第三十四話:並んでいる
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前線は、静かだった。
戦闘がないわけではない。
ただ、想定外が起きていない。
配置が機能し、
指示が届き、
結果が出る。
それだけの状態だ。
ライアスは、前に立っている。
いつもと同じ位置。
指示が通る距離。
視界が抜ける高さ。
意識せずとも、
体がそこに収まる場所だった。
少し離れた位置に、
白がいる。
呼んだ覚えはない。
指示した記憶もない。
だが、そこにいる。
距離は近すぎない。
重ならない。
干渉もしない。
ただ、
同じ線上に立っている。
誰かが声を出す。
短い報告。
数字の確認。
視線が、
一瞬だけこちらを掠める。
白を見る。
ライアスを見る。
それだけだ。
比較はない。
評価もない。
配置として、
そこにあるものを見る目だった。
ライアスは、
何も言わない。
変える理由がない。
動かす必要もない。
白は、
前を向いたままだ。
合図を待つ様子もない。
先に出る気配もない。
並んでいる。
それだけの状態が、
自然に成立していた。
ライアスは、
それを確認しない。
確認するほどの異常ではない。
判断するほどの材料もない。
考える前に、
体が次の指示を受け取る。
声を出す。
線を示す。
いつも通りだ。
白が、動く。
指示に従ったのかどうかは、
重要ではない。
結果が、同じだからだ。
戦線が、短くなる。
押し返される。
崩れない。
成立している。
誰かが、
ほっと息を吐く。
誰かが、
次の準備に入る。
白は、戻ってくる。
ライアスの横を通る。
近づかない。
離れもしない。
一瞬だけ、
視界の端に白が残る。
それ以上でも、
それ以下でもない。
並んで立つという状態が、
続いている。
理由はない。
説明もない。
それを、
誰も疑わなかった。
ライアスは、
前を向いたまま思う。
――問題は、ない。
だから、
そのまま進む。
並んだまま。
何も言わずに。




