プロローグⅠ「前夜」
俺の名前は、雨宮与四治といい、大日本帝国陸軍一等兵だ。
俺たちは硫黄島にてアメリカ軍を相手に戦っていた。ところが、援軍は最近になり来なくなった。それに加えて、聞いた話では日独伊三国同盟の内、イタリアが降伏。最近ではドイツもどこか頼りなくなっている。
「雨宮さん。少しよろしいですか?」
今、俺に話しかけてきた兵士は、今回の作戦立案者だ。上から目線になるが、作戦の内容は俺から見てもかなりいい作戦なのだ。今も慎重にするために俺に作戦の再確認を行っていた。
「それで、アメリカ軍はこの森の手前まで来るのにどれくらいかかる?」
「――それは私からよろしいですか?」
立案者とは別の兵士が前に出てきた。そして、俺は無言のまま顔を少しだけ縦に振った。
「ハッ! 予想では明日の夕刻だと思われます」
その兵士が敬礼して、声を大にして言った。
「あっちの戦闘機でもさすがに届かない距離か⋯⋯」
「そう思われます」
「よし、そういうことだから明日に備えて休んでくれ」
「――天皇陛下万歳!」
いい終えた後に叫んだ。
「「「天皇陛下万歳!」」」
続いて全員がそう叫んだ。それが解散の合図へとなる。
ココだけの話、実を言うと俺は戦争に反対だった。日本はただでさえ資源が少なく、外国の支援がなければいけないというのに、大国のアメリカを初め、様々な国に戦争を仕掛けた。それは国民の意志ではなく、軍の上層部の暴走が引き金だった。
鉄の塊や、空飛ぶ兵器がうろつくところに誰が喜んでいくもんか。それこそ、死ねと言っているのと同義である。
先程のも好きでやっていない。この中にも俺と同じ考えのやつはいるはずだ。ではなぜ、ここまで昇級できているかというと、猫をかぶった。ただそれだけである。
周りを見回すと、兵士はそれぞれバラバラな行動をしていた。本国にいるであろう妻や子供たちに向けて手紙を書く者や、明日に備えすでに就寝の準備をしている者など様々だ。
それからかなり待ったが全員が寝静まるにはまだまだかかりそうであった。
(そろそろ就寝準備を初めたいが……)
大半の兵士は寝ているが、まだ作業をしているものがちらほらいたため、もう少し見守ることにした。
――それから3時間がたった。一人、他の者が寝る中で、黙々と作業をしていた。さすがに我慢の限界となり、注意することにした。
「もう少しかかりそうですかな?」
その兵士は雨宮よりも少し若く小柄だった。
「すみません。もうすぐ終わります」
その兵士は申し訳なさそうに振り向いた。
手紙を書いていたようだ。その手紙には自分の子供たちへの手紙であった。そこでふと思ったのが――
「――婦人は……?」
つい口に出してしまった。
「妻は私が徴兵される前に空襲でなくなりました」
「あっ! 本当に申し訳ない。そのようなことを聞いてしまって……」
頭を下げた。
「いえ、頭まで下げなくていいんです。今や、子供たちが私の宝です。あの時に子供たちまで失っていたらと考えると……」
「……」
「あなたはお気になさらないでください」
この状況で気にするなという方が無理である。それに、この話題を出した自分に非があると分かっているがために心から謝るだけでは済まない罪悪感でいっぱいだった。
「……私はもう寝るとします」
その兵士は一礼してから自分の布団へ去っていった。
(……このことを深く心に受け止めて明日に臨むとしよう)
心に誓ったのだった。