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荒地に追放された食いしん坊聖女はいつの間にかラスボス認定されていたようです!!  作者: ゆずこしょう
里帰りしましょう!!

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遭遇!?ロックバード!!

「ふぁ~!やっとここまで来たわね~。」


馬車に揺られて一週間。

途中で何度か停泊はしたものの、ほとんどノンストップで馬車に乗り続けたおかげで、おしりの痛みが限界まで来ていた。


「あぁ~おしりが割れそうなくらい痛いわ。馬車のこの痛みだけは全然慣れないわね…」


痛みのあるお尻を少しさすってから降りると、目の前には広々とした草原と畑、小川が流れている。

王都と違って建物が少ない分、空がすごく近く感じた。


「ケツは元から割れてるだろうが…」


馬車を降りると、相棒でもあるケルネリウスが声をかけてきた。


「あっ、そういえばそうね!!ん~やっぱり空気が綺麗ね!!」


手を上に高く上げて腰を伸ばしながら大きく深呼吸をすると、綺麗な空気が肺の中にたまる。

王都も空気が汚いという訳ではないが、常にどんよりしていた。自然が少なく、人が多かったからかもしれない。


「遠かったが…空気も澄んでいていい所だな。荒地セラフィエルと隣接しているから瘴気が濃いのではないかと思っていたんだが…。」


「そう思っている人も多くて近づかない人も多いものね。でもきっとこの国で一番綺麗な場所よ?」


ラファリエール公爵領。

ルシフェール国の北を治め、「荒地セラフィエルの玄関口」と呼ばれる土地。

多くの貴族たちはこの地を「瘴気に満ちた土地」と誤解していたが――実際は違う。


「あぁ…ここは瘴気がほとんどない。一体何をしたら…」


ラファリエール公爵領は初めから瘴気がなかったわけではない。

一年の半分は雪が降り、寒さと飢えで子供が口減らしされるほど貧しかった。

それを変えたのが――たった五歳の少女、アンネリーゼだった。


『瘴気は人の負の感情からも生まれているのかもしれないわね!!だったらやっぱり…この地域を安心して幸せに暮らせるようにしないと!!(ってゆーかご飯が不味いのよ!!非常事態だわ…。)』


それから五歳とは思えないほどの才覚を発揮したアンネリーゼは、

領地を変えていく。


神官と聖女をペアで配置し、魔物が出れば即座に討伐可能に。

神官騎士で固めた騎士団によって瘴気の広がりを防ぐ。

そして、上下水道の整備と“浄化石”による水の循環。

時間はかかったが、その成果は確実に現れた。


(まぁ、秘密だから言わないけど…荒地を開拓できるならその時話そうかしら。)


そう笑っていると――空が、暗く染まった。


「ほら、話している間に上を見て!美味しそうな獲物が…」


ケルネリウスが指差す方へ顔を上げる。

その瞬間――上空から大きな影と鳴き声が響いた。


「ぎゃーー!!ぎゃーー!!」


太陽を隠すほどの巨大な白い鳥。

陽光を反射してキラキラと輝く羽。

それは美しい姿とは裏腹に、怒り狂う魔物――ロックバードだった。


「あ、あれは…ロックバードじゃないか!!しかも魔物になりかけているぞ…。」


羽の先が黒く濁り始めている。

魔物化の兆候だ。


「ふふ…この辺ではあのくらいの魔物、当たり前よ?」


ケルネリウスが目を見開く間もなく、アンネリーゼは自分の武器――ナイフを左右の手に五本ずつ握った。


「ふふふ…今日の夜ご飯はこれで決まりね!!」


次の瞬間、地面を蹴り――

馬車の屋根をぴょんぴょんと駆け上がり、跳躍。

ロックバードの双眸めがけてナイフを放つ。


キン、と光が走り、空気が震えた。


「ふふ。ずっと馬車に乗ってたから運動不足だったのよ!!あなたのおかげで助かったわ!!」


だが、ロックバードも負けてはいない。

旋回しながら竜巻のような突風を生み出し、ナイフを吹き飛ばす。


「ぎゃーー!!ぎゃーー!!」


「やっぱりナイフじゃ獲物が軽すぎるわね…。」


唇を舐め、「いい事を思いついた」とニヤリと笑うアンネリーゼ。


その姿はまるで聖女ではなく…魔物すら恐れをなすラスボスのようだ…。


その姿がケルネリウスにも見えているのかいないのか遠くから彼女に声をかける。


「アンナー!大丈夫かぁー!?」


その声に反応したアンネリーゼは得意げに微笑んだ。


そして、背後から――大きなフライパンを取り出した。


「大丈夫よ?だって美味しい獲物が待っているんだもの!!」


アンネリーゼのスキル《調理器具召喚》。

全ての調理器具を自由自在に取り出し、形も大きさも自在に変えられる――大聖女らしからぬ特異な力。


ドンッ、と地響きを立てて現れたのは、彼女の身長を優に超える巨大フライパン。


「ま、まさか……」


ケルネリウスは直感的に察して、馬と御者を連れて慌てて退避した。


「さぁ、調理の時間よ!!」


アンネリーゼは両手に巨大フライパンを持ち、

馬車の上でクルクルと回転。

その勢いで巻き起こる風が、逆にロックバードの竜巻を押し返す!


「ブォン! ブォォォン!!」


ものすごい風圧で馬車が軋む。


「わ、わ、わしの馬車がぁぁ~!!」


御者の叫びも虚しく――馬車は大破。

しかし次の瞬間、アンネリーゼは飛んだ。


「今よっ!!」


フライパンの風で体を押し上げ、

空中で包丁を逆手に構える。


「ごちそうさまっ!!」


ロックバードの頭上を一直線に突き抜け、

その脳天へ――包丁を突き立てた。


「ぎゃあああああ!!」


魔物の絶叫と共に、風が止む。

巨大な影が地面に倒れ、静寂が戻った。


アンネリーゼは額の汗をぬぐいながら、

ニコリと笑った。


「んふふ!! 今日の晩御飯はロックバードの唐揚げで決まりね!!」


鋭い閃光とともに包丁が突き刺さり、ロックバードの鳴き声が空へ消えた。


陽の光が再び地上に戻る。


風が止み、散った羽根が、金色に輝いて舞い落ちた。


アンネリーゼはそれを見上げ、口元を綻ばせた。


「うふふ……いい肉が手に入ったわ。あとは――カラッと揚げるだけね。」


ここまでお読みいただきありがとうございます( .ˬ.)"


ロックバード討伐完了です♪


アンナのフライパン旋風いかがでしたでしょうか?


次回は久しぶりに家族と再会です!!

久しぶりに会った家族の反応はいかに…!?


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