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荒地に追放された食いしん坊聖女はいつの間にかラスボス認定されていたようです!!  作者: ゆずこしょう
食いしん坊聖女と六人の聖女。

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シルトクレーテ直伝! 聖女たち、二週間のアイドル特訓に挑む!

「ワン、ツー、スリー……違うぞ! そこの手はもっと上にあげるのじゃ!」


「角度が合っておらん! もう一度!!」


「歌詞を間違えたら祈りは届かんぞ! やり直し!」


「腹から声を出すのじゃ!」


ケルネリウスに呼ばれ、突然集められた聖女たち六人は――


理由も告げられぬまま、ダンスと歌の特訓を受けていた。


「アンナを助けられるっていうから、ついてきたけど……はぁ、はぁ……」


「えぇ……まさかこんなことをやらされるなんて……」


呼ばれて早々、手渡されたのは――二十枚の紙。


そこには、細かく記載されたダンスの振り付けと、それに合わせた歌詞がびっしりと書かれている。


「……いいか! 君たち六人には、大変な使命が課せられた! 今から六人で、この歌と踊りをマスターしてもらう!」


「「「「……は……!?!?」」」」


唐突な言葉に、全員が目を見開いた。


空気が一瞬、凍りつく。


誰も言葉を発せず、ただ茫然と立ち尽くしていると――


フィナがその空気を変えるように、ケルネリウスに話しかけた。


「ちょっと待ってください、ケルネリウス様。これは本当ですか? 私たちは聖女であって、踊り子ではないのですが……」


「……俺がこんなことで嘘をつくと思っているのか? フィナが言いたいことなど百も承知だ。だが――シルトクレーテ殿がおっしゃったのだ。アンナを助けるには、これしかないと」


そう言って、ケルネリウスは後ろにある祠を指した。


「……え? えっと……ただの石しかないですけど……」


ティアナが祠を指さしてケルネリウスを見る。


彼は何も言わず、ただ静かにうなずいた。


その時――

「全く……おぬしらは揃いも揃って、失礼な奴ばかりじゃな。別におぬしらをここに捨て置いても、儂は構わんのだぞ……」


その声は確かに低かったが、不思議と“怒気”ではなく、深い溜め息のように静かだった。


祠から響く声――シルトクレーテは、アンネリーゼと旅をしたくてついてきただけ。


聖女や神官たちを乗せているのは、アンネリーゼが大事にしている仲間だからに過ぎない。


正直言って、シルトクレーテにとってそんなことは、どうでもいいことの一つにすぎなかった。


(もう……人間だったころのような気持ちには、ならんのぉ……)


「いいか? おぬしらが杏菜を助けたいというから儂は力を貸してやるだけ。儂にはおぬしらを救う義理も情もないことを努々忘れるでないぞ。」


そう言い放つと、シルトクレーテの甲羅に根を張る木々や草花が、ざわざわと揺れ始めた。


風は吹いていない。


それでも、葉は震え、枝はしなり、苔の間から小さな光が立ち上る。


それは、この祠に宿る“意思”が、ただの石ではなく――


かつて命を持ち、今もなお心を持つ存在であることを、静かに証明していた。


その揺れは、怒りでも威圧でもない。


ただ、長い時を越えてなお、誰かの願いに応えようとする“意志”の震えだった。


「も、申し訳ございません。シルトクレーテ様。私は……アンナを助けたいと思っています。ですので……この歌とダンスを、教えていただけないでしょうか?」


目の前で、人知を超えた現象を目の当たりにした聖女たちは改めて、この海亀島が“シルトクレーテ”そのものであることを理解した。


もとから疑っていたわけではない。


だが、そこまで実感がなかった――それが、本音だった。


聖女のひとり、ミレイユが静かに頭を下げる。


それに続くように、他の聖女たちも一斉に頭を垂れた。


その姿は、祈りではなく――


覚悟の始まりだった。


***


「うむ……歌詞と振り付けは覚えたようじゃの。まぁ……音程が気になるが……良しとしよう」


シルトクレーテがそう呟くと、聖女たちはほっと息をついた。


聖歌とはまるで違うテンポとリズム。


地下アイドルの曲は、軽快で明るく、それでいて一糸乱れぬ動きが求められる。


そのため、歌詞と振り付けをマスターするのに、丸一週間を費やすこととなった。


こうして、歌と振り付けだけで一週間。


さらにダンスの統一にもう一週間――


二週間に及ぶ特訓の日々 が続くことになる。


その間も、聖女としての務めは続く。祈り、癒し、儀式の準備――日々の仕事をこなしながら、早朝と夕暮れのわずかな時間を縫って、彼女たちは集まり、汗を流した。


「やったぁぁぁ!! ついに歌は完成ね! あとはダンスだけよ!」


「本当ね。ここまで長かったわ…。でもこういうのもなんだかいいわね…青春って感じがするわ。」


「普段とは違う汗。なんだかとてもいいです…」


その姿を、シルトクレーテは静かに見守っていた。


そして、ふと懐かしさに胸を締めつけられる。


(懐かしいのぉ……いつだったか……部活をやっていた頃は、毎日があんな感じじゃった)


