第二十三話:白がいない想定
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会議は、滞りなく進む。
声は荒れない。
机を叩く者もいない。
戦況は、安定している。
作戦図が広げられる。
赤は少ない。
線は短い。
「白がいれば、ここは楽だ」
誰かが言う。
異論は、出ない。
続いて、
別の線が引かれる。
「間に合わなかった場合は、
この配置で耐える」
数字が添えられる。
損耗率。
時間。
想定内だ。
白は、
必須項目として扱われない。
白が来れば、終わる。
来なければ、
少し長い。
それだけだ。
別戦線への転用が決まる。
一時的な判断。
理由は、効率。
白は、
別の場所へ回される。
前線は、続く。
終わりは遅れる。
だが、崩れない。
白がいない戦争。
その想定が、
成立する。
兵たちは、言う。
「白が来れば終わる」
「来なければ、
少し長いだけだ」
声に、焦りはない。
不満もない。
事実の共有に近い。
ライアスは、
白のいない前線に立つ。
一瞬だけ、
肩の力が抜ける。
それに気づいて、
すぐに不快になる。
安堵してはいけない。
そう思う。
だが、
理由は深掘りしない。
考えずに済む。
そのこと自体が、
さらに不快だ。
配置表を管理する者がいる。
判断は、合理的だ。
数字を更新する。
白がいない場合。
成立。
白は、
必須ではない。
その判断は、
間違っていない。
白が呼び戻される。
次は、
より奥。
より決定的な場所。
配置表の上で、
白は、また前に置かれる。
理由は、書かれない。
必要が、ない。
白は、
人ではない。
英雄でもない。
必須ですらない。
それでも、
前に置かれる。
世界は、
それを当然として処理する。




