第二十七話:白の説明書
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補給線の外れに、兵が集まっていた。
前線が落ち着いたあとの、
半端な時間だ。
仕事は終わっていない。
だが、手は止まる。
「白、使った?」
誰かが言った。
問いというより、確認だった。
「使ったな」
「使えば早い」
それで話は済むはずだった。
ライアスは、少し離れた場所で靴紐を結んでいた。
聞くつもりはない。
聞こえてしまっただけだ。
「白が来るとさ」
「終わりだ」
断定だった。
感想ではない。
「楽だよな」
「被害も減るし」
誰も、白の意思を口にしない。
別の声が混じる。
「でも、来なかったら?」
「長くなるだけだろ」
即答。
迷いはない。
誰かが笑った。
「保険みたいなもんだな」
「最悪、白がいる」
ライアスは、靴紐を引いた。
強くも、弱くもない。
ちょうどいい張り。
「兵器だな」
ぽつりと、誰かが言った。
悪意はない。
むしろ、感心に近い。
「兵器ならさ」
「壊れなきゃいい」
その言い方に、
誰も引っかからない。
別の兵が続ける。
「修理、要らねぇし」
「消耗もしない」
数字の話だ。
ライアスは、立ち上がった。
会話は続いている。
止まらない。
「名前、あったっけ?」
「知らね」
「白でいいだろ」
それで充分だった。
ライアスは、一歩だけ足を止めた。
振り返らない。
口も挟まない。
胸の奥で、
何かが動いた。
不快だ。
だが、
理由を言語化するほどではない。
考えなくていい。
考えなければ、
問題はない。
そう思って、
歩き出す。
背後では、
まだ噂が続いている。
白は、便利だ。
白は、早い。
白は、前提だ。
人の話は、
誰もしなかった。