朝練に遅れまいと走った日々。


放課後、仲間と声を張り上げて、何度も何度も繰り返した練習。


笑い合い、涙を流し、ぶつかり合い、それでも最後には同じ方向を向いていた――あの頃。


(……まさか、こんな形で思い出すとはのぉ)


シルトクレーテの甲羅に根を張る草花が、そっと揺れた。


それは、彼の心がわずかに動いた証だった。


「さて……ここからは、ダンスと歌を融合させる時間じゃ。ここから一段と難しくなるからのぉ。皆、覚悟するように」


シルトクレーテの声は、以前よりも柔らかかった。


それは、聖女たちが日々努力を重ねる姿を見ていたからに他ならない。


「「「はい!!!」」」


まるで先生と、生徒。


聖女たちの返事は、どこか誇らしげで、少しだけ楽しげだった。


こうして、地下アイドルとしての最後の仕上げが始まった。


それから一週間後――。


「うむ。まぁ……八十点くらいか。及第点としようかの」


聖女たちは一斉に歓声を上げた。


「「「「やったぁぁぁぁ!!!」」」」


手を取り合って喜ぶその姿は、まるで大会で優勝したときのよう…


汗と涙と笑顔が混ざり合い、祠の前に小さな光が満ちていた。


「これは……おぬしたちのために用意した。当日はこれを着て踊るのじゃ。踊るのは満月の夜。月に一番近い場所で。杏菜は眠ったまま、近くに置いておけばよい。わかったな?」


そう言うと、どこから取り出したのか――ポンッと音を立てて、


それぞれの手元に一式の衣装が現れた。


その場所とは――海亀島の甲羅の最頂部。

海風が直接当たり、月に手が届きそうなほど高い場所だ。


フリルたっぷりのミニスカート。


胸元には大きなリボン、袖には繊細なフリル。


手袋に、頭に飾る帽子まで揃っている。


「こ、これは……?」


「か、かわいい……」


「こ、こんな短いスカート……はけるかしら……」


戸惑いと歓喜が入り混じる聖女たちの反応を見ながら、シルトクレーテはふと、清子のことを思い出していた。


(懐かしいのぉ……清子も、衣装を作ったらよく喜んでくれたものじゃ)


「おぬしらに似合いそうな色を用意した。いわゆる“メンバーカラー”というものじゃ」


「「「メンバーカラー!?」」」


「うむ。それぞれに合わせたカラーという意味じゃ。

 これからこの歌と踊りは、世界へ広まっていくじゃろう。

 じゃから――儂からの餞別じゃ」


そして、シルトクレーテはミレイユに声をかける。


「それと……ミレイユ。お前にはこれをやろう。

 そして――センターで踊るのじゃよ」


ミレイユの手元に、ひときわ輝くイヤリングが現れた。


それは他の五人とは違う、特別な色を宿していた。


その言葉を聞いた瞬間、ミレイユの瞳から涙がこぼれ落ちた。


「……ありがとう。シルトクレーテ様」


人には、得意不得意がある。


ミレイユは運動が大の苦手だった。


だからこそ、他の五人よりも数倍の時間をかけて練習してきた。


その姿を、シルトクレーテはずっと見ていた。

その努力を、誰よりも知っていた。


アンネリーゼへの祈りとはまた別の、ミレイユの中に芽生えた“誰かのために踊る”という気持ち。


それは、祈りの形をした――新しい絆だった。


そして――満月の日。


いよいよ、六人のアイドルとしての一歩が幕を開ける。


「なるほど…アイドルとは奥が深そうだな…」

「そうじゃろう? これでも付け焼き刃。本物のアイドルはもっとすごいのじゃ!」

「そ、そうなのか…」

「うむ。お主も見たらファンになること間違いなしじゃ!

 ……と、言ってもお主は杏菜のファンじゃったな。ふぉっふぉっふぉ…」

「いや、ファンではなく、保護者だな。」

「恥ずかしがるな。分かっておる…」


「…何も分かってねぇーよ!」


✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"


アンナのご飯目当てでついてきた聖女たち。

アイドル特訓の成果は……果たして出るのか!?


次回 21:10 更新予定です♪

お楽しみに✨

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シルクトレーテ、先生!いやコーチ……プロデューサー?! エピソード1話分でドラマ1話分の感情曲線を見た!
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