手がかりは人魚姫!? サイレーンが眠る海底遺跡へ突入!
「ついに来たわね……この時が。」
海の底――光の届かぬ深淵に沈む、珊瑚に覆われた巨大な遺跡。
かつては、魔物と人が肩を並べて暮らしていた場所。
毎日笑い声であふれ、いたるところから音楽が聞こえた。
——あの頃は、確かに幸せだった。
しかしルシフェールが攻めてきたことで、その幸せは突然終わりを迎える。
セラフィエル帝国から少し離れた小島。
セラフィエル帝国には属していなかったが、「近くにあった」という理由だけで戦火に巻き込まれ、たくさんの命が奪われた。
あの時の――
絶望、恐怖、怒り、悲しみ、寂しさ。
そういった負の感情が、今もなお、この遺跡には深く残っている。
「……やっと、この地を解放してくれるかしら。」
海の奥深くで歌い続けるサイレーン。
その赤く光る瞳が、眠っていた魔物たちを呼び起こした。
***
「んー……どこに行けば魔物の大群に会えるのかしら……」
歩き始めて数時間。
アンネリーゼはすっかり歩くのに飽き、近くの木の棒を片手に草をかき分け始めた。
「そんなところ探しても見つからないぞ? それよりシルトクレーテは何か言ってなかったのか?」
ケルネリウスの言葉に、アンネリーゼはシルトクレーテの説明を思い返す。
「そういえば……魔物の名前はサイレーン。人魚姫のような格好をしているって言ってたわ」
「人魚姫?」
ケルネリウスは人魚姫を想像できなかった。
そもそも海がなかった世界で育った彼にとって、人魚姫の概念がない。
そこでアンネリーゼは持っていた使って、カリカリと地面に絵を描いた。
「うーん…こんな感じよ!」
その瞬間、ケルネリウスは目を見開き、二度見した。
「いや待て!! どう見ても魚に食われた女だろこれ!!」
描かれていたのは――
魚の口から女性の上半身が突き出ている、芸術性ゼロのカオスな人魚姫。
「私は画家じゃないんだもの。雰囲気よ、雰囲気。まぁ“こんな感じ”って思っておけばいいわ」
「そ、そうなのか…?」
(絶対嘘だろ…“姫”ならもっと美しいんじゃないか…?本当にこれで合ってるのか?)
アンネリーゼの絵を見ても信じきれないケルネリウスだったが、絵を見ていてあることに気づく。
「……おい、これ。足が魚ってことは……陸に上がれないんじゃないか?」
シルトクレーテの物語に出てきた魚は、水の中を泳いでいるものしか見たことがない。
物語の中でしか見たことのない"魚"は泳げなかったがもしかしたら陸地も泳げるのか、そこの判断はケルネリウスにはできなかった。
その瞬間──
アンネリーゼの目が大きく見開かれ、バッと振り返る。
「そうよ! そうじゃない!! なんでそんな初歩的なことに気づけなかったのかしら。 人魚姫は歩けないわ! だからこんな陸地を探し回っていても、見つかるわけなかったのよ!!」
ここまで歩いて探していたのは陸地のみ。
海側はまったく見ていなかった。
とはいえ、海面にはシルトクレーテがいる。
もし魔物が出れば聖女たちの声が聞こえるはずだが――何も聞こえない。
(じゃあ……別の場所に住んでる?)
「人魚姫がいそうな場所……岩肌とか、洞窟とか、海底とかかしら。あっ、ケルネリウス、地図を出して!」
ケルネリウスが地図を広げると、小さな島がいくつも描かれていた。
「あった……。この島、何かの原因で沈んだのかもしれないわ。そして、そこに住んでた人がいたのだとしたら……?」
気づいたケルネリウスが、ぱっと顔を上げる。
「遺跡か……」
「そういうこと! 海底遺跡があるかもしれないわ。とりあえず洞窟や岩を探しましょう!」
アンネリーゼは持っていた枝をくるりと回すと茂みへ突撃した。
しばらくすると――
アンネリーゼは足元の地面がやけに湿っていることに気づいた。
靴の裏にぬめりがまとわりつくような感覚。まるで、先ほどまでここに水が流れていたようだ。
「……ねぇ、ケルネリウス。ここだけ、なんか湿っぽくない?」
しゃがみ込んだアンネリーゼが指先で土をすくうと、そこには苔と一緒に小さな貝殻が混じっている。
試しに匂いを嗅いでみると、土には潮の匂いが混じっていた。
「……この近く、何かあるかもな」
ケルネリウスが周囲を見ると、岩肌が不自然に崩れている。
「おい、あそこ……!」
近づくと、隙間から冷たい風が吹き抜ける。
そして――かすかに歌声が聞こえてきた。
「リース……聞こえた?」
「あぁ……歌声だな……」
二人は同時ににぃーっと笑った。
「これは、行くしかないわね!」
「そうだな! 行くしかない!!」
先ほどまでの「飽きた」「つまらない…」という表情はなくなり、「ワクワク」という好奇心で支配されているのが分かる。
どうやら、この二人に「警戒心」という言葉は存在しないようだ。
アンネリーゼは棒をくるりと回し、ケルネリウスは一応、何かあったときのために腰の剣に手を添えると、
まるで遠足にでも向かうかのような軽い足取りで、裂け目へと進んでいった。
「リース!ナイスだったわね!!」
「い、い、いたッ…そんなにバシバシ叩かないでくれ…」
「えぇ…なによぉ~照れちゃってぇ」
「いや、照れてないからとにかくやめてくれ…(折れる…)」
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
いやぁ~さすがアンネリーゼでしたね…
次回こそは魔物に出会える…はず?
明日8:10更新予定です。お楽しみに✨




