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荒地に追放された食いしん坊聖女はいつの間にかラスボス認定されていたようです!!  作者: ゆずこしょう
食いしん坊聖女と伝説の鍛治師

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【閑話】聖女たちの罪なお夜食。

今回はep57とep58の間。

聖女たちがアンネリーゼの為にアイドル特訓を頑張っている時の一コマです✨


「ぐぅ~~」


聖女たち六人がアンネリーゼのために歌とダンスの練習をしていると、

その場にいた全員の腹が揃って盛大に鳴り響いた。


「そう言えば……お昼ご飯を食べてから何も食べていなかったわね。」


フィナが言った瞬間、全員が

「「「お腹すいたーー!!」」」

と声をそろえる。


「アンナのご飯が食べたーい!」


「でも……アンナ様は……いま寝てるから……」


ティアナの言葉に、クロエがしゅんと肩を落とす。


そんなやり取りを黙って見ていたシルクトレーテが、

どっかり構えた祠の姿のままで突然声を響かせた。


「ふむ……では儂が美味しい料理のレシピを授けてやろう。」


「えっ!?祠なのに料理できるの!?」


「こら、そんな言い方しないの……」


驚愕のティアナ vs 宥めるミレイユ。


アンネリーゼの一つ下組は、今日も賑やかだ。


「お主は……杏菜に似ておるのぉ。

まぁよい。ここに材料を持って来なさい。

教えてやるぞ、“最強の丼”を……」


そう言うと、ひらひらと一枚の紙が落ちてきた。


ーーーー

材料

・バラモーラの肉

・新鮮なたまご

・刻み海苔

・長ネギ

・玉ねぎ

・炊きたてご飯

・ガーリガール

ーーーー


「ご飯は炊けるわ。アンナ様の教え通りにやれば完璧!」


「バラモーラのお肉は備蓄庫ね」


(ほんとにアンナ様は段取りが完璧……)


紙を読み進めていたフィナは、最後の一文で眉をひそめた。


「こ、このガーリガール……とは……?」


「ふぉっふぉっふぉっ……まぁ、見ればわかる。

一番奥の畑にあるから、一つ取ってまいれ。」


シルクトレーテは実に楽しそうに笑っている。


フィナはその笑いにゾワッとした。


(……いやな予感しかしないんだけど!?)


六人は恐る恐る、畑の奥へと向かっていった――。



シルクトレーテが言っていた“奥の畑”まで来ると、

そこだけ空気が違うほど、主張の激しい野菜がすぐ目に入った。


畑の土の上に、ぽつんと転がる……

“巨大なにんにく”――いや、どう見てもにんにくだ。


光沢のある薄いピンク色の皮、

根元にはなぜかフリルのようなひらひらまで付いている。


ミレイユが小声で言った。


「……あれ、絶対ふつうの食材じゃないわよね」


フィナがそっと近づくと――


にんにくが突然ガバッと起き上がった。


「近寄らないでぇぇぇ!!

 私の魅了香にやられたら困るでしょ!?

 惚れられたら責任取れないのよぉぉ!!?」


「「しゃ、しゃべったーーー!!?」」


突然の声の大きさに今まで黙って着いてきていたジュリナとノアールが驚きの声をあげた。


「声がでかい!!」


皆の声を聞いてティアナが耳を押さえる。


しかし、ガーリガールは話を聞く気がないのかおかまいなしに続ける。


「ちょっとあなたたち、日差し強いのわかってて来たの!?

 UV対策してないと老けるのよ!!若さは一瞬なのよ!!

