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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
一騎大国
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第十七話:黒がみるもの




レクサノスとの戦は、長引いていた。

国境線は、すでに形を失っている。

奪って、奪われて、押し返して。

どちらが優勢かを、数字でしか測れない段階に入っていた。


だからこそ――

呼ばれた。


十神槍の長、

ハルガン・レイノルト。


戦場に彼が出るということは、

それだけで意味を持つ。

この戦場は、

放置できない。



黒い鎧が、前線に立つ。

圧が、変わる。

空気が、締まる。


周囲の兵は、言葉を失う。

それが、いつものことだった。


「……敵の主力は?」


短く問う。


「既に、投入されています」

「配置は?」

「こちらの想定通りに――」


そこまで聞いて、

ハルガンは視線を上げた。


白。

遠目に、

異様な色が動いている。


最初に目に入ったのは、

サイズだった。


でかい。

比較にならない。


人の形をしているが、

戦場の基準で測る存在ではない。


「……なんだ、あれは」


誰かが、呟いた。


ハルガンは答えない。

視線を、外さない。


白い影が、前に出る。

指示はない。

号令もない。


それでも、

そこが“要点”だと分かる位置に立つ。


次の瞬間。

戦線が、割れた。


派手ではない。

速さも、誇張されていない。


ただ――

必要な場所に、

必要な動きだけが置かれていく。


敵の主力が、崩れる。

連携が、途切れる。


気づいた時には、

レクサノス側の前線は、形を失っていた。


「……終わった、のか?」


誰かの声が、掠れる。


ハルガンは、静かに息を吐いた。


自分が来た理由は、

まだ残っているはずだった。


主力。

切り札。

ここを押さえるために、

自分は呼ばれた。


だが――

その必要は、

もう、なかった。


黒は、動いていない。

剣も、槍も、

一度も振るっていない。


白だけが、

戦場を終わらせていた。


近くにいた兵が、

恐る恐る言った。


「……白の、死神です」


ハルガンは、眉一つ動かさない。


「名前は?」


「……名乗らないそうです」


白い影が、

ゆっくりと戦場を離れていく。


誰も、声をかけない。

誰も、近づかない。


ハルガンは、

その背中を、最後まで見ていた。


強い。

それだけではない。


制度の外にいる。

常識の外にいる。


そして――

壊れている。


黒い兜の奥で、

ハルガンは、確信する。


――これは、放っておく存在ではない。



戦場が、静まる。

勝敗は、もう決まっていた。


黒は、ようやく一歩踏み出す。

自分が出る幕が、

なかった戦場で。


白を、見つけてしまった。

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