アンネリーゼを救え! シルトクレーテが語る“救いの条件”とは!?
「儂に、何かようかのぉ……」
いつもアンネリーゼがいた祠へ向かうと、どこからともなく声が聞こえてくる。
(一体、どこから……?)
辺りを見渡しても、誰かが話している気配はない。
風も止み、木々も静まり返っている。
「ここじゃ。ここ……」
「どこから聞こえるんだ……この近くなのは確かなんだが……」
ケルネリウスは周囲を見回し、祠の裏や木の影を覗き込む。
だが何も見つからず、首を傾げた。
「おい、わざとやっておるのか……。お前の足元じゃ」
「え……? 足元……? って、ここには祠しかないはずだが……」
目の前にあるのは膝下ほどの石――祠がひとつ。
まさか石が話すわけがない。
「その祠が話しとるんじゃ。もうよい……この下りは飽きた。要件があるなら、さっさと言ってくれ」
声の主――シルトクレーテは、少し不貞腐れたように言い返す。
ケルネリウスはまさか祠が喋っているとは思わず、祠をじっと見つめた。
「……くすぐったいからやめてくれ。儂は男にべたべた触られる趣味はないわい」
祠の中から、深いため息が漏れた。
「す、すまない……本当に祠が話してるとは思わなかったんだ……ってことは……アンナがよく話していたのは……君か?」
アンネリーゼの名前に、シルトクレーテも反応する。
「そうじゃ。儂がこの海亀シルトクレーテの“意思”じゃからのぉ……いいか? “石”じゃなくて“意思”じゃぞ?」
アンネリーゼもそうだったが――
どうやらこの世界に来た異世界人は、ダジャレ好きが多いらしい。
ケルネリウスは笑えない冗談に軽く咳払いし、空気を切り替えた。
「シルトクレーテ殿。あなたが伝説の亀であることは存じております。そんなあなたに、一つお尋ねしたいことがあるのです」
ケルネリウスは祠の前に跪き、頭を深く垂れた。
まるで騎士のように――いや、一応騎士ではあるのだが。
「なんじゃ……儂のわかることであれば、答えてやろう」
その言葉に、ケルネリウスはバッと顔を上げ、真剣な眼差しで語り始めた。
「実は……ブルーティオ鉱山に入ってから、アンネリーゼが眠ったまま目を覚まさないのです。何か心当たりはないでしょうか」
「……ふむ。ブルーティオ鉱山か……あそこは確か――魔炎蝙蝠の住処だったのぉ……」
シルトクレーテは遠い記憶を辿るように呟く。
かつて、清子がウルカヌス火山を訪れたときのこと。
「切れ味がよくて、なんでも切れる丈夫な包丁が欲しい!」と騒ぎ、ブルーティオ鉱山へ向かったことがあった。
そこで清子が言っていたのが――ルミナイト・オリハルコンという鉱石。
「ルミナイト・オリハルコンを採るには、イグヴェスティオの巣を抜けねばならん。だが、あやつは厄介な魔物じゃ。常に群れで行動し、あの耳障りな音で相手の精神をかき乱す……おぬしたちも聞いたであろう? あの声を……」
「ギィィィ…ギギギ…ギチチチ…」
思い出すだけで不快なあの音。
ブルーティオ鉱山を離れても、頭の中に残るほどの強烈な音だった。
「はい……今でも覚えています。あの強烈な音は、なかなか頭の奥から抜けませんね」
「フォッフォッフォ……あ奴も同じことを言っておったわい」
「あ奴……?」と聞こうとしたが、シルトクレーテがどこか“触れてほしくなさそう”な雰囲気を出していたため、それ以上は踏み込まなかった。
「まぁ、その話は置いておいてじゃ……方法は、なくはないぞ。お前が頑張ればな。杏菜も目を覚ますことは可能じゃ」
「……頑張る……?」
「あぁ、そうじゃ。この手の物語はな……」
わざと間を置いているのか、なかなか次の言葉が出てこない。
「この手の物語」と聞いた瞬間、ケルネリウスはふと妹に絵本を読み聞かせていた記憶を思い出した。
『あのね……このお姫様はね、王子様のキスで目が覚めるのよ!!』
(まさか……いやいや、そんなはずは……でも……)
このタイミングで記憶が蘇るとは思っていなかったのか、
ケルネリウスは、やかんのように顔を真っ赤にしてうろたえた。
「お主……何をそんなに顔を真っ赤にしておる……?」
「い、いや……これは……その……」
彼もアンネリーゼ同様、神官として引きこもっていた“同類”である。
見た目は整っているが、恋愛方面はてんでダメなタイプだった。
「フォッフォッフォ……そんなに恥ずかしがることではないぞ?」
「だ、だ、だって……き、きs……」
「ただ、歌って踊ればいいのじゃからな。まぁ踊りは少しばかり変わっておるが……頑張るのは聖女たちじゃからのぉ」
ケルネリウスの言葉にかぶせるように、シルトクレーテが続けた。
どうやらケルネリウスは、“キスをしないといけない”と思い込んでいたらしい。
シルトクレーテは、子供のいたずらに成功したかのように大声で笑う。
「ハッハッハ! まさか……そっちを想像していたとはのぉ……杏菜も杏菜じゃが……お主も初心な奴じゃのぉ」
「い、いや……普段はこんなこと決してないんです……ちょっと不意打ちで頭がついていきませんでした……」
額に手を当て、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
少し冷静になったのか、ケルネリウスは“歌とダンス”の内容を尋ねた。
「それで……アンナが起きる方法が……歌とダンスというのは……社交ダンスと聖歌隊みたいな感じでしょうか……?」
「いんや……まったく違うぞ。これはのぉ、儂と一緒に旅していた者がやっていたのだが……」
シルトクレーテはそこで言葉を切り、ケルネリウスは身を乗り出す。
まさか、またキスの話が続くのかと――内心身構えて。
「地下アイドルとして、完璧に踊りを一致させて、明るい歌を歌えば目が覚める――と言っておった」
「……え? 地下アイドル……? って……何でしょうか……」
この世界にない概念のため、ケルネリウスには理解不能だった。
「地下アイドルとは――笑顔で歌って踊り、相手を元気づけるような存在のことじゃ」
シルトクレーテは簡潔に説明するが
ケルネリウスは、普段と違うダンスと言われてさらに混乱する。
「まぁ…わからないのも無理はない。仕方がないから儂が指南してやろう。」
「ほ、本当ですか?それはとても助かります。よろしくお願いいたします。」
こうして、シルトクレーテを指南役に、聖女たちの猛特訓が始まった。
そして……彼はまだ知らない。
――地下アイドルが、どれだけ過酷かということを…
✿いつもアンネリーゼを応援して下さりありがとうございます(*.ˬ.)"
アンネリーゼを救う方法は……
まさかの アイドル でした♪
果たして聖女たちは“アイドル”となって、
アンネリーゼを救うことができるのか——?
「アイドルってなに!? え、歌うの!? 踊るの!?」
明日 8:10 更新予定です。
どうぞ、お楽しみに✨




