)
「まぁ、別に構わないが。
これからどんどん匂いがひどくなるぞ。ついてきたことを後悔するなよ?」
そう言いながら、自分の口と鼻にハンカチを巻き付ける。
ここはまだ果樹の都・バックースの入り口。
今は風が吹いているおかげで匂いが分散しているが――
中に入れば、腐敗の臭気はさらに濃くなるだろう。
「うっ……やっぱ帰るか……?」
シルトクレーテの方を一度振り返りながらも、ラケルは結局ついてきた。
ケルネリウスは少しだけ歩調を緩める。
「だったら……黙ってついてこい。これを持ってな」
そう言って、ラケル用のスコップとバケツを手渡す。
ラケルは一瞬目をパチクリとさせた。
「……これって、俺に……?」
「勘違いするなよ。ついてくるなら、手伝ってもらうってだけだ」
少し頼られたのが嬉しいのか、ラケルはふっと笑う。
「……ふん、まぁ、使ってやるよ。暇だしな」
バケツを抱え、スコップを肩に担ぐ。
ケルネリウスはその様子をちらりと見て、何も言わずにバックースの中へと足を踏み入れた。
風が吹き抜ける腐敗の地で、二人の足音だけが静かに響いていた。
「ラケル…お前、その格好似合うな?」
「なっ!! どういう意味だ!? 」
「いや…別に…」
(今度麦わら帽子とオーバーオールでも用意してやるか…)
「“別に”って……どうせ変なこと想像しているのだろ!?
お前もアンナそっくりだからな!」
「いや、あいつとは一緒にしないでくれ…(切実)」
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
土壌調査が始まりました。
腐敗した土地……なんとか復活させたいものですね。
次回 21:10 更新予定♪
どうぞ、お楽しみに✨




