行き先決定!?果たして次の行先は…?
二幕三章始まります!
「はぁぁぁ~、お腹いっぱ~い!!」
海鮮バーベキューをたっぷり堪能したアンネリーゼたちは、シルトクレーテの甲羅の上で余韻に浸りながら、のんびりくつろいでいた。
そんなとき――。
「アンナ~!」
遠くから聞き覚えのある声が響き、アンネリーゼは身を乗り出して下を覗き込む。
そこに立っていたのは、見知った人々の姿だった。
「イアンお兄様!!」
シルトクレーテから飛び降り、アンネリーゼは勢いよく兄に抱きつく。
突然の抱擁に、イアンは頬をゆるませてデレデレ顔になっていた。
「アンナ!そ――」
「ナイスタイミングです!!」
そんなに会いたかったのか、と言いかけたイアンだったが、アンネリーゼはすでに彼の背後に目を向けていた。
ぱっと表情を明るくし、声を弾ませる。
「わぁ…!職人さんに農家さんに商人さんまで!この短期間でよくここまで集めたわね! さすがシュバルツだわ!」
イアンの横を通り過ぎ、アンネリーゼはガブエール辺境伯の次男、シュバルツのもとへ向かう。
キャスバルの兄でもある彼は、幼い頃からアンネリーゼを知る人物だ。
少し落ち込んだように、イアンがぽつりと呟く。
「俺との再会は……?」
その声を拾ったのはケルネリウスだけだったらしく、彼はイアンの肩に手を置き、小さく首を振った。
「あいつには何を言っても無駄だ……諦めろ……」
その言葉にイアンはケルネリウスに抱きついて泣き始める。
一方、アンネリーゼはシュバルツの前でにこりと微笑んだ。
「アンネリーゼ様。ガブエール領より、瘴気に耐性のある者たちを選抜して参りました。神官、聖女、そしてこの地に根付く覚悟を持った職人や商人たちです」
「そんな、かしこまらないでよ。昔みたいに“アンナ”って呼んで頂戴?」
シュバルツは頭をガシガシ掻きながら大きくため息をつく。
「はぁ……まったく、お前は昔から変わらないな。無茶ばかりしやがって……」
そう言いつつも、アンネリーゼの頭を乱暴に撫でるその顔は、まるで妹を見守る兄のようだった。
「ふふふ。シュバルツも変わっていないわ! その粗雑な感じ、海の男ってするわね!」
小麦色の肌に金髪、海を閉じ込めたような青い瞳。
鍛え抜かれた体つきは漁師の男を連想させた。
そんな再会のひとときもつかの間、アンネリーゼはパンパンッと手を叩く。
「これからについて、話し合いをしたいと思いま~す!!」
その声を合図に、シルトクレーテが甲羅をぐぐっと持ち上げ、陸地と繋がる道を形成する。
その瞬間、イアンやシュバルツを含め人々は「おぉぉぉぉ~!」と歓声を上げた。
「こちらへどうぞ! 私たちのお家へ案内するわ!」
アンネリーゼがシルトクレーテの方を指し示すと、人々は不思議そうな顔をしながら後を追った。
***
「ここは……一体……?」
驚く誰かの声。
「ここは、シルトクレーテの甲羅の上よ」
アンネリーゼは簡潔に、しかし誇らしげに答える。
「シ、シルトクレーテだと!?」
その名が出た瞬間、周囲の空気が変わった。
ざわめき、感嘆、驚き――。
それだけ、清子とシルトクレーテの物語が広く語り継がれているということだ。
――聖女と聖獣の旅の物語。
世界を巡り、食を与え、瘴気を祓う。その姿は聖女であり、料理人でもあったという。
「ほ、ほ、本当にいたんだ……」
誰かが震える声で呟く。
だが、感動ばかりしていられない。
アンネリーゼはすぐに切り出した。
「早速なんだけど……私はこれから、セラフィエルを旅しようと思います!」
すると、先ほどまでの熱気が嘘のように静まり返る。
「あ、あれ……?」
きょとんとするアンネリーゼ。
しかし次の瞬間――。
「ぷっ……」
「クッ……」
「ククッ……」
「「「ハハハハハハハ!!!」」」