 あぁもう、私って罪……」


聖女6人、全員ぽかん。


クロエが震える指を向けた。


「こ、これを……食べるの……?」


(なんか、前に似たコブリンに似てるわね…)


ガーリガールは後ずさりながら叫んだ。


「いやぁぁぁ!!惚れられるのは困るけど、食べられるのはもっとイヤぁぁ!!私、女には興味が無いのよぉぉぉ~!!」


するとミレイユが笑顔で手を叩く。


「よかった、じゃあ調理するときは遠慮なく皮むけるわね!」


「ひぃッ!!?」


ガーリガールが土の上でジタバタ転がる。


フィナは頭を抱える。


「……これ、持って帰るのよね?」


「も、持つのはイヤだけど……必要なんだろうし……」


「じゃあ……誰が持つ……?」


全員の視線が一斉にジュリナへ向いた。


「……なんで私を見るの?」


「力持ちだから!」


「最強だから!」


「ジュリナ、なら…倒せる!」


「……いや倒す前提なの!?」


ジュリナは観念してガーリガールを持ち上げた。


「ふぎゃあああああ!!

 ちょっと!?抱き上げられるなんて聞いてない!!

 私の魅了香にやられる覚悟があるってわけぇ!?」


「……ないわよ。」


ジュリナはため息をつきながら、

叫び続けるガーリガールを片手でぶら下げて帰っていった。


その後ろ姿は――

英雄ではなく、ただの“うるさい農作物を回収させられた人”だった。


六人は騒がしいにんにくを抱えて、

調理場へと戻ることにしたのだった。


(……これ、本当に食べられるのよね?)


フィナの心の声は、まだ不安に満ちていた。


***


祠の前に戻ると誰が準備したのか調理道具とエプロンが置かれている。


「無事ガーリガールも手に入れたようじゃの。さて…料理を始めるかのぉ。」


そう言うと一枚の紙がヒラヒラと落ちてくる。


「「「「シルトクレーテ直伝!スタミナ丼!?」」」」


レシピを見るなり声を上げる聖女たち。


「ふぉっふぉっふぉっ…まぁ、騙されたと思って作ってみなさい。」


「わ、かった…アンナ様に、料理の仕方は教わったもの…作れるはず。」


いつも静かなクロエがレシピを見るなり、調理器具をとる。


その目はアンネリーゼが、料理する時と同じだった。


ジュリナも持っていたガーリガールを調理台に置くとそそくさとエプロンを着ける。


「お腹すいたしね。」


が、しかし…


ガーリガールは置かれた瞬間、大絶叫。


「ちょっと!?私は食材じゃなくて“香りの女神”なのよ!?

 料理されるとか聞いてない!!色気が失われるぅ!!」


「大丈夫。“色気”はタレに生きるわ」

とミレイユが微笑む。


「微笑むなぁぁぁぁ!!優しさが怖い!!」


フィナはため息をついた。


「……この調子で大丈夫なのかしら?」


ティアナはガーリガールの声に耳を貸すことなくノータイムですりおろし器にセットする。


「はいはーい!!すりおろしまーす!」


「ぎゃああああ!!摩擦は美容の大敵よぉぉ!!」


ジュリナが冷静に抑える。


「じっとして。動くと危ない。」


「その冷たさ……嫌いじゃない……いや今はそんな場合じゃなーーい!!」


***


クロエは気にせずタレづくりへ。


「まずはガーリガール!次に醤油!砂糖ちょっと!

 バラモーラ肉は豪快に焼いて混ぜる!!」


――じゅわぁぁあ!


