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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
一騎大国
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第三十九話:並ぶ位置



 戦場は、すでに終わっていた。


 終わった、というより――

 終わらされていた。


 線は崩れず、

 陣は保たれ、

 余計な追撃もない。


 白が前に出た。

 それだけで、

 戦は閉じた。


 その少し後ろ、

 同じ列に、

 ライアスが立っている。


 前でもなく、

 後ろでもない。


 指示を出す必要も、

 補佐に回る必要もなかった。


 並んでいる。

 ただ、それだけだ。


 白は、

 いつも通りだった。


 構えない。

 名乗らない。

 武器に触れる気配もない。


 そもそも、

 どこに武器があるのかさえ、

 周囲からは分からない。


 戦場に残るのは、

 結果だけだ。


 ライアスは、

 横目で白を見る。


 評価ではない。

 警戒でもない。


 同じ位置に立つ者として、

 確認するような視線だった。


 白は、

 それに応えない。


 視線を返すことも、

 外すこともない。


 前を見ている。


 それで、十分だった。


 号令がかかる。

 後処理が始まる。


 並びは、

 自然にほどける。


 その瞬間、

 横から雑音が割り込んだ。



「はいはい、お疲れさーん」


 軽い声。

 場違いなほど軽い。


 サリド・ヤンだった。


 血の匂いがまだ残る中、

 外套を翻し、

 まるで稽古帰りのような顔をしている。


「いやー、今日も早かったな」


 誰に言うでもなく、

 だが視線は白に向いている。


「俺、出番なかったんだけど?」


 白は、答えない。


 それを気にする様子もなく、

 サリドは肩をすくめる。


「まあ、いいか」


 一拍。

 そして、急に距離を詰めた。


「なあ白」


 呼び止めるでもなく、

 頼むでもなく。


「一杯だけだ」


 白が、

 ほんのわずかに首を傾ける。


 止まらない。

 だが、歩き出しもしない。


 その間を、

 サリドは勝手に肯定と解釈した。


「一杯で済ます気はねーんだけどな」


 楽しそうに笑う。


 少し離れた場所で、

 ライアスがそれを見ていた。


 口は出さない。

 止めもしない。


 白を見る。

 次に、サリドを見る。


 そして――

 何も言わずに、歩き出す。


 白が、

 その背中を一瞬だけ追った。


 追っただけで、

 声はかけない。


 だが、

 足は動いた。


 白が歩き出すと、

 サリドは満足そうに頷いた。


「ほらな」


 理由はない。

 説明もない。


 ただ、

 同じ列に立っていた者たちが、

 同じ方向へ向かう。


 それだけのことだった。


 まだ、

 言葉は少ない。


 だが――

 距離は、確かに縮まっていた。

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