ケルネリウス、決意の同行。(理由はアンナじゃなくて兄と父の恐怖)
アンネリーゼがシルクトレーテと話をしている頃、
ラファリエール家では──
「父上!! すぐにガブエーラに連絡をとってください!」
「イアンか!? そんなに慌ててどうした?」
ひと仕事を終えて休んでいたダミアンの前に、イアンが勢いよく飛び込んできた。
「ついに、アンネリーゼが動き出しました。そのため……まずはガブエーラの民を、少しセラフィエルに送り込みたいのです」
イアンは淡々と説明した。
アンネリーゼがプロセルピナ神殿を出てネプリヌス海へ向かったこと。
そして、その地を開拓しようとしていること。
ダミアンは短く息を吐き、ゆっくりと頷いた。
「……なるほど。ついに、この時が来たか」
セラフィエルの荒野を見据えた瞳には、長年秘めてきた思いがわずかに揺れる。
「早速ガブエーラへ連絡をとろう。ただし……まだルシフェールに動きが悟られては困る。今は水面下での移動しかできんが」
まだ報復に動ける段階ではない。準備にはもう少し時間が必要だった。
「はい。アンナの浄化能力は強いですが……一度に大勢を任せるのは酷です。少しずつ移動を。焦らず慎重に進めましょう」
「大丈夫だろう。あの子は私の娘であり、そして……リーゼロッテの血も受け継いでいる。イアン、お前もだ」
ダミアンの言葉に、イアンは静かに目を伏せた。
(リーゼロッテ……母上。あの人の“見通す力”は俺も受け継いでいる。アンナがどこへ向かうかくらい、わかって当然だ)
彼はこの場では言わなかったが——
イアンは天才であり、“前世もち”。
かつてセラフィエルの皇帝としてこの地を治めていた記憶を、ほんの微かに持っている。
だからこそ、アンネリーゼの行動は誰よりも読めるのだ。
「さて……行くとしよう」
イアンは立ち上がり、父と同じくセラフィエルの方角へ目を向けた。
その瞳には、かすかな決意が宿っていた。
——“いつか必ず取り戻す”
静かに、しかし確実に。
復興への準備が動き始めていた。
***
「じゃあ、行ってくるわね!」
シルトクレーテと話した内容をエリザベッタやケルネリウスに伝えると、アンネリーゼは軽い足取りで立ち上がった。
ケルネリウスは慌てて腕をつかむ。
「待て! お前、また一人で行く気なのか!? 魔物が大量に出るって言っただろ! だったら俺も行く!」
普段なら「行ってこーい」くらいのノリで、渋々後ろをついてくるタイプなのに——
珍しいこともあるものだ。
アンネリーゼがケルネリウスの顔をじっと見つめると、いつもの緩い感じは一切なく、真剣な表情をしているのが分かった。
「ど……どうしたの? そんなに真面目な顔、似合わないわよ?」
「似合わなくていい! お前がまた勝手に突っ走って、誰にも言わずに魔物の群れに突っ込むのが一番怖いんだよ!」
ケルネリウスの声は、いつになく真剣だった。
(お前に何かあって、俺が怒られるのは死んでもごめんだからな!? だったらついて行くしかないじゃないか……)
ぱっと見は、すごくいい雰囲気。
だがケルネリウスの脳内は、エリザベッタとキャスバルから聞いた“イアンとダミアンの怒り”で埋め尽くされていた。
そう——
アンネリーゼに何かあったら、イアンとダミアンが怒る……という話だ。
(絶対あの二人の怒りに触れたら……生きて帰れない……)
「え……そんなにお腹空いてたの!?
だったら早く言ってくれればいいのに! 一緒に共闘しましょう!」
何をどう勘違いしたのか、アンネリーゼはケルネリウスの鬼気迫る勢いを“空腹”と結論づけた。
(いや違うだろうが!!!)
(甘い雰囲気? ……やっぱり無理ね)
エリザベッタとキャスバルは同時にため息を吐く。
「じゃあ、行きましょう!! 美味しい魔物を探しに!!」
アンネリーゼが元気よく歩き出し、ケルネリウスが慌ててついていく。
聖女たちはシルトクレーテの上から、二人の後ろ姿を見送った。
「きっと今回もアンナに振り回されるんでしょうね」
「ケルネリウス様、他の大聖女につけば大出世したのに……」
「でも相性は良いわ。
それに——」
「「「「「アンナを止められるのはケルネリウス様だけよ!!」」」」」
遠ざかる二人の背中に、聖女たちの声が響く。
そして、当の本人たちは——
「それで? どこに向かうんだ?」
「あっ、聞いてくるの忘れちゃった……!」
「おい……」
「大丈夫よ! 私の“魔物ちゅあんセンサー”が働くわ!」
——数時間後。
「ここどこぉぉぉーーー!?!?」
「おい! 本当に着くのか!?」
二人は見事に迷子になっていた。
「さっきは もしかして…!? なんて思ったんだけど」
「いや、あの二人に期待するだけ損だろ?」
「そうかしら……?」
「あぁ。何も知らなきゃ美男美女カップルに見えなくもないが……」
「中身は……残念だものね……」
✿いつもお読みいただきありがとうございます(*.ˬ.)"
アンネリーゼの“美味しい魔物探し”が始まりました!
果たして新たな海の幸に出会うことはできるのか……!?
次回 21:10更新予定 です♪どうぞお楽しみに✨




