第三十一話:前提に混ざるもの
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作戦は、簡素だった。
短くなった戦線。
限られた補給。
余剰のない配置。
作戦盤の前に、人が集まる。
十神槍。
参謀。
伝令。
誰も急がない。
だが、無駄もない。
線が引かれる。
正面。
側面。
遮断。
「ここは、十神槍で押さえる」
誰かが言う。
異論は出ない。
続いて、もう一本、線が引かれる。
盤の端。
だが、重要な地点。
「白を、ここに」
一瞬だけ、間が落ちる。
誰かが止めたわけではない。
誰かが考えたわけでもない。
ただ、確認が走った。
十神槍は、十人だ。
それは変わらない。
名簿も、配置表も。
だが――
誰も、その言葉を訂正しなかった。
数を数え直す者もいない。
役割を問い直す者もいない。
「問題ない」
誰かが言う。
理由は、添えられない。
必要がない。
白が行けば、終わる。
それだけが、共有されている。
配置は進む。
十神槍。
補助。
後詰め。
その並びの中に、
白がある。
並列ではない。
上でもない。
下でもない。
ただ、置かれている。
配置表を管理する者が、
一度だけ視線を走らせる。
数字。
距離。
時間。
問題は、ない。
ペンが動く。
修正。
確定。
白の欄に、
特別な印は付かない。
注釈もない。
但し書きもない。
十神槍の席は、十のままだ。
それでも、
白は前に置かれる。
作戦が終わる。
人が散る。
誰も、
その違和感を言葉にしない。
それは、
まだ違和感と呼ぶほどのものではなかった。
ただ――
前提が、
少しだけ増えただけだ。