甘辛い香りと魅了香が混ざり、

室内が一瞬で“スタミナ全開の匂い”に染まった。


ティアナがふらっとする。


「なんだか……気持ちがぽかぽかしてきた……?」


シルトクレーテが言う。


「大丈夫、魅了香は調理するとただのいい香りになるだけじゃ。」


「料理終わるまでが危ないと思うんだけど!?」

とノアールがツッコんだ。


***


全ての料理を終えると、一人一人器に盛りつけをしていく。


炊きたてご飯の上に、

照り照りのバラモーラ肉、

とろっと流れる卵、

刻み海苔とネギをぱらり。


「完成ー!!最強スタミナ丼!!」


聖女たちは目を輝かせた。


「「「いっただっきまーーす!!!」」」


一口食べた瞬間、歓声が上がった。


「うまっ!!」

「甘辛いのにスッキリしてる!」

「なんか力が湧いてくる……これがスタミナ?」

「私、今ちょっと可愛くなってない?」

「肌つるつる……!」

「目がぱっちりしてる……!」


鍋の隅で、ガーリガールがかすかに囁いた。


『……魅了されなかったのは悔しいけど……

 美味しくされたなら……まぁ、よし……いや、でも食べられるなら男が良かったわ…』


シルトクレーテは聖女達が食べる姿をみて笑う。


「ふぉっふぉっふぉっ!美味いじゃろ?」


ミレイユは祠の前にスタミナ丼をコトリと置いた。


「食べれるか分からないけど…お裾分けです。いつもありがとうございます。シルトクレーテ様」


笑いと香りに包まれた祠の前。


(たまにはこういうのもいいものじゃな。)


シルトクレーテはその光景を見ながら微笑む。

その気持ちが風になって木々を揺らした。


クロエが遠くの海面を眺めながら微笑んだ。


「……アンナ様にも、食べて欲しいわね。」


その言葉に、六人はそっと頷いた。


潮風の香る半月の夜。

祠と海と聖女たちの笑い声が、静かに揺れた。


「さっ、もう少し頑張りましょ。」


「ええ!」「がんばる!」「次こそ完璧に踊る!」


強い波がひとつ、浜辺を打つ。


――こうして、アンネリーゼのための特訓は

まだまだ続いていくのだった。



✿ 神殿食材記録:ガーリガール ✿


記録者:クロエ


分類:香気系魔物(にんにく属)

外見は大型のにんにくに酷似しているが、皮は薄い桃色で光沢があり、根元に花弁のような膜を持つ。

自称「香りの女神」で、近づく者に対し高確率で大声をあげる。


■ 主な性質

・近づかれるとすぐ叫ぶ。

 「惚れられたら責任取れないのよ!」が口癖。


・本人曰く“魅了香”を放つらしいが、

 調理前はただの騒音と強いにんにく臭。


・調理中にすりおろされる時が最も騒がしい。

 「摩擦は美容の敵よぉぉ!!」と叫んでいた。


・加熱すると急激に静かになり、

 香りは甘く丸く変化。

 スタミナ効果が強く、料理全体に活力が出る。


■ 効果(摂取後の変化)

・体温がわずかに上がり、疲労感が減る。

・目の下のクマが軽減した聖女も確認。

・気持ちが明るくなり、集中力が一時的に上がる。

・美容効果は……にんにくの範囲内。


(本人は“色気成分”が残ると言っていたが、

 特筆すべき変化はなかった。)


■ 取り扱い注意

・とにかく声が大きく、落ち着かせるのが困難。

・調理中は暴れるため、**力の強い者(推奨:ジュリナ)**が固定すること。

・調理後は非常においしいため、使用量に気をつけないとご飯が進みすぎる。


■ 最後に

騒がしく、扱いづらく……正直少し疲れました。

ですが、スタミナ丼の美味しさは確かでした。

アンナ様が召し上がったらきっと喜ばれると思います。


以上、ガーリガールの記録とします。


クロエ


「私たちも、料理の腕……上がってきたわよね」

「アンナ様の作る姿を……いつも見てるから……自然と覚えちゃうの」

「今度はアンナ様にも食べてもらいたいね♪」

「で、できれば……ガーリガールはもう使いたくないけど……」


「「「「美容にはいいんだけどねぇ~~……」」」」


✿ いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"

書いていたら楽しさが止まらず、気づけば閑話なのに長めになってしまいました。

“聖女たちの罪なお夜食”、いかがでしたでしょうか?


次回21:10、本編更新予定です!

どうぞお楽しみに✨

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