第十四話:理由なき無双
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行けと言われた場所へ行く。
前に出ろと言われたら、前に出る。
それだけだった。
戦場は、もう珍しいものではない。
街道。
丘陵。
村を囲む低地。
敵がいる。
斬る。
それ以上の理由は、なかった。
白い鎧が前に出ると、戦線が動く。
押し返されていた線が、押し返る。
詰まっていた場所が、開く。
速い。
無駄がない。
誰かの号令を待つこともなく、
白は、必要な位置に立っている。
剣は、ためらわない。
躊躇も、探りもない。
踏み込めば終わる距離を、
正確に踏み込む。
結果だけが、残る。
「……また、終わったのか」
後方で、誰かが呟いた。
被害は、少ない。
時間も、短い。
理由は分からない。
だが――
白が前に出た戦場は、終わる。
それだけは、はっきりしていた。
報告が上がる。
数字が並ぶ。
撃破数。
突破地点。
制圧時間。
どれも、異常だった。
「使えるな」
誰かが言う。
「前に置け」
誰かが決める。
作戦は、少しずつ変わっていく。
白が前提になる。
白が行けば、終わる。
白が立てば、崩れる。
◇
サダオミは、何も言わなかった。
褒められても、
咎められても、
反応は同じだった。
行けと言われれば、行く。
前に出ろと言われれば、出る。
勝っている実感は、なかった。
達成感も、ない。
ただ、
やらなかった時の結果を、
もう見たくなかった。
◇
配置が変わる。
役割が増える。
呼ばれる頻度が、上がる。
前線に立つ回数も、増える。
それに比例して、
周囲の距離が、少しずつ変わった。
近づこうとする者がいる。
声をかけようとする者がいる。
だが、
白い鎧の前では、
言葉は自然と途切れる。
何を話せばいいのか、
誰も分からない。
◇
ある戦場の後、
呼び止められた。
「少し、話がある」
形式ばった声だった。
簡単な説明。
形式的な評価。
戦果がある。
前に立てる。
だから――
部隊を持て。
◇
サダオミは、頷いた。
拒否もしない。
喜びもしない。
そうなった、
という事実を受け取るだけだった。
「部下は、追って合流する」
その言葉に、
一瞬だけ、間が空く。
逃げ場が、一つ消えた気がした。
◇
前に立つ数が、増える。
守る範囲が、広がる。
それが何を意味するのか、
この時は、まだ分かっていなかった。
白い鎧は、
再び前へ出る。
積み上がっていくのは、
戦果だけだ。
何かを得た感覚は、
どこにもなかった。




