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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
一騎大国
115/125

第三十七話:数歩





 前線へ向かう通路は、広くはない。


 兵が通り、

 荷が運ばれ、

 声が交差する。


 白い鎧が、先に立っていた。


 いつも通りだ。

 前に出る位置。

 誰も、そこを疑わない。


 少し遅れて、ライアスが来る。


 距離は、これまでと同じ。

 詰めすぎず、

 離れすぎず。


 並ぶ――

 はずだった。


 ライアスは、一瞬だけ迷った。


 迷ったこと自体に、

 気づいてしまった。


 人格者として、

 ここで迷うのは正しくない。


 だが。


「……なあ」


 声は、低かった。

 呼び止めるほどでもない。

 聞こえなければ、それでいい程度の声。


 白い兜が、わずかに動く。


 振り返らない。

 立ち止まらない。


 ただ、歩調が揃う。


「最近」


 それだけ言って、

 言葉が続かない。


 用件はない。

 確認も、報告もない。


 白は、何も言わない。


 無視ではない。

 待っている、というほどでもない。


 ライアスは、

 その沈黙を長くしなかった。


「……いや」


 自分で、切った。


 それ以上を言えば、

 理由を探すことになる。


 理由を探せば、

 感情に触れる。


 人格者として、

 そこに踏み込む必要はない。


「気にするな」


 誰に向けた言葉かは、

 はっきりしなかった。


 白は、答えない。


 だが、

 歩調が、完全に揃った。


 ほんの数歩。

 それだけ。


 前線の入口が見える。


 白は、前に出る。


 いつも通り。

 正しい位置へ。


 ライアスは、その背中を見る。


 呼び止めなかった。

 名前も、呼ばなかった。


 声をかけた。

 だが、繋がなかった。


 それでいい。


 そう処理した。


 だから、

 この瞬間の意味を、

 彼はまだ知らない。

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