焼ける香りは絆の味――ウルカヌス火山で高級お肉いただきます♪
アンネリーゼが戻り、準備を終えると――
そこには、部位ごとに美しく切り分けられたお肉と、パチパチと音を立てる火が用意されていた。
「すっごーーーい!! 皆、また腕を上げたわね!」
以前は切るのも一苦労で、断面がガタガタだったお肉たちも、今では滑らかな一筋のみ。
筋の流れに沿って正しく切られていて、光が当たるたびに肉の赤みが艶めく。
しかも、部位ごとに丁寧に分けられている。
「ふふ……私たちだって、成長しているのよ!」
胸を張ってそう言ったのは、一人の聖女。
清子の家には、これまで倒してきた魔物たちの記録と、解体方法を細かくまとめたノートが何冊も並んでいた。それぞれが空いている時間を使って、こっそり勉強していたのだ。
アンネリーゼが少しでも楽できるようにと――
おんぶにだっこではいけないと、聖女たちが選んだ、唯一の方法だった。
「じゃあ、いただきましょうか!!」
アンネリーゼの声に応えるように、聖女たちはそれぞれ準備に取り掛かる。
お肉を焼く係、たれ・塩・お皿を整える係――
たれは今回、聖女の一人が作った特製のものだ。
最近では、アンネリーゼの姿を真似して、味付けや調理に挑戦する聖女も増えてきていた。
“料理は見て覚えろ!”
まさにそれを体現する彼女たちの姿を見て、アンネリーゼは密かに思う。
(やっぱり、人が準備してくれた料理ほど最高なものはないわね!)
その顔は、とても嬉しそうだった。
アンネリーゼはトングを手に取り、温まった網の上にお肉を並べていく。
ジュ~……
その瞬間、シルトクレーテの甲羅の上には香ばしい匂いが爆発した。
脂が落ち、火が小さく跳ね、肉の表面にじゅわっと旨味の膜が張られる。
焼ける音だけで白米三杯はいけるレベルだ。
厚めに切ったサーロイン。
いい具合に焼き目がついたら、ひっくり返す。
「よし! 完璧だわ!!」
綺麗な格子状に付いた焼け目は――
まさに、脂のいっぱい詰まった牢獄そのもの。
肉汁がその網の中に閉じ込められて、反撃の機会をうかがっている。
(これは……絶対おいしいやつだわ!)
綺麗に火が通ったら、アンネリーゼが食べやすい大きさへと切っていく。
切った瞬間に肉汁が刃を伝って滴り落ちる。
その焼き加減を見ていた聖女たちは、アンネリーゼの真似をして同じように焼き始めた。
そしてテーブルの上には、焼きたての肉、特製のたれ、塩、薬味、そしてふっくら炊き上がった白米が並んでいく。
「このサーロイン……焼き目が芸術だわ……!」
「たれ、ちょっと甘めにしてみたの。アンネリーゼの好みに合わせて!」
「塩だけでもいける! 脂が甘い!」
準備を終えると、各々食べたいものを手に取り、アンネリーゼの方を向いた。
特に決まりがあるわけではないが…ここにいる人たちは祈りを終えると、アンネリーゼが一口食べるのを待ってから食べ始める。
それはまるで儀式のように…
アンネリーゼはフォークでお肉を持ち上げると、じっくりと眺めてから口に運んだ。
「……んんんん~~~~っっっ!!」
目を閉じて、全身で味わう。
輝く脂が舌の上ですっと溶け、噛めば繊維がほろりと崩れ、旨味が爆発する。
その表情は、まるで神託を受けた巫女のようだった。
「この脂の甘さ……繊維のほぐれ方……焼き加減……完璧よ!!」
普段よりも大人しめに感想を述べるアンネリーゼの姿を見て、誰もが思った。
(こ、これは……今まで食べてきたお肉よりもおいしいということね……)
聖女たちも恐る恐る肉を口に運んだ。
その瞬間――
「……んんんん~~~~~~っっっ…!」
息が漏れる音が重なる。
声色はそれぞれ違い――
甘く、伸びやかで、とろけるようで、ため息まじり。
けれど全員の言いたいことは同じだった。
「「「「はぁぁぁ…しあわせぇぇぇぇ~~~!!」」」」
その顔は、聖女の顔ではなく……お肉に恋した女の子たちだった。
ケルネリウスは、聖女やアンネリーゼの姿を見て息を吐く。
「……俺の出番、もうないな」
「よかったじゃないか。アンネリーゼのお守りは一人では大変だっただろ?」
ケルネリウスの声が聞こえていたのか、キャスバルが肩を叩きながら言葉を返した。
かつては、アンネリーゼの暴走を止めるのに全力を尽くしていたケルネリウス。
調理器具が飛び交えば盾で受け、魔物が暴れれば剣を抜いた。
だが今では、聖女たちが何も言わずとも動き、準備を整え、アンネリーゼを支えている。
「……あいつら、いつの間にか“戦場”じゃなくて“厨房”で戦えるようになってるじゃねぇか」
聖女たちを見ていた神官たちは、ケルネリウスとともに火の音を聞きながら、同じことを思っていた。
(食事一つで……ここまで人は変わるのか……俺たちもできることを増やさないとな…)
甲羅の上では、今日も聖女たちの笑い声が響き渡った。
そして神官たちは神官たちで新たな決意を胸に抱くのだった。
――こうしてウルカヌス火山の頂で囲む高級お肉は、
彼女たちの絆をまた一つ、強く結ぶことになった。
「はぁぁぁ~、本当美味しかったわねぇ~。」
「あぁ、皇帝豚も美味かったが……俺は断然バラモーラ派だな。あの厚い肉に、スッとナイフが通る感覚……やめられない。」
「ふふ…わかるわぁ。料理によって食べる魔物は変えたいところだけど、ステーキや焼肉といえば牛!! これ一択よね。次はどんな魔物がいるのかしら…ふふ、腕がなるわね。」
「……(もはや聖女に見えないのは俺だけか…)」
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
第三章の魔物は焔角魔牛・バラモーラでした。
A5ランク級のお肉……本当にお裾分けしてほしいですね。
そして次回からはついに第四章へ突入!
今度はアンネリーゼ以外のキャラの活躍も、ちょっぴり増える……かもしれません。
21:10 更新予定です!
引き続き、アンネリーゼの応援をよろしくお願いします✨
「お楽しみにぃ~!」
「伸ばすな!!」




