遭遇!?巨大土蟹クラーブン!!
「じゃあ、この荒地をどうしていくかね。まず私は魔物をたべ……じゃなかった、観察と討伐に行くわ! どんな魔物がいるか知っておくのは大事だもんね!」
「「「「「(今、“食べたい”って言いかけたよね!?)」」」」」
集まっていた五人は、心の中で同じツッコミを入れる。
だが、当のアンナ(アンネリーゼ)は気にも留めず、堂々と話を続けた。
セラフィエルの荒地には強力な魔物が多く棲むと言われている。
だが、その詳細を知る者はいない。
これまで何度も調査隊が派遣されたが、生きて戻った者はいなかったのだ。
……そんな場所に自ら行こうとするアンナ。
ただ一言で言えば――「アンナだから」で片づく話だった。
「それでね、この辺りに畑を作ってみようと思うの。だからエリザベッタ、いつものお願いできる?」
エリザベッタは指で○を作り、「オッケ~」と軽く返す。
「おい、ちょっと待て。いつものってなんだ?」
ケルネリウスの質問に、アンナは「あっ」と小さく声を漏らした。
すっかり説明を忘れていたらしい。
「えっと、それは後で話すわ! キャスバルは上下水道の設置お願い。オレールは神殿の修繕、アレットは魔石の加工ね!」
次々と指示を飛ばすアンナ。
まるで指揮官のように早口で、だが全員が即座に反応した。
「りょ~か~い!」
理解しているのかしていないのか、返事だけは元気にして出ていく四人。
どうやら慣れているようだった。
この四人――アンナの幼なじみでもあり、彼女の数々の「実験」に巻き込まれてきた犠牲者でもある。
魔石の特性を試すために一緒に研究したこともあった。
「前世では“魔力を溜める石”って言われてたのよ!」
――というアンナの一言から始まり、最終的には“魔石を浄化して水に沈めるとエネルギーが貯まる”という発見に至った。
つまり、彼女たちはアンナが何を考えているか、すでに察して動いているのだ。
全員が部屋を出ていくと、アンナは嬉しそうに笑ってこちらを見た。
「じゃあ、私たちも行きましょうか!」
「……待て、アンナ。」
背後からケルネリウスに襟を掴まれ、首がギュッと締まる。
「ぐ、ぐるじぃぃ……!」
「行くのはいいが、先に話せ。説明がまだだろ。」
「ふ、う、ふふ……?」
上目遣いで誤魔化そうとするアンナ。
ケルネリウスは額に手を当て、深い溜息を吐いた。
「……(この顔に弱いんだよな)……分かった。魔物が出るまでに話してくれ。食料の確保の件もあるからな。」
「うん! ありがとう、リース!!」
勢いよく抱きついた瞬間――「ミシミシ」と嫌な音が鳴った。
「い、痛いっ! わかった、折れる! 離れろ!!」
必死にアンナの額を押して距離を取るケルネリウス。
だがアンナは恥ずかしがっていると勘違いして、さらに力を込める。
「(死ぬ……これは本当に死ぬ……!)そ、そうだアンナ、早く魔物を“食べ”たいだろ? 外へ行こう!」
その言葉にアンナの目がキラリと輝く。
「いいの!?」
「……ああ。(やっと息ができる……)」
こうして二人は、準備を整え神殿の外へと向かった。
***
「なんか、この辺――穴、多くない?」
神殿を出て一時間ほど。
陽の光が差さない荒地では、時間の感覚も曖昧になる。
「確かに……大きな穴ばかりだな。この中に落ちたら、戻ってこれないだろう。」
一番近くの穴を覗き込むと、底は見えない。
暗闇の奥から吹き上がる風が、ウォー……と低く唸った。
その瞬間――
“ジョキン、ジョキン!”
地面を突き破り、巨大なハサミのようなものが飛び出す!
「あぶなっ!? 大丈夫!?(あれ、蟹!? 蟹よね!? きゃああ、蟹が食べられるなんて最高じゃない!!)」
ケルネリウスの首が刈られる寸前、アンナが彼の頭を掴んで後方へと飛び退く。
高台に着地すると同時に、ドンッと地面へ叩きつけられたケルネリウスは、息を整えながら呟いた。
「(アンナに……殺されるかと思った……)」
アンナは心配そうに覗き込む――が、目は明らかに輝いている。
興味の対象はケルネリウスではなく、あの“ハサミ”だった。
(……もう少し加減という言葉を覚えてくれ。)
高台から見下ろせば、穴の中に蟹のような魔物の姿。
アンナはうっとりと呟いた。
「ふふふ……あれ、名前あるのかしら?」
「初めて見るな……多分、ないだろう。」
「じゃあ、私が名付けるわ。ん~……巨大蟹のクラーブン、にしましょう!」
そう言って大きなフライパンを取り出すと、アンナは勢いよく振り下ろした。
ドゴンッ!!――地面が揺れ、クラーブンは土に潜り、別の穴から飛び出す。
巨大なハサミがアンナを襲うが、風圧で跳ね上がったアンナが軽やかに回避する。
「ふふふ、いいわね……腕が鳴るわぁ! こう見えて私、モグラ叩き得意なのよ!
あっ、でも今のはモグラじゃなくてクラーブン叩きね!」
ヴォン、ヴォンッ!
フライパンを上下に振るたび、空気が唸る。
アンナは地面をトントンと三度蹴り、空へと跳ぶ。
頬は紅潮し、瞳は獲物を見据えていた。
「さぁ、始めましょ? 私たちのクラーブン叩きゲームを――!」
「リースちょっと聞いて! 私たちのこと応援してくれてる人がいるんだって!」
「ほんとか!? ……ってお前…蟹と遊んでるだけじゃないか!?」
「うるさいわね! 美味しい蟹料理を食べる…じゃなかった。この地の平和のために戦ってるのよ!?」
「あぁ~はいはい…」
✿今日も読んでくださってありがとうございます✨
次回もアンネリーゼたちの美味しいご飯をお楽しみに!
明日8:10更新予定です♪




