魔界の歩き方 Ⅰ
再開します
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◆
不意に昔のことを思い出した。
RPGゲームをプレイしていた時のことだ。
〝一周目は攻略本は絶対に見ない〟
こんなモットーを掲げているゲーマーは数多にいるのではないだろうか。
かくいう俺もそんなゲーマーの一人だった。
勿論、仕事に追われる中、少ないプレイ時間で全てを網羅し、遊び尽くしたい人もいる。
そんな人は一周目から攻略本を活用していけば良いと思うし、そもそも〝自分で見た冒険を全て〟とし、知らない要素は知らないままで、遊び尽くした〝つもり〟になれることを良しとする人も当然いる。
大いに結構。色々に人それぞれにプレイスタイルというものがあるから面白いと思う。
だからこれは俺の場合の話だ。
とはいえ、紙媒体だった攻略情報は今や、ネットが主流となり、最新情報が随時更新され、誰でもお手軽に最適解を得られる時代だ。
だからこれは、紙媒体だった、正に〝攻略本〟が主流だった時代の話へと遡ることになる。
初期の頃に発売される攻略本には、あえて掲載されていない情報が数多に存在した。
そんな〝わくわく要素〟が残されるには勿論、様々な裏事情があったことは容易に想像出来る。
とにかく、二周目以降のプレイに、そんな〝いい具合〟の攻略本を片手に、入手する情報に更に制限をかけて、攻略本を見る言い訳にしていたような、そんな面倒くさい少年が〝川篠定臣〟だった。
で───
なんで唐突にそんなことを思い出したのかというと。
「あっれ~?確かここにはもう三本くらい木が生えてて その下に虫がおったんやけどなぁ」
「うん いい具合のポンコツっぷりだね!」
『やかましいわい!』と即座に反応してくれた〝ラナクロア~魔界の歩き方~〟攻略本さんを笑顔でスルーしつつ、激動だったここまでの経緯を振り返ってみる。
◆
〝星勇者〟オルティス・クライシスに、またしてもいいように誘導された先の〝テイザール〟での出来事の顛末は、俺の知らないところで、俺の知らない間に、とんでもないことになってしまっていた。
まぁ、なんだ
要約するとだな
信じられるか?俺、国王になったんだぜ?
エドラルザ王国が世界統一を果たしてから初の他国家認定。
本来、絶対に認められるはずもない、そんな例外を通すために国が選んだ、つっこみどころ満載の方法。そんな解決策に都合良く選ばれたのは〝天使〟である俺だったようだ。
多分こうだ。
知らないけど多分こんな感じだ。
「王よ ということで全部 定臣にお任せしましょう」
「なるほど!その手があったか」
絶対言ったよねー!!
知らないけど絶対言ったよねー!!!
〝ということで〟とかアイツ大好きだから絶対言ったよねー!!!
兎にも角にも、そんなとんでもない事が本人の知らないところで勝手に決定された挙句、ポーター結社〝サキュリアス〟の協力のもと〝魔示板〟を通して大々的に喧伝されたのだった。
そしてその段になって初めてそんな事実を知った俺は紅茶を噴いたのだった。
とはいえ、いずれはこの世界を去る身である。
国王などというものを任されても面d…いや、途中で無責任に投げ出すことなど出来ない。
勿論、自分の〝天使〟という肩書こそが大事であるのは重々承知している。
だから名前を貸すこと自体はこの際、了承しようではないか。
「ね?〝国王代理〟のルブラン・メルクロワさん」
ものすごい目が点になった後、案の定〝ぇ、ぃゃ、しかし〟と鳴き声を上げた忠実な部下に全てを押し付k…もとい、お任せすることがその場で決定された。
「サダオミのお陰で国内の不安要素は片付きました」
珍しく真剣な声色でオルティスが言い放ったその言葉を皮きりに、両陣営はいよいよ〝世界の不安要素〟へと着手することとなるのだった。
◇
「と いうことでやって参りました〝魔界〟との境界線」
「崖ね こんな所から飛び降りようなんて思う人はいない崖ね」
「とんでもない崖だわ! こんな所から飛び降りる人なんてきっといないわ!」
「ですよねー」
一行は、この世界での定臣にとっての〝はじまりの地〟に辿り着いていた。
◆
さて、ナチュラルに人様の古傷を抉ってくる〝ちみっ娘〟二人は置いておくとして。
道中で実は魔族だった〝ほうちゃん〟こと〝ホウガン・シュナイド〟から学んだ〝魔界〟のことを整理してみる。
魔界では次期〝魔王候補〟のことを〝勇者〟と呼ぶらしい。
勇者として魔王に挑むには四名の〝支持者〟が必要らしく、その〝支持者〟が当代〝魔王〟の〝支持者〟四名に勝利しなければ〝魔王〟への挑戦権を得られないそうだ。
これはあれだな。一度、思考を打ち切って言わせて欲しい。
四天王きたああああああああああああ
はい、満足しました。
どこの世界でもチャンピオンには特典がつくらしく、自身が〝勇者〟であった時の〝支持者〟がそのまま〝四天王〟と成って防衛するわけでなく、あくまで当代〝魔王〟を支持する者の中から、最強の四名が〝便利魔法〟によって選出され、時がくれば召集されるシステムらしい。
え、これ、やる気満々だったのにスタメン落ちとかあるんだ。
ちなみに〝支持者〟による対決は一度、戦闘を行った者は以降の戦闘には参加が出来ず、勝敗は〝勝ち抜き〟ではなく、〝点取り〟にて決される。尚、二対二で同点の場合は〝魔王〟側の勝利となり、〝勇者〟は称号を剥奪され、生涯、〝魔王〟への挑戦権を失うこととなる。
思ったままに口にしてみる。
「いや、別に〝魔王〟になりたいわけじゃなくてだな」
そう言った俺を一瞥すると〝ほうちゃん〟は更に衝撃的な事実をさらっと告げた。
〝魔族〟は〝血〟に逆らえない。
だから正攻法で〝魔王〟による〝血〟の主導権を無効化する必要がある。
そうしなければ、恐らく、謁見すら叶わない。
「でもそれって 魔族ならの話だよね?」
「そや」
「ちなみに人間にはあまり?」
「関係ない話や」
「ですよねー」
「まぁ初見では気がつかんかったけど」
「けど?」
「ポレフもボスも半分魔族やしな」
「え、いやちょっと待って」
「なんや」
「一回止まろうか! みんなの顔見てみよっか!」
勿論、エレシとシアを除いた全員があんぐりと口を開いていた。




