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荒地に追放された食いしん坊聖女はいつの間にかラスボス認定されていたようです!!  作者: ゆずこしょう
食いしん坊聖女、十五歳になる!

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変化。

五章始まります♪

「うん!! 水の浄化も問題ないわね!!」


魔物アンギーラを討伐してから、三ヶ月。


以前は魔石を二十個入れても三日と持たずに紫色へと濁っていた川の水が、今では——

たった一つの魔石で一ヶ月以上、透明を保つようになっていた。


念のため田んぼに沈めておいた魔石も、変化なし。

透明のまま、穏やかに光を返している。


「稲も順調ね。もうすぐ収穫できそうだし、楽しみだわ!」


田んぼ一面に広がる黄金色の穂は、まるでオリザールスの頭とお揃いのように風に揺れていた。


アンギーラを倒したあの日から、この地には確かな“変化”が訪れていた。

瘴気で覆われていた空に、再び日差しが戻ってきたのだ。


プロセルピナ神殿の周囲にも朝と夜の区別ができ、以前のように“お腹のすき具合”で時間を測る必要もなくなった。


「それにしても……オリザールス、あなたもずいぶん変わったわよね」


もう一つの変化は——彼自身だった。

毛皮の色が黒から白銀に変わり、まるで雪をまとったような神々しさを帯びている。


そう、稲熊は熊ではなかった。

“シロクマ”だったのだ。


「あぁ、僕も驚いているよ」


以前は文字を書くか、頭の稲で感情を表すしかなかった彼が——


今では、はっきりと“言葉”を話すようになっていた。


「それに、この世界で生まれ育った記憶も思い出したんだ。ずっと霧がかかっていたみたいだったけど……今ははっきりしている。ありがとう、杏菜」


頭の稲がふわりと揺れる。

その様子に、アンネリーゼは照れくさそうに笑った。


「ふふ……なんだか、くすぐったいわね」


頬を赤く染めた彼女の姿は、いつもの“食いしん坊聖女”ではなく、

まるで年相応の少女のようだった。


柔らかな風が吹き、穏やかな時間が流れる。


——その空気を断ち切るように、ケルネリウスが口を開いた。


「悪いが、一つ聞きたい。……オリザールス。人としての記憶を思い出したというが、戻れる見込みはあるのか?」


静寂が落ちる。

稲の揺れる音だけが、三人の間を通り抜けた。


「いや……無理だろうね。記憶は戻ったが、僕の肉体はもう死んでいる」


「「えっ?」」


二人の顔がそろって固まる。

オリザールスは、その反応にくすりと笑った。


「そんな顔、初めて見たよ。まあ、無理もないけどね」


視線を稲へと戻し、ゆっくりと語り出す。


「僕はウリエール領の領主の息子だったんだ。……日本風に言うなら、アンナのご先祖にあたるだろうね」


アンネリーゼの瞳が一瞬、大きく見開かれる。


セラフィエルがまだ帝国として存在していた頃——

この辺りは一つの大地として穏やかに栄えていた。


だが、ある日突然ルシフェール領主が反旗を翻す。

セラフィエルの王、レオボルド・ミカエリス・セラフィエルは争いを避けようとしたが、

多くの者がルシフェールへと流れ、やがて帝国は分裂した。


そして——戦が始まった。


「巻き込まれたウリエール領は、見事に敗北。そして……僕は死んだはずだった」


稲が風に揺れ、さらさらと音を立てる。


「……でも、ここにいる」


アンネリーゼの呟きに、オリザールスは頷いた。


「そう。たぶん魂だけが、魔物と同化してしまったんだと思う。

ウリエールの血には“前世の記憶を持つ者”が生まれることがある。

僕もその一人だった。……だから、記憶を残したまま魔物になれたのかもしれない」


彼は穂先を撫でながら、少し寂しげに笑う。


「つまり、瘴気はただの毒じゃないかもしれない。人の魂や、負の感情の集合体——そんな気がするんだ」


ケルネリウスが眉を寄せた。


「……瘴気が人の感情の残滓、ということか?」


「そう。憎しみや怒り、悲しみ、苦しみ。

戦争の中で生まれたそれらが、形を変えて瘴気になった。

だから、戦の跡地ほど濃度が高い。……もし、そうだとすれば——」


オリザールスは稲を見つめたまま、静かに言葉を落とす。


「僕みたいに苦しんでいる魂が、この地にはまだたくさんいるはずだ」


その声には、祈るような響きがあった。


そして彼は深く頭を下げる。


「君たちに頼みたい。この地に眠る人々の想いを、どうか浄化してくれないか。

このセラフィエルを、もう一度緑豊かな土地に戻してほしい」


風が、稲を優しく撫でていく。


少しの沈黙の後——アンネリーゼが微笑んだ。


「……わかったわ、ご先祖様の頼みだもの。

できる限りやってみる。でも、“おいしそうな魔物”はしっかり調理させてもらうわよ?」


「ははっ……それでこそ、杏菜だね」


稲穂が陽の光にきらめき、三人の笑い声が風に溶けていった。


「つ…ついにここまで来たわね…十五年…長かったわ。」

「よ、良かったな…(泣くほどの事だったのか!?)」

「リースだってあの味を知れば戻れなくなるんだから。楽しみにしてなさい!!」

「そ、そうか…。」


✿ここまで読んでくださってありがとうございます( .ˬ.)"


第五章、いよいよスタートです!

十五歳は変化の年――アンネリーゼに何が起きるのか…。


そして、ついに“あの味”が登場!?

明日8:10更新予定です。お楽しみに✨

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