虹色鉱石と不気味な人影。
「な……なんて美しいんだ……」
スモークバットを倒し、開けた道を進んでいくと――
目の前には、キラキラと虹色に光る鉱石がびっしりと埋まっていた。
あまりの美しさに全員が言葉を失う中、ケルネリウスが近くの鉱石へと歩み寄る。
侯爵家出身の彼は、これまで宝石などいくらでも見てきた。
だが――ここまで心を揺さぶられたことは、一度もなかった。
むしろこれまでは、
「こんな高いものを買ってどうするんだ……見せびらかして何の意味がある」
と冷めた目すらしていたほどだ。
しかし――
そんなケルネリウスの感動をぶった切るように、アンネリーゼが口を開いた。
「へぇ~……これがルミナイト・オリハルコンねぇ。なーんだ、思ってたより簡単に手に入るじゃない!」
「「「……は!?!?!?」」」
皆で苦戦してようやく倒したスモークバット。
以前はアンネリーゼも敗北していた相手のはずだが――
当の本人は、もうその事実すら軽く変換していた。
聖女たちもついに低音になり、アンネリーゼはそれを聞いて慌てて補足する。
「あっ、違う! 変な意味じゃないのよ! 日記には“簡単には手に入らない”って書いてあったし、希少価値が高いって言われてたから……その、それに比べてってだけなの!」
セラフィエル帝国が滅んで百年以上。
鍛冶の町として栄えていたこの地も――
人がいなくなれば採掘されることもなく、ただ自然に鉱石だけが“増えていった”のだろう。
アンネリーゼが説明すると、聖女たちもようやく納得したようだ。
そして彼女は、どこからともなくピッケルを取り出し、勢いよく振り上げた。
その瞬間――
“カーン!”
ルミナイト・オリハルコンが固すぎたせいか、
ピッケルはそのまますっぽ抜けて、天井の岩山に突き刺さった。
さらにアンネリーゼ自身も――
“ドサッ!!”
尻もちをついた。
「……いった~~~い!!」
尻もち姿のアンネリーゼに、聖女たちは一瞬静まり返り――
「ふふっ」と笑った。
「アンナには悪いけど……ちょっと、いい気味って思っちゃったわ」
「ふふ……私も~。アンナでもできないことあるんだね。なんだか安心した」
「さすがに……あれはねぇ、自業自得よ」
くすくす笑い合う聖女たち。
その表情には、むしろ親愛すらにじんでいた。
一方ケルネリウスは、天井に刺さったピッケルを見て深くため息をつく。
「……お前は、ほんと期待を裏切らないな……」
「え? 褒めてる?」
「違う。呆れてる」
「ひどっ! でも、ちゃんと刺さったじゃない? 天井に!」
「それが問題なんだよ……」
ケルネリウスは軽くジャンプしてピッケルを抜き、アンネリーゼに差し出す。
だが――アンネリーゼは受け取らなかった。
「おい、どうするんだよ?」
「ちょっと、ケルネリウスが採掘してみて。あ、神官でもいいわ。……私、他にやることができたから」
先ほどまでとは違い、アンネリーゼの目は鋭く奥を見据えていた。
(なんだ……この先に何かあるのか……?)
奥からは、どこかへ続くような“ひゅー”という隙間風が聞こえる。
「あなたたちは、ここにいて。……いいわね?」
突然の緊張感に、聖女も神官も息を飲んで頷いた。
アンネリーゼはそのまま奥へと向かっていく。
ケルネリウスもピッケルを神官に預け、後を追った。
***
「リース。ここから先、ちょっと……危険かもしれないわ」
「は!? その“ちょっと”がわからないんだが、説明しろ!」
ケルネリウスの言葉に、アンネリーゼは言葉を選ぶように考える。
「……説明しにくいのよ。ただ、空気が少し違うの。私の勘だけど……強い魔物がいるのは確かね。果たして鬼が出るか、蛇が出るか……どっちかしら。」
(いや……今のこいつのほうが鬼だろ……)
と心の中で思ったケルネリウスだったが――
次の瞬間、そんな思考ごと吹き飛んだ。
「こ……これは……?」
目の前にあったのは――
かつてこの地で暮らしていたであろう人々が、
鉱石に閉じ込められたまま静かに眠る光景だった。
しかもその鉱石は――
アンネリーゼが割ろうとしていた、ルミナイト・オリハルコン。
「恐らく……滅びる前に暮らしていた人たちね。誰がやったのかはわからないけど……全てのカギを握るのは、この奥にいる“誰か”よ」
ケルネリウスも事態の異様さを察したのか、剣を抜いた。
アンネリーゼも鍋の蓋と柳刃包丁を構える。
ゆっくりと、足音を殺して進む。
すると――
“カーン、カーン、カーン”
何かを打ちつける音が奥から響く。
そして――
「……ついに来たか……」
火の明かりに照らされた壁には――
大きな人影が、ハンマーを振り下ろす姿のまま映し出されていた。
「モグモグ…スモークチップ美味しいわね。」
「お前は…この美しさに心奪われないのか?」
「そんなことな……モグモグ…モグモグ……」
「……(ダメだこりゃ…)」
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
ポテトチップスって、一度食べ始めると止まらなくなりますよね…。
スモークバッドも、アンネリーゼにとってはきっとそんな“魔の食べ物”なのだと思います☺️
ルミナイト・オリハルコンを見つけたアンネリーゼ達ですが、
その背後には……何やらあやしい人影が!?
次回 21:10 更新予定♪
さらに 12:10 に閑話もアップ予定です!
どうぞお楽しみに✨




