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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
一騎大国
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第四十七話:並ばない差





 戦後処理は、滞りなく進んでいた。


 戦線は整理され、

 補給は再接続され、

 報告は簡潔にまとめられる。


 誰かが責められることもない。

 誰かが称えられることもない。


 少なくとも、

 表向きは。



 ライアスは、

 詰所の端に立っていた。


 地図の前でもない。

 会議の中央でもない。


 邪魔にならない位置。

 だが、外れてもいない位置。


 これまでと、

 変わらないはずの場所だ。


 だが、

 何人かの視線が、

 そこを素通りしていく。


 意図的ではない。

 避けてもいない。


 ただ、

 そこに「用」がないだけだった。



 名前が呼ばれる。


 ひとつ。

 またひとつ。


 任務の割り振り。

 次の配置。

 補給線の再構築。


 十神槍の名が、

 順に挙がる。


 誰が前に立つか。

 誰が抑えるか。

 誰が詰めるか。


 役割が、

 自然に決まっていく。


 ライアスの名も、

 呼ばれた。


 正面。


 いつも通りの役割だ。


 違和感はない。

 異議もない。



 だが、

 その後だった。


 もう一つ、

 別の話題が出る。


 声は低く、

 報告というより、

 確認に近い。


 結果の整理。


 どこが落ち、

 どこが消え、

 どこが「終わった」か。


 その中で、

 一つだけ、

 扱いが違う項目があった。


 詳細はない。

 経過もない。


 ただ、

 結果だけが記されている。


 それだけで、

 十分だという扱い。



 誰も、

 その名前を呼ばない。


 呼ぶ必要が、

 ないからだ。


 そこは、

 「そうなった」として、

 処理されている。


 ライアスは、

 それを見ていた。


 見て、

 理解してしまう。


 自分の敗北は、

 整理されている。


 理由も、

 配置も、

 記録されている。


 正面で成立しなかった。

 それだけだ。


 だが――


 あちらは、

 整理されていない。


 説明も、

 理由も、

 比較もない。


 ただ、

 結果が置かれている。



 それが、

 差だった。


 並べない差。


 優劣ではない。

 上下でもない。


 役割が、

 違う。


 そう処理されている。


 ライアスは、

 そのことを、

 誰にも言わない。


 言えば、

 理由を探すことになる。


 理由を探せば、

 感情に触れる。


 それは、

 人格者として、

 やるべきではない。



 詰所を出ると、

 風が吹いていた。


 戦場の匂いは、

 もう薄い。


 だが、

 消えてはいない。


 ライアスは、

 一度だけ、

 立ち止まる。


 振り返らない。


 比べない。


 ただ、

 前を見る。


 自分は、

 正面に立った。


 それは事実だ。


 そして、

 正面は、

 最後まで崩れなかった。


 それも事実だ。


 だから、

 自分は、

 間違っていない。


 そう判断するだけで、

 足りていた。



 だが――


 並べなかった。


 それだけが、

 静かに残る。


 その差は、

 まだ、

 名前を持たない。


 だが確かに、

 そこにあった。

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