表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒地に追放された食いしん坊聖女はいつの間にかラスボス認定されていたようです!!  作者: ゆずこしょう
食いしん坊聖女の決戦。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/112

歌にのせて。

「なんだか……さっきから王都の方に、黒い靄みたいなのが流れてるわよね……」


アンネリーゼがレリアと対峙していたその頃――


王都の中央広場では、

メメント・ムーンとメメント・ソレイユのメンバーが空を見上げていた。


普段の空には存在しない“黒い靄”。

それが糸のように細く束になって、王城へ吸い寄せられるように流れていく。


「ち、ちょっと……あれ、見て……!!」


ティアナが震える手で王城の上を指すと――


王城の高さを軽く越えるほど巨大な“黒い球体”が、

脈打ちながら膨張していた。


ボコ……ボコ……ボコ……


生き物そのもののように形を変え、うねり、蠢く。


真っ黒な球体が、瘴気を集めて形を変えていくのが見える。


「な、なにあれ……?」


「……生きてる……?」


誰かが呟いた瞬間、球体が大きく震えた。


ドクン……ドクン……


その鼓動は、王都の石畳すらわずかに震わせ、足裏へと伝わる。


空気が波打ち、風向きがねじ曲がる。


そして――


「あ、あれは……花の……蕾……?」


黒い球体がゆっくりと裂け、

“巨大な蕾”へと姿を変えていった。


蕾が脈動するたびに、黒い靄が吸い込まれ、

一瞬、青空が広がる。


しかし、次の瞬間――


蕾から、先ほどよりも強い瘴気が溢れ出し、町の中を覆った。


「あ、あれは……生きているのかしら……?」


咳き込む者、息が詰まり顔をしかめる者。


「ゴホッ……ゴホッ……」


アンネリーゼと旅をしたことで、

瘴気に耐性ができていたはずなのだが――

それでも、濃度が高すぎる。


「ゴホッ……ゴホッ……これ……空気が……重い……」


クロエが胸元を押さえ、息を呑む。


「クシュッ……クシュッ……目が……

ちょっと痛いわね……」


フィナは涙を拭いながら、何とか前を見据えた。


各々が、この状態を“まずい”と感じた、その時――


何かを思い出したように、ティアナが明るい声を上げた。


「あ、そういえば……何かあった時のためにって……

これを持たされたの、忘れてたわ」


風呂敷をドサリと出し、包みを広げる。


そこには、アンネリーゼ特製のハンバーガーが入っていた。


「え!? いま!?」


「もっと早く出せたんじゃないの!?」


このタイミングで出したティアナに、

思わずツッコミを入れるジュリナとノアール。


「そんなこと言うなら、食べなくてもいいわよ!!」


ティアナはハンバーガーを配り、自分も一口かじる。


「やっぱり……これよね」


ミレイユはほっと一息つき、

王城の方をもう一度見上げた。


「アンナ様……本当に……大丈夫なんだよね……?」


クロエは唇を噛み締めたまま言う。


ハンバーガーを持つ手が、小刻みに震えている。


いつも落ち着いた表情のジュリナも、

その目に不安の色を浮かべていた。


ティアナも、声が裏返りそうになりながら呟く。


「アンナ達のこともだけど……

私たちも、結構やばいと思う」


「あぁ……今は何とかなっているが……」


「周りの魔物……数が……増えてきてるな」


胸の奥が、ぎゅっと締めつけられるような沈黙が落ちた。


これまで経験したどんな危機よりも重く、冷たい――

まるで“絶望そのもの”が街を包んでいるかのようだった。


誰も言葉を続けられない。


声が出ないのではない。

“言葉という概念”が、奪われていく。


(このままだと……アンナが……)


(わたしたち……見てるだけ……?)


喉の奥が苦しくなるほど悔しくて、

でもどうしようもなくて、胸がぎゅっと痛む。


そのとき――


パチン!!


空気を断ち切るように、ミレイユが手を叩いた。


がたがた震える足を、必死に押さえつけながら。


それでも、前だけを向いて。


「わ、わたしたちは……

歌うことしかできないわ!

