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荒地に追放された食いしん坊聖女はいつの間にかラスボス認定されていたようです!!  作者: ゆずこしょう
食いしん坊聖女と古き歌と甲羅の伝承。

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潮騒に消えた歌、受け継がれた願い ~負の連鎖はバーベキューで供養します~

「ただいまぁぁぁ~~~!」


遺跡から出て、シルトクレーテのもとへ戻ると、甲羅の上から手を振る聖女たちの姿が見えた。


「「「おかえりぃぃぃぃ~~~!」」」


その声は、波の音に負けないほど元気いっぱいに響き渡った。


遺跡に入る前、瘴気に覆われて灰色に沈んでいたネプリヌス海の空。


今は、ほんの少しだけれど、雲の切れ間から木漏れ日が差し込み、海面にキラキラと光が踊っている。


「どうやら、少し瘴気は晴れたようね」


「そうだな……」


アンネリーゼがふとケルネリウスを見れば、彼の団服は所々破れ、赤く染まっていた。


「っふふふ……あなたが土以外で汚れているなんて珍しいわね! そんなに死闘だったの!?」


いつも汚れていたとしても、せいぜい土まみれになる程度のケルネリウス。


魔物と戦っても返り血ひとつ浴びない彼が、ここまで血みどろになるのは、確かに珍しい。


ケルネリウスは苦笑しながら、肩をすくめた。


「……まあな。お前が寝てる間に、ちょっとばかし暴れてたんだよ」


アンネリーゼは目を丸くしたあと、すぐにニヤリと笑った。


「へぇぇぇ~、じゃあ今日は特別に、ケルネリウスの分も多めに作ってあげるわね。血の分だけ、カロリー補給しないと! 安心して! 今日もおいし~い料理を作る予定だから♪」


「……お前の料理、カロリー補給ってレベルじゃねぇだろ……」


アンネリーゼは、狙いを定めたかのようにケルネリウスの傷口をバシバシと叩いた。


「い、いた……ご、ごめん。もう言わないからやめてくれ。俺も、お前の料理楽しみにしてるから……」


「あら? そう……? 食べたくないなら、別に無理しなくてもいいんだけど?」


アンネリーゼはわざとらしく笑うと、そのまま聖女たちのいる方へと駆け出した。


残されたケルネリウスは、ため息をつきながら、ゆっくりとその背を追いかけるのだった。


***


「さぁぁぁぁぁ~~~~!!!


みんなぁぁぁぁ!! バーベキューにするわよぉぉぉぉ!!」


皆のもとに着くなり、アンネリーゼは両手を高く掲げ、声高らかに宣言する。


その声に、聖女たちが「わぁぁぁ!」と歓声を上げた。


ずっとこの時を待っていたかのように、アンネリーゼのお腹は——


"ぐぅ~~~ぐぅ~~~……"


と、盛大に音を立てて鳴り響いた。


"ぐぅぅぅ~~~~~~!!!"


アンネリーゼのお腹の音に返事をするように、聖女たちのお腹も鳴り響く。


それを聞いたアンネリーゼと聖女たちは顔を見合わせて——


「ふふ…」


「ふふふ…」


「ふふふふふ…」


「「「ふははははははは!!!」」」


盛大に笑い合う。


まるでその声は、空へと昇っていったサイレーンたちへの祈りの笑いだった。


アンネリーゼは調理道具をいつも通りに準備する。


「今日はね! 海鮮バーベキューよ!」


帆立、サザエ、アワビ、カキにハマグリ。


普段一か所に揃うことはないであろう貝たちが、ずらりと並ぶ。しかもその大きさは、人の顔の二回り以上もある。


小さめの蟹はタラバガニに似ていて、クラゲはビゼンクラゲそっくり。


(蟹は焼きガニ、クラゲはお刺身にしたいところね! んふふ……こんなに一気に海の幸が食べられるなんて、幸せだわぁぁぁぁ~)


業務用冷蔵庫から出すたびに、「おぉぉぉぉ!!」と拍手が巻き起こった。


アンネリーゼの頬も緩む。


「んふふ……これだけじゃないわよ!!」


ぺろりと舌なめずりしながら、今日のメイン——「クラーケン」と「カンマールス」を取り出した。


クラーケンの身は透き通る白。

カンマールスは甲殻の下にプリップリの身がぎっしり。


アンネリーゼがいつものように出刃包丁を取り出すと——


エリザベッタが後ろからそっと近づく。


「んふふ、さぁ! 料理をはじめ——ひぃッタタタタタタ……!」


耳を勢いよく引っ張られる。


「あなた!? まだ懲りてないのね?」


「こ、懲りてます、懲りてます! 着替えてお風呂入ってきますぅぅぅぅ!!」


耳は首より数倍痛かった。


アンネリーゼはそのまま家に連れ去られた。


「懲りないわね……」


「またかぁぁぁ……」


「仕方ないわよ……だってアンナだもの!」


「「そうね……アンナだから仕方ないわね!!」」


聖女たちはエリザベッタに連れていかれるアンネリーゼを見ながら小さく微笑んだ。


その微笑みには彼女が無事に帰還したことへの安堵も含まれていた。


(本当に無事でよかった…)


