第二十二話:白としての仕事
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前線は、落ち着いている。
混乱が収まった、という意味ではない。
ただ、予定から外れる事象が減った。
併合後の戦場は、作業に近い。
残存の処理。
再配置。
引き渡し。
勝敗を口にする者はいない。
指示は、短くなる。
理由を添える必要がなくなった。
次は、白だ。
誰が言ったのか、
その場にいた者の誰も覚えていない。
命令ではない。
提案でもない。
作業順の確認に近い。
兵は、白に近づかない。
通路を空ける。
視線を逸らす。
礼は、ない。
感謝も、ない。
終わった後の道具に対する距離感。
それに、よく似ている。
白が前に出る。
それを前提に、
後方の配置が静かに組み替えられる。
誰も、口にしない。
戦闘は短い。
布陣が整う前に、終わる。
指揮が届く前に、終わる。
報告に残るのは、完了の印だけだ。
名前は、書かれない。
書く必要が、ない。
白が戻る。
誰も呼び止めない。
確認も、求めない。
次の指示は、
すでに置かれている。
ライアスは、白を見る。
だが、何も言わない。
理由は、分からない。
だが、
理由がないとは思えなかった。
考えるには、
ここは近すぎる。
そう判断しただけだ。
一瞬だけ、
不快感が走る。
理由を掴む前に、
処理する。
思い出すのは、踊り子ではない。
空白だ。
何も書かれていない欄。
ガルハルドは、配置表を見ている。
白の欄は、前線固定。
それを、自然に受け入れる。
合理的だ。
空白を、
一つ残したまま。
白は、戦場を離れる。
背中は、出さない。
人として、
切られる。