アンナのために――今は、歌いましょう!!」


その声に、全員の視線が集まった。


足だけじゃない。

手も、口も、声も震えている。


それでも――

目は、逃げていなかった。


クロエがゆっくりと息を吐き、

震える足を止めるように叩き、立ち上がる。


「……そうだね。

私たちに……できることを」


続くように、皆が立ち上がる。


「アンナ達に――歌を届けましょう!」


「癒しの力を……」


「浄化の力を……」


「防御の力を……」


「攻撃の力を……!」


「「「「全部――歌にのせて!!」」」」


声が重なった、その瞬間。


空気が、ふるりと震えた。


覚悟がひとつになった、そのとき――


王城へと続く石畳が白く光り――


ポンッ、ポンッ……


柔らかな音を立てながら、

白い百合の花が次々と咲き始める。


風に揺れる花は、まるで鐘のように――


チリン……


透明で、あたたかい音色を響かせた。


そして――


百合が一斉に花開いた瞬間、

王都中に音楽が流れ始める。


それはまるで、王都すべてが――

彼女たちの歌を歓迎するかのように。


「届け!! 私たちの思い!」


「レッツゥゥゥゥ~~」


「「「「クッキ~~~ング♪」」」」


――


“聖女は笑顔の歌を響かせ

神官は光の剣を掲げる


キラキラ☆ハート みんなを癒す

ピカピカ☆ソウル 希望を灯す

ドキドキ☆スマイル 勇気をくれる

ワクワク☆ビート 力を満たす


痛みは消えて 勇気が満ちる

涙は光に 変わりゆく


癒しは笑顔 安らぎは力

歌声ひとつで 未来がひらく


戦場はステージ! 仲間とともに!

歌えば奇跡が ここに生まれる!


聖なる歌を 響かせよう

闇も嘆きも 溶けてゆく

この舞台で ひとつになり

癒しの調べは 永遠に続く

みんなの声で 未来へ響け!”


***


~♪~♪~♪


「外から……歌が聞こえない……?」


神殿の中で肩を寄せ合っていた住民たちが、

ぴくりと顔を上げる。


「これは……あいつらが歌っているのか」


「この歌……なんだか懐かしいね」


ラケルはメロディを軽く口ずさみ、

オリザールスは目を細め、遠い昔を思い出すように耳を傾けた。


彼らは聖女たちを連れ、

小さな神殿に身を潜めていたが――


外には依然として、巨体の魔物が徘徊している。


動けば、見つかりかねない状況。


(どうしたものか……)


(どうやって外に出ようかな……)


一人なら突破できる。

だが――背後にいるのは、逃げるだけでも時間のかかる住民たち。


その数、数十名。


声を出すことすらためらう静寂の中、

外から届く歌が、神殿の緊張をやさしく揺らしていった。


試しに外へ出てみると――


そこには、

音楽を奏でながら揺れる、無数の百合の花。


「わぁぁぁ……すごい……」


一人の女の子が、目を輝かせる。


(これなら……何とかなるかもしれないな)


ラケルたちの目に、光が差した。


「行くか……シルトクレーテの所へ」


「これなら、いけそうだね。

戻ろう。シルトクレーテの元に……」


俯いていた人々が、

ゆっくりと顔を上げ、歩き出す。


***


「ふふ……あの子たち。

どんどん強くなってるわね」


「これは……負けられないな……」


その歌は、確かに――

アンネリーゼとケルネリウスの元へ届いていた。


そして、黒百合の蕾は――


今まさに。


完全に“開こう”としていた。

✿いつもアンネリーゼを応援いただきありがとうございます(*.ˬ.)"


「あやつら……また歌が上手くなったのぉ……」


メメント・ムーンの歌を聞きながら、シルトクレーテは昔のことを思い出していそうです。

シルトクレーテは前世でヲタ芸をマスターしていた模様……。

メメント・ソレイユがヲタ芸をマスターする日も近いかもしれません。


次回、21:10更新予定です♪

どうぞ、お楽しみに✨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