***


準備をしていると——


家の方から、ものすごい勢いで走ってくる影。


アンネリーゼだ。


風を超え、草木すら揺らさず駆け抜け——


「んふふふふふ!!」


その笑い声が余計に不気味だった。


「さぁぁぁぁ~!! 今度こそ始めるわよおおお!!」


薪はすでに準備済み。

網の上に貝を並べ、真ん中には丸ごとカンマールス。


「バーベキューと言えば、醤油とバター? 塩、コショウもありねぇ……特製ソースも作ろうかしら」


醤油に刻みニンニク、玉ねぎ、砂糖、みりん、酒を混ぜる。


(ケチャップとかごま油あれば最高なのに……まあいいわ!)


別にレモン汁も用意。


ちょうどそのとき、貝が——


「パカッ!」「パカッ!」


湯気とともに開いた。


皆が皿に盛る中、アンネリーゼは山盛りに盛った。


「では、いただきましょう!!」


祈りの歌のあと、全員が海鮮にかぶりつく。


「……ハフハフハフ……」


熱さにハフハフ。そして——


「んふふふふふ!!!! お~~~~~いし~~~~~い!!」


「「「お~~~~いし~~~~~い!!」」」


食後、アンネリーゼはひとり祠へ向かう。


「はい。あなたは食べられるかわからないけど……」


皿を置いた瞬間——


「……無事、戻ってきたか……杏菜。」


祠から響く声。


シルトクレーテだ。


「えぇ。サイレーン……いえ、清子さんがね。あなたに“よろしく”って言っていたわ。

あなた……気づいていたんでしょう?」


沈黙。


風がそっと揺れる。


「あぁ……確証はなかったがの。そうなのではないかと……思っていた。」


懐かしむような声。


「清子は、よく祠の前で歌っていたよ。祈りの歌ではなく、ポップな歌ばかりだったがな。日本では“地下アイドル”をしていたそうだ。踊りながら歌っての……可愛い子だったよ」


「へぇぇ~。惚れてたんだぁぁ」


「いやぁ……そんな感情はなかったなぁ。どちらかというと、孫を見ている感覚じゃった」


(孫……海亀の寿命考えると、そりゃそうよね……)


「清子は気づいていなかったが、毎日歌っていたからか、歌に力が宿っていた。魔人ではなくサイレーンになったのも、それが理由だろう。……儂もあの子の歌が好きじゃった」


アンネリーゼは目を伏せ——


「……清子さん、言ってたの。“ありがとう、シルトクレーテ。あなたがいてくれたから、私は最後まで笑っていられた”って」


風がふわりと吹く。


祠の草花が揺れる。


「……そうか。あの子らしいの……」


優しい声。


アンネリーゼは立ち上がる。


「それと……こうも言っていたわ。あなたが寂しがり屋だって。シルトクレーテ、私との約束は覚えているかしら?


これから一緒に旅をしましょう?

そして、おいしいものをたくさん食べましょう?」


「ふはははは! 本当に清子にそっくりじゃて。まあな、儂も退屈していたところだ。ひ孫の相手くらいしてやらんとな」


「えぇ! おじいちゃんに相手してもらえるなんて嬉しいわ! これからよろしくね、おじいちゃん!!」


風が清子の歌を運び、祠の草花が揺れた。


アンネリーゼは振り返り、笑顔で叫ぶ。


「さぁ! 次は何を食べに行こうかしら、おじいちゃん!! 私的には……そろそろ焼肉が食べたいわ!」


清子の家から、聖女たちの笑い声が響き渡った。

「どうだった?初めての海鮮バーベキューは…」

「丁度いい塩加減で美味かったな。特にホタテのバター醤油は最高だった。」

「でしょ~!!ぷりっぷりで本当に最高なのよね。いつか皆でここに来てバーベキューしたいわね♪」

「そうだな。」


✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"

シルトクレーテとサイレーン編、楽しんで頂けましたでしょうか?


次章からは新たな地へ!?果たして次なる目的地はどこになるのか…。

引き続きアンネリーゼの応援よろしくお願いします(*.ˬ.)"


明日8:10更新予定です♪どうぞお楽しみに✨

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