食いしん坊聖女の特製弁当♪ 隠し味は冒険、小さじ1!?
「それで、宛はあるの? 急に……武器を作るって……」
エリザベッタの言葉に、さっきまでの笑い声がぴたりと止まり、場が静まり返る。
しかし――アンネリーゼだけは違った。
「んふ……んふ……んふふふふ」
腰に手を当てて、「よくぞ聞いてくれました!!」と言わんばかりに勢いよく立ち上がると、一冊の古びたノートを取り出す。
その表紙には――「清子の日記帳」と、日本語で書かれていた。
「これは、シルトクレーテと一緒に旅をした聖女様の手記よ」
ここに清子の名を知る者はいない。それはアンネリーゼとシルトクレーテだけの秘密だった。
「聖女様の……手記……?」
伝説の聖女の名が出た瞬間、聖女たちは一斉に、
「おぉぉぉぉぉ~~~」
と声を上げた。
その中で、ひときわ目を輝かせたのは――
黒髪ボブに白銀の筋が一本入った、控えめな少女・クロエ。
彼女は胸の前でそっと手を握りしめ、小さくつぶやく。
「……アンナ様……すごい……」
アンナ、と呼ぶ聖女は多いが、「アンナ様」と敬称をつけるのはクロエだけだ。
「ここに書いてあるのよ。切れ味抜群! 骨の処理も簡単にできる――幻の包丁があるって……」
魔物の骨処理はいつも悩みの種だった。
これがあれば神官の手を借りる必要もない。
「えっ……それ本当にあるの、アンナ!?
だったら私……もっと包丁の練習しなきゃ……!」
努力家のミレイユが目を輝かせて身を乗り出す。
「料理……もっとしやすくなるわね……」
「おいしい料理が増えるのは嬉しい……」
聖女たちはすでに“ご飯の方向”へ思考がシフトしていた。
(強くなるのはありがたいが……完全にアンナ化しているな……)
ケルネリウスはそっとため息をつく。
神官たちも同じように首を横に振っていた。
「じゃあ説明するわね! まず、この包丁だけど――ルミナイト・オリハルコンという鉱石が必要なの!」
「「「ルミナイト・オリハルコン!?」」」
全員が首を傾げる。
「そう! ルミナイト・オリハルコン!」
清子の手記には、“ブルーティオ鉱山の奥深くに眠る石”とだけ書かれていた。
(せっかく知らない土地に来たんだもの。冒険も楽しむべきよね!!)
「というわけで、ブルーティオ鉱山へピクニックに行くことにするわ!
もちろん、美味しいお弁当をたくさん持ってね!」
「「「ピクニックなら……行けるかも!!」」」
最年少の子は跳ねて喜び、
ミレイユは「お弁当作り……頑張ります!」と拳を握り、
クロエは頬を染めて、
「……アンナ様のお弁当……楽しみ……」
とつぶやいた。
(……アンナの“ピクニック”は絶対普通じゃない……)
ケルネリウスは天を仰いだ。
***
「いくら業務用冷蔵庫が時間を止めてくれるとはいえ、ずっと寝かせっぱなしは気が引けるのよね~!」
アンネリーゼが取り出したのは、これまで倒して保存していた魔物たち。
「卵焼きに唐揚げ、ミートボール……おにぎりとサンドイッチ!
サンドイッチには絶対あれを入れないとね……んふふ……楽しみだわ~!」
ロックバードの肉を切って漬け込み、
卵に塩・醤油・砂糖を混ぜる。
聖女たちは忙しくおにぎり作り。
クロエは米の甘い香りにそっと目を細めた。
「……握ってるだけで……おいしい……」
「アンナ、私この具材切りますね!」
ミレイユは嬉々として作業に加わる。
“奇跡のお米”との出会いはまさに僥倖だった。
「リース、あなたはこれをお願い」
アンネリーゼがケルネリウスに手渡したボウルには、ミンチ状になったオークエンペラーの肉。
「お、おい……なんだこれは……?」
「こねて頂戴! 粘りが出るまでよ!」
(うっ……触感が……)
嫌がるケルネリウスを置いて、アンネリーゼは卵焼きへ。
熱したフライパンに卵液を流すと――“ジュッ”。
「完璧な火加減ね! さぁ~卵焼き作りましょう!」
聖女たちが吸い寄せられるように集まる。
クロエは小さく、
「……アンナ様……すてき……」
ミレイユは前のめりで、
「アンナ! その巻き方どうやるの!?
わ、私もできるようになりたい……!」
やがて、きれいな四角い卵焼きが完成した。
「おぉぉぉぉ~~~~!!」
醤油と砂糖のふわりとした香りに、感嘆の声が上がる。
「んふふ~……久しぶりにしては上出来ね!」
アンネリーゼが嬉しそうに頬張り、
クロエは羨望のまなざしを向ける。
「おい……そろそろやめていいか?」
こね作業に飽きたケルネリウスが戻ってきた。
「あ、ありがとう……タイミングばっちりじゃない!」
(絶対忘れてたな……)
そこから詰め作業は一気に進む。
卵焼き、唐揚げ、蛸の揚げ物、ミートボール、ハンバーグ。
おにぎりの具は塩、梅干し、魚のほぐし身。
そしてメイン――
バラモーラ肉のローストビーフサンドイッチ。
「ふふ……短時間でよくここまで作れたわね!
本当に皆、料理の腕が上がってきて嬉しいわ!」
アンネリーゼは弁当箱をうっとり眺め、
業務用冷蔵庫に丁寧にしまった。
「さ~~!! じゃあ……行きましょうか!
ブルーティオ鉱山へ、しゅっぱ~つ!!」
「「「おぉぉぉぉ~~~~!!」」」
シルクトレーテの上から、エリザベッタとキャスバルが手を振る。
皆で手を振り返しながら――
アンネリーゼたちは、伝説の鉱石を求めて、ブルーティオ鉱山へと出発した。
「久しぶりのピクニック、楽しみね!」
「いや、ここ火山だし、Sランク以上の魔物がウヨウヨいるぞ?」
「〜♪ 〜♪」
「……もう、聞こえちゃいないな。」
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
今回はみんなでお弁当作り回でした♪
次回はいよいよピクニック……!?
果たして鉱石は見つかるのか…?
21:10 更新予定です!どうぞお楽しみに✨




