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荒地に追放された食いしん坊聖女はいつの間にかラスボス認定されていたようです!!  作者: ゆずこしょう
食いしん坊聖女、十五歳になる!

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26/112

久しぶりの再会。

ラファリエール公爵家からの手紙が王宮に届いたその日、王都の空には重たい雲が垂れ込めていた。


エドワーズ王は、机の上に広げた古地図をじっと見つめていた。

そこには、かつて帝国だった頃の境界線が描かれている。


「……ラファリエールが独立を宣言するということは、セラフィエルの門も開けるつもりなのだろうな」


ルシフェール国が成立してすぐ、セラフィエルの地は強固な門で封印された。

表向きには「瘴気から国を守るため」とされていたが、実際には――報復を恐れたルシフェール王族が、自ら門を閉ざしたのだ。


おそらく、初代ルシフェール王は気づいていた。

セラフィエルが滅びた後、瘴気濃度が異常に上がった理由に。


そして目をつけたのがラファリエール領だった。

ルシフェールが瘴気に苦しむ中、ラファリエールだけが以前と変わらぬ清浄を保っていたのだ。


王は一つの仮説を立てた。

――ラファリエール家は、瘴気を抑える何かを知っている。


初代王はすぐに動いた。

ラファリエール家を公爵家に引き上げ、その娘を側室として王宮に迎えたのだ。


「エルネストの奴……何も知らんとは。まったく、ルシフェールの血が泣いておる」


エドワーズは地図から視線を外し、深く息を吐いた。

その瞬間――ガチャリ、と扉の音が響く。


「……父上。お呼びでしょうか?」


のんきな声。

エドワーズは、顔を上げる気にもならなかった。


「エルネスト。アンネリーゼは……どうした?」


まさかの問いだったのか、「ぐぇ!?」と、蛙が踏まれたような声を上げるエルネスト。

あまりの間抜けな音に、部屋の空気が凍りつく。


エドワーズは黙ったまま、無表情で息子を見据えた。

その沈黙は、怒号よりもはるかに恐ろしい。

重く、冷たく、時間そのものが止まったようだった。


……にもかかわらず。


エルネストはまったく空気を読まず、笑顔のまま話し始めた。


「アンネリーゼって……僕の婚約者だったとかいう、あの小娘ですか? でしたら、僕に楯突いたので婚約破棄して王都から追放してやりましたよ!」


まるで「今日の昼食はパイでした!」くらいの軽さで言い放つ息子に、エドワーズは無言で拳を握る。


ゴスッ。


鈍い音が響いた。


「ぐぉふっ!?」


殴られたエルネストは、カエルから魚へ進化したように口をパクパク。

それでも、何が起きたのか理解できていない。


「お、お前……な、な、何をしたかわかっているのか!? いつアンネリーゼを追放した!?」


「え? 一年くらい前ですかねぇ~?」


お菓子の賞味期限を答えるくらいの軽さだった。


「い、い、一年も前だとぉぉぉぉ!?」


王の絶叫が王宮に響き渡る。

……だが、一年間気づいていなかった王も王である。

滑稽なのは、息子か、それとも父か。

どちらにしても、国を滅ぼすのはこの親子のどちらか――そんな未来が、すぐそこに迫っているようだった。


そんな親子劇が繰り広げられている間に――


アンネリーゼは、久しぶりにダミアンとイアンと再会を果たしていた。


***


「「アンナ!!」」


神殿の外。瘴気の薄れた風の中で、アンネリーゼは懐かしい声を聞いた。

振り向くと、そこには父ダミアンと兄イアンの姿があった。


「お父様! イアンお兄様まで……どうしたんですか?」


「イザークが門を開けてくれた。セラフィエルの瘴気が薄まっていると聞いてな。……まさか、ここまでとは」


空を見上げれば、うっすらと青が戻っていた。

一年でここまで浄化が進むとは、誰も想像していなかった。


「本当に……あの頃の空みたいですね」


アンネリーゼの声に、二人は穏やかに頷いた。

だがその表情には、言葉にしづらい重みがある。


ダミアンが一歩前に出た。


「アンナ。お前には伝えておかなければならないことがある。――お前の“力”についてだ」


アンネリーゼはきょとんとした顔でケルネリウスを見た。

ケルネリウスも首を傾げる。


「力って……浄化のことですか?」


イアンが頷いた。


「そうだ。その浄化の力、お前は他の聖女の何十倍も強い。浄化石を作れる聖女なんて、お前だけだ」


「……あっ」


思い返してみれば確かに、他の聖女は“浄化”こそできても、“力を溜める”ことはできなかった。

アンネリーゼが込めた浄化石を使って、ようやく浄化水が作られていたのだ。


「しかも、無詠唱で結界を張れるのもお前だけだ。普通は祈り歌が必要だ」


ケルネリウスも頷く。


「確かに。……アンナの力は異質だ」


アンネリーゼは一瞬だけ黙り込み、そして――


「どうやったらこの力を使えるか……ずっと悩んでました。でも、これで前に進めそうです。私は今まで通り、魔物を食べ……じゃなかった……ごは……じゃなかった……討伐していけばいいということですね!!」


(今……魔物を食べればいいとか言おうとしたな……)


三人の視線がそろってアンネリーゼに向き、無言のまま「やっぱりな」と言いたげに微笑んだ。


「……あぁ、やっぱりお前は強いな、アンナ」


父の言葉に、アンネリーゼは照れくさそうに笑う。


――その時。


ぐぅぅ~~~。


お腹の音が鳴った。


三人が顔を見合わせ、同時に吹き出す。


「んふふ……色々考えすぎてお腹が空いちゃいました。神殿に戻って、ご飯にしましょうか!」


明るい笑い声が、澄んだ空に吸い込まれていった。

優しい風が、彼らの背をそっと押す。


そしてその笑顔の裏で――王都は静かに、崩壊の音を立て始めていた。

「お父様…ちょっと見ない間に、なんだか丸くなられたような気がするんですが…。」

「い、いや、これは着膨れしているだけだ!!」

「やっぱり美味しいもの食べると幸せですもんね!!」

「そうだな!!さぁ今日は何が食べられるのか楽しみだ。」

((この二人…やっぱり親子だな…))


✿ここまで読んでくださってありがとうございます!


次回は“お待ちかねのご飯回”!?

果たして無事にご飯にたどり着けるのか――


明日8:10更新予定です♪

それでは、次回もお楽しみに✨

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― 新着の感想 ―
アンネリーゼの大聖女らしからぬ行動力が魅力的です! 食いしん坊には意味があったんですね。 テンポが良く、サクサクここまできました。 次の展開も楽しみです✨応援してます!
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