場が爆笑の渦に包まれる。
「えっ!? どういうこと!? なんで笑ってるの!?」
「知ってるよ、そのくらい」
イアンがアンネリーゼの頭をぐりぐり撫でながら笑う。
「ちょっ、お兄様やめてください!? って、知っていたんですか!?」
「……あぁ。だから俺たちはここまで来たんだ」
ガブエール領の人々も一斉に頷いた。
「任せてください! アンネリーゼ様!」
「この地は私たちが元の姿に戻します!」
「アンネリーゼ様は他の地をお願いします!」
アンネリーゼの顔がぱっと輝く。
「じゃあ決まりね! 私はセラフィエルを旅して、美味しい魔物を探して、焼いて、食べて、祈って、また食べるわ!」
「やっぱり食べるのがメインか……」
ケルネリウスのぼそっとした呟きは、誰にも拾われなかった。
その後、会議が始まり、場所や役割の確認が進んでいく。
ふとアンネリーゼが叫んだ。
「リース!! 地図を持ってきて!!」
「は!? 地図!?」
慌てて清子の家に取りに走るケルネリウス。
差し出された地図を広げ、アンネリーゼは細い木の枝を手に取る。
風が南へ吹き、雲がゆっくり流れていく。
「うん……悪くない風向きね」
「何してんだ?」
「まあまあ、見てて~」
アンネリーゼは枝をそっと立て、手を離す。
ゆっくり倒れた枝の先には――。
「…フフッ…決まったわ!! 次の行き先はここよ!!」
「「「ウルカヌス火山!?」」」
ネプリヌス海から少し南に位置する火山地域。
「さぁ~!! 出発よ!! 一体どんなおいし……じゃなかった、どんな魔物たちに出会えるのか楽しみね!!」
アンネリーゼの明るい声とともに、シルトクレーテは火山へ向けて進み始めた。
――しかしその頃、王都では。
***
「おい! 人数はこれしか揃わなかったのか!?」
怒声が響き渡っていた。
石造りの作戦室。
その中央には、金の鎧を身にまとった男――エルネストが椅子に座り、苛立ちを隠そうともせず、肘掛けを人差し指でトントンと叩いていた。
その音が、静まり返った室内に不気味なほどに響き渡る。
「も、申し訳ございません! これでも、かき集めたのですが……!」
外に集まっている騎士は、わずか百人あまり。
全員が王宮騎士団の兵士であり、これまで神官騎士たちを侮辱し、見下してきた者たちだった。
だが――彼らは知っていた。
神官騎士と戦えば、勝つどころか、一撃すら当てられないであろうということを。
「エルネスト、これは王族からの命令だぞ?
歯向かうやつは国家反逆の罪で全員処刑にしてやると言え!
わかったな? 三日以内に全員を召集しろ!」
エルネストの怒声が石壁に反響する。
その言葉を聞いた騎士団員たちは、仕方なさそうに立ち上がった。
一人ひとりの瞳に――。
「なぜ俺たちがお前の尻ぬぐいをしなければならないんだ」
という声が、静かに滲んでいた。
それでも、王族であるエルネストには、誰も逆らえない。
「……はっ。仰せのままに……」
団員たちは、エルネストの前に跪き、無言で敬礼を捧げた。
その姿は、忠誠というよりも、諦めと恐怖の儀式のようだった。
「次の行き先が決まったわね!!」
「まさか……運任せだとは思わなかったがな。」
「いいじゃない。冒険は楽しく行かなきゃ損よ?
それに……火山なんて絶対、美味しいご飯がいっぱいよ!!」
「そ、そうか……(もう魔物とすら言わなくなったな。)」
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
アンネリーゼ達の次なる行き先は、ついに火山エリアに決定!
果たしてどんな魔物と出会うのか……ぜひご期待ください。
次回 21:10 更新予定。
さらに本日は 12:10 に閑話もアップ予定です♪
どうぞお楽しみに✨




