事件発生!?アンネリーゼ、まさかのダウンで一同騒然!?
「アンナ!?!? 大丈夫!?」
耳を抑えてくれていたアンネリーゼの手が、急に離れた。
その瞬間、ティアナは慌てて声を上げた。
そして…少しずつ暗闇に慣れてきて、辺りを見渡すと――
アンネリーゼが、床に倒れていた。
「ちょ……アンナ……? お、起きてよ……。冗談よね……?」
「…~~…ろー…す…と…スゥ~…」
揺さぶると少し反応はあるが、まるで夢の中にいるような状態なのか……
規則正しい寝息が聞こえてくる。
「ティアナ。」
ティアナの叫び声を聞きつけたのか、ケルネリウスが急いで近づいてきた。
「ケルネリウス様……アンナが……いくら呼んでも『ローストビーフ…』としか応えてくれないんです……」
「「「「「…は!?」」」」」
緊張感漂う中での、まさかの“ローストビーフ発言”。
張り詰めていた空気が、一気に揺るむように変化した。
あまりのアンネリーゼらしさに、誰かが「ぷっ…」と小さく笑う。
その一瞬の緩みが、全員に伝染した。
「あはははは…さすがアンナだわ!」
「本当ね。まさかこんな状況でも、お弁当のことだけを考えているなんて……」
「でも、そのおかげで、一瞬にしてこの場の空気が変わったわ……」
「ギィィィ…ギギギ…ギチチチチ…」
先ほどまで、魔物の鳴き声と暗闇におびえていた聖女たちの姿は、もうそこにはなかった。
「ふっ……リーゼ。どうやら、ここにいる聖女たちは全員、お前の背中を見て成長しているようだぞ。」
ケルネリウスは眠るアンネリーゼをそっと抱き上げ、小さく笑った。
最年長の聖女・フィナが一歩前に出る。
「このまま進むのは危険だわ。一度引いて、陣形を立て直しましょう」
ここにいる聖女や神官の中で、戦えるのはアンネリーゼとケルネリウスのみ。
神官たちも戦えなくはないが、ケルネリウスのような圧倒的技量には及ばない。
皆はそれを理解しているからか、頷き合い、後退を始めた。
「ギィィィ…ギギギ…ギチチチチ…」
魔物の鳴き声が、鉱山の奥から響く。
ケルネリウスはアンネリーゼを抱えたまま、出口までの道のりを先導した。
「なんだか…様になっているわね…」
「それは…ケルネリウス様だってお顔が整っているもの。アンナの隣にいるから、いつも霞んでしまっているだけだわ…」
緊張が少し解けたのか、聖女たちはコソコソと囁き合う。
(…聞こえているぞ。)
ティアナはすぐ後ろから何度もアンネリーゼの顔を覗き込む。
「……ローストビーフ……」
そのたびティアナは泣き笑いになりそうな顔で「今は黙ってて…」と囁いた。
やがて、鉱山の出口が見えてくる。
赤い光が遠ざかるにつれ、空気が和らぎ、安堵の言葉が漏れ始めた。
***
「早かったじゃない……どう……って、アンナ……?」
シルクトレーテの所に戻ると、残っていたエリザベッタが聖女たちを出迎えた。
元気いっぱいの「ただいま~!」を期待していたようだが――
アンネリーゼは、ケルネリウスの腕の中でスヤスヤと寝息を立てている。
エリザベッタは駆け寄り、ケルネリウスを睨む。
「ちょ……これは一体どういうことよ!? なんであんたがいながら、こんなことになってるのよ!?」
「す、すまない……」
護衛として責任を感じているのだろう。
悔しそうに頭を下げるケルネリウス。
だが、エリザベッタはそれ以上責められなかった。
アンネリーゼは、操縦の難しい暴走馬のような存在だ。
幼馴染であれば皆が知っている事実だった。
重い沈黙が二人を包む――そのとき。
「……スゥ……スゥ……ダメ!! やめて……スゥ……スゥ……」
寝言に、二人は思わず顔を見合わせ「ぷっ」と笑ってしまった。
「そうね……アンナの言う通り、今は仲間割れをしてる場合じゃないわ」
「そうだな……今はこれをどうにかしないとならない……」
二人が話し合っていると、
アンネリーゼの目が、パッと開いた。
「「アンナ!?」」
「あげないわよ! 絶対! それ私のローストビーフなんだから!!!!!……スゥ……スゥ……」
言い切った瞬間、再び深い眠りへ戻っていく。
「全く……どこまで行っても食い意地だけはすごいんだから。夢でくらい大人しくしてなさいよね」
アンネリーゼの髪を梳きながら、エリザベッタは微笑む。
家族のように大切に思っている気持ちが、その仕草だけで伝わった。
「全くだ……」
ケルネリウスもまた、優しくアンネリーゼを見つめる。
(頼むから早く目覚めてくれ……イアンとダミアンが怖いんだ……)
しんみりした空気の中、皆がアンネリーゼを見つめていると――
キャスバルがふいに顔を上げた。
「……そうだ。シルクトレーテなら、何か知っているかもしれない」
その言葉に、皆が一斉に振り向く。
だが――
シルクトレーテと会話ができるのはアンネリーゼだけ。
どこでどうやって話しているのか、誰も知らない。
ケルネリウスの脳裏に、ふと光景がよぎった。
祠の前で、誰かと話すように座っていたアンネリーゼの姿。
あれはただの独り言ではなかったのかもしれない。
「……もしかして、祠に行けば何かわかるかもしれない」
「祠……?」
聖女たちは首を傾げる。
そんな場所があったことすら知らないようだ。
ケルネリウスはエリザベッタとキャスバルにアンネリーゼを任せ、
静かに祠に向かって歩き出した。
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
アンネリーゼがまさかの眠ってしまいました...。
しかし寝ていてもアンネリーゼは夢を堪能中!?
「…ロース…ト…ビー、スゥ~」
「こいつ…本当は起きてるんじゃないのか!?」
果たして、眠りのアンネリーゼを起こす方法はあるのか…?
21:10更新予定です♪どうぞ、お楽しみに✨




