海戦(海鮮)パレード開幕!!
洞窟に入ると、海特有のまとわりつく湿気はすっと消え、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
光の届かない暗闇では、足音と水滴の音だけが反響し、その静けさがかえって不気味さを増していく。
しばらく進むと、目が慣れ、壁に彫られた文様がぼうっと浮かび上がった。
「ここは……もう遺跡の中、って感じかしら」
壁には珊瑚や貝殻が絡むように彫られ、古びた文字も刻まれている。
「探求心をくすぐるな……また時間があるときに調査したい」
ケルネリウスが指先で文様をなぞった、その瞬間。
「〜♪ 〜♪」
どこか切なく懐かしい歌声が、風に乗って響いた。
同時に、周囲の空気がぞくりと震える。 ……魔物の気配が濃くなる。
「どうやら、ゆっくり見物してる暇はなさそうね」
「今回は俺にも戦わせてくれよ?」
アンネリーゼはペティナイフを二本構え、ケルネリウスも静かに剣を抜いた。
暗闇の奥で――
無数の赤い瞳が、じわりと光る。
「よし、久しぶりに“アレ”やる?」
「いいな。どっちが多く倒すか勝負だ」
二人が背中を合わせた瞬間、気配がぴたりと噛み合った。
ぽちゃん……。
水滴が落ちる音と同時に、
"ヴォォォォォ!!"
"ガァァァ!!"
"ギュォォォォ!!"
魔物たちの咆哮が重なった。
それはまるでパレード開始の合図。
そして、その音に合わせて――
「~~♪~~♪」
先ほどの歌声が強く響き、洞窟全体が低く震える。
その旋律は、魔物の本能を刺激していた。
次の瞬間、赤い瞳が一斉に飛びかかってきた。
ウニ、貝、蟹、小型のクラゲ──
海の魔物たちが、潮騒の代わりに咆哮を響かせながら迫ってくる。
「ふふっ……あなたたち、おいしそうじゃない!
まるで海鮮パレードね!!」
アンネリーゼが飛ぶ。
くるりと舞い、一体を切り伏せ、そのまま流れるように次へ潜り込む。。
「はい、二体目〜!」
その身のこなしはまさに舞踏会のステップ。
楽しげに、軽やかに、魔物を料理していく。
(ウニはごはんにのせて……ホタテはバター醤油で……ふふっ、最高だわぁ……!)
一方――ケルネリウスは静かだった。
「……三体、右から来る」
言葉の直後、鋭い足運びで踏み込む。
剣が弧を描き、魔物の動きを断ち切る。
続く毒針を紙一重でかわし、逆手で鋭く突いた。
「二体目。次……」
剣先が魔物を裂いた瞬間、空気が刃をまとったように震える。
その剣筋は無駄がなく、研ぎ澄まされた舞台のように正確だった。
華やかさではアンネリーゼに劣るが、鋭さはむしろこちらが勝る。
「リース、今何体?」
「十二。お前は?」
「十!? 抜かされた!? ズルくない!?」
軽口が洞窟に弾み、危機感より楽しさが勝っていた。
それからしばらく──
二人がほぼ群れを片付けた、その時。
「~~♪~~♪」
歌声が、深海の底から響くように低く沈んだ。
遺跡全体が、ぞわりと震える。
……来る。
闇の奥から、巨大な気配が近づいてくる。
"ボォォォォォォォオオオオオ!!!"
"ギィィィィィィィイイイイイ!!!!"
耳が割れんばかりの咆哮に、思わず耳を塞ぐ。
そして――
暗闇を破って、二つの巨大な影が現れた。
一体は、うねる触腕を持つ巨大なイカ。
もう一体は、鋼鉄のような甲殻を誇る巨大なエビ。
まるで海の神話から抜け出してきた“大トリ”そのものだった。
アンネリーゼの瞳が、狂喜に染まる。
「うひょぉぉぉぉぉ~~~!!
パレードの主役、いらっしゃぁぁい!!
今日の夜は豪華な海鮮パーティーよぉぉぉ〜♪」
イカ割き包丁が、嬉しげにきらりと光った。
「リース見て!! しじみ! あさり! 牡蠣! うに!!!
海の宝石箱よ!!!」
「お、おう……(殻つきの敵ばっかり増えていくんだが……)」
「ふふふ……今夜のご飯の幅が一気に広がったわね……!」
「お前、絶対今“悪い顔”してるだろ。」
「失礼ねぇ。ただちょっと……食材を前に理性が飛んでるだけよ。」
「あ、それはもっとダメなやつだ。」
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
アンネリーゼ、海鮮を見た瞬間にほぼ戦闘態勢です。
あとは昆布が出てくれたら……いよいよ“出汁無双”が始まります。
次回はいよいよ“主役(ご飯の方)”が登場!?
21:10更新予定です♪どうぞお楽しみに✨




