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荒地に追放された食いしん坊聖女はいつの間にかラスボス認定されていたようです!!  作者: ゆずこしょう
食いしん坊聖女は海へ行く!!

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混沌とした王都。

第二幕始まります♪

王都──。

そこは、もはやかつての輝きを失っていた。


「こ、これは……一体どういうことだ!? あ、あいつが全部やったのか!?」


叫ぶのは、ルシフェール王国第一王子・エルネスト。

この一年、王城から一歩も出なかった彼が、

初めて外の世界を目にしていた。


青かった空は瘴気に覆われ、

街の至るところに戦の爪痕が残る。

かつて栄えた王都は、

見る影もなく崩れ落ちていた。


──アンネリーゼがセラフィエルへ旅立ってから、一年後のことだった。


逃げ出さないよう同行させられていたエダンは、

その様子に深く息を吐いた。


「……“あいつ”とは、アンネリーゼ様のことですか?」


「そ、そうだ! ほかに誰がいる!?」


ただ呆然としながらも、

自分に言い聞かせるように叫ぶエルネスト。


だが──

この惨状の原因はアンネリーゼではない。


むしろ原因は、彼自身がアンネリーゼを王都から追放したことにあった。


(……いや、理解していないだろうな)


エダンは苦々しく眉をひそめる。


「すべてはあいつのせいだ! あいつが俺に復讐しようと、街を攻撃したんだ! そうなんだろう!? なぁ、そうなんだろう!?」


自分は悪くないと証明してほしいのか、

すがるようにエダンの腕を掴むエルネスト。


しかし──

エダンが首を縦に振ることはなかった。


エダン・アズラール。

アズラール伯爵家の三男であり、オレールの兄。


イアンに頼まれ、エルネストの側近として潜り込み、

この四年間、監視を続けてきた。


本来ならアンネリーゼと共に神官騎士になるはずだった。

だが、弟オレールの熱意に負け、その座を譲ったのだ。


そして、周囲に興味のないエルネストは、

彼が“アンネリーゼ側”の人間だということにも気づいていない。


(……早く、ラファリエールに戻りたいものだ)


陽の光すら届かぬ空を仰ぎながら、

エダンは静かにため息を吐いた。


***


沈黙が、二人の間に沈み込む。


風は止み、空気はまるで濡れた布のようにまとわりつき、

瘴気の匂いが土と血の臭気を混ぜ合わせて街を這う。


その重苦しさは、

王都そのものが敵に回ったかのような錯覚さえ覚えさせた。


その時、少し離れた場所から、

一人の少年が恐る恐る近づく。


「どうしたの? 大丈夫?」


その声は、瘴気の中に差し込む一筋の光のようだった。


だが、エルネストは少年の顔を見た瞬間——


「う、うわぁぁぁっ!! や、やめてくれ……ぼ、僕は何も悪くないんだ!!」


悲鳴を上げ、少年を突き飛ばした。


尻餅をついた少年は、呆然と彼を見上げる。

周囲の人々も不安げに視線を交わした。


「……大丈夫? ごめんね。このお兄ちゃんは少し疲れてるんだ。心配してくれてありがとう」


エダンは少年の手を取って立たせ、

優しく微笑み、この場を離れるよう促せば、

少年は何も言わず、こくりと頷いて去っていった。


そして──再び訪れる沈黙。


灰色の空。風はなく、街を覆う瘴気が静かに這う。


エダンがどうしたものかと考えていれば、

その静寂を破ったのは、目の前にいる男の狂気の笑い声だった。


「ふ……ふはは……んひひひひ!!」


「ふはははははは! そうだ、僕は悪くない! 悪いのは全部……あの女だ!!」


エルネストの目は虚ろで、焦点が合っていない。


焦りが、恐怖へ。

恐怖が、否認へ。

そして──否認が、狂気へと変わっていく。


「いいことを思いついた……! あの女が仕事を放棄して、セラフィエルの地に逃げ込んだことにしよう!」

「そうだ……そのせいで、王都が瘴気に覆われたんだ!」

「ふひひ……そうだ! あいつが魔物を王都に送り込んでいることにしてしまえばいいんだ!!」


その口元には、歪んだ笑みが浮かんでいた。


……彼が気づいていないだけで、

その言葉を民衆が一字一句、聞いていた。


「……仕事を放棄した?」

「……魔物を送り込んでいる?」


その噂は瘴気よりも早く、街中に広がっていく。


アンネリーゼが怠けたのではない。

もっと前に、彼女は追放されていたのだ。

——王族によって。


そして、人々は知る。

王都を覆うこの瘴気の本当の原因が、誰にあるのかを。


だがその真実を知らぬまま、エルネストは高笑いした。


「ふははは! これでいい、これで僕は悪くない!!」


アンネリーゼを“厄災”として仕立て上げ、

自ら討伐隊を率いてセラフィエルへ向かうことを決めた。

王族の名誉を守るために。


しかし、民衆はもう知っている。

——悪いのは、アンネリーゼではなく王族だと。


(……やれやれ、これ以上は付き合ってられないな)


エダンは小さく呟き、王都を後にした。


***


そしてその頃──


王都が滅びの淵にあることなど、露ほども知らないアンネリーゼは、


「私、海が見たいわ! 昆布に魚、タコにイカ……んふふっ、おいしい海鮮が食べたいの!!」


満面の笑みで、旅支度を始めていた。


──その笑顔が、

やがて世界の運命を動かすことになるとは、

この時、誰一人知らなかった。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

ついに第二幕開始です♪

次回、21:10更新予定です。

よければ【ブクマ・評価・感想】で応援してもらえると嬉しいです✨


「さぁ!!海にいくわよぉぉぉ!」


それでは、次回もお楽しみに!

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