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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
一騎大国
123/125

第四十五話:終わる側





 戦争は、続いていた。


 正面は、崩れていない。

 押されてもいない。


 十神槍が立ち、

 線は保たれ、

 前線は動かない。


 それが、

 ベイオスディアの戦い方だった。


 だが――


 戦争は、

 正面だけで終わるものではない。



 補給線が、途切れた。


 一本ではない。

 二本でもない。


 気づいた時には、

 複数が同時に、だった。


 理由は分からない。


 斥候が戻らない。

 伝令が来ない。


 村が、

 いつの間にか、

 通れなくなっている。


 地図の上では、

 まだ線は引かれている。


 だが、

 実際の地形では、

 意味を失っていた。



 陣の奥で、

 小さな混乱が起きる。


 命令が届かない。

 確認が取れない。


 敵が来たわけではない。

 戦闘も起きていない。


 ただ、

 終わった場所が増えていく。


 気づけば、

 後方が薄くなり、

 前方が孤立する。


 それでも、

 正面は成立している。


 だからこそ、

 判断が遅れる。



 国境線の外れで、

 ひとつの拠点が落ちた。


 戦闘は、なかった。


 守備隊は、

 姿を消していた。


 次の日、

 別の拠点も同じように消える。


 線は、

 切られるのではなく、

 抜かれていく。


 敵は、見えない。


 だが、

 結果だけが積み上がる。


 物資が届かない。

 指示が回らない。


 前線は、

 戦えているのに、

 戦争が成立しなくなる。



 正面に立つ者たちは、

 まだ、気づかない。


 自分たちが、

 勝っていることに。


 そして同時に、

 すでに、

 終わっていることにも。



 数日後。


 撤退命令が出る。


 敗北ではない。

 崩壊でもない。


 ただ、

 これ以上、

 続ける理由がなくなった。


 正面は、

 最後まで破られなかった。


 だから、

 誰も責められない。


 誰も、

 間違っていない。


 なお、

 正面に姿を見せていた二つの影は、

 その時点で、

 すでに戦場から消えていた。


 金の装飾も、

 銀の気配も、

 後方では確認されない。


 誰が倒したのか。

 どこで起きたのか。


 報告は、

 最後まで上がらなかった。


 ただ、

 次に確認されたのは、

 二人がいたはずの位置に、

 何も残っていない、という事実だけだった。



 国が、

 一つ、

 戦争から消えた。


 グインデルの名は、

 戦場から外される。


 記録上は、

 併合。


 実態は、

 終結。


 後に、

 人々はこう言う。


 ベイオスディアは、

 正面から勝った。


 そして、

 一騎で終わらせる存在がいた、と。


 名前は、

 まだ、

 定まらない。


 英雄とも、

 兵器とも、

 呼ばれない。


 ただ――


 その戦争は、

 その存在が動いた側から、

 終わっていった。


 それだけが、

 事実として残った。

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