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01. グレイブ、医師から宣告される

お読みいただきありがとうございます!

短編より加筆修正を行っています。

短編よりヒューマンドラマの要素を多く含めております。

なお、冒頭の部分は世界観の説明が多いので、軽く読み飛ばしていただいても構いません。

 ――転生ポイント。


 【10000ポイント貯まると、その人生で転生が可能になる。

 そのポイントの貯まり方は、人それぞれで法則不明である】



 僕は目の前に座っている医師から質問された。


「ではグレイブさん、この人生の前までは健常者と同じく転生を繰り返していたんですよね?」

「はい」


 医師は何かを書き込むとグレイブの瞳を覗き込んだ。すぐに距離を取ると胸ポケットからペンライトを取り出してグレイブの瞳にいろんな角度から光を当てた。それが終わると医師は紙を取り出して瞳の絵を描き始めた。


「これは瞳の部分ですが、この虹彩部分、グレイブさんなら黒目の部分に上から下へ向かって真ん中を通る白い直線がありません」


 グレイブはそれを聞いて医師の瞳を覗き込んだ。それに答えるように医師はグレイブに近づいて瞳を見せてくる。医師の虹彩は灰色だったので見えにくかったが、たしかに上から下へ向かって真ん中を通る白い直線が見える。


 医師は口を開けたが、また口を閉じてしまった。少し眉をひそめると声を落とした。


「グレイブさんは非常に稀なことですが、一般的に皆が持っている虹彩に白い線がありません。⋯⋯ですが、今まで“転生ポイント”が付かなかったのも納得できます――」



 ■



 グレイブは何本目の魔道機関車を見送ったのだろうか――。


 グレイブは駅のホームのベンチに座り込み両肘を自分のももの上に乗せていた。じっと座りながら、手持ち無沙汰で動かしていた指を見ていたが、ゆっくりと顔を上げる。


 するといくつかの看板が目に入ってくる。


 “楽に転生ポイントを貯める10の方法”


 “最速で転生ポイントを貯める”


 “皆が知らない転生ポイント10000の貯め方”


 グレイブは今までの人生で転生ポイントについて悩んだことはなかった。だから、なぜこんなビジネスが流行っているのだろうと不思議に思っていたが、今はそれさえもすがりつきたい気持ちだった。


 僕はこの人生に転生してきて22年が経った。つまり22歳になのだ。


 だが、前世までの人生とは決定的に違う。


 それは【転生ポイントがつかない】ことだ。


 この転生ポイントは他人からは見えない。だが、この世界の人が必ず持っているものだ。転生ポイントを意識すると目の前に半透明の白い数字が出てくる。



『0』



 目の前に浮かんでいる白い曲線は『ゼロ』なのか、『オー』なのか、はたまた『輪っか』なのか、そんなことを考えてもグレイブの目の前に浮かぶ白い数字は変わらない。



 ――――――



 先ほど行った病院の医師との会話を思い出していた。


 ハリソン医師はこの稀に見る現象を研究しているようだ。ハリソンは生きた世界にそれを見える形で残し、そのいろんな世界に置いてきては紡いでいる。


 そこで共通したのが


【瞳の真ん中に白い線がないこと】


【転生ポイントが『0』のままであること】


 そして


【死ぬこと】


 グレイブは【死ぬこと】については良く分からなかった。


 なぜなら、この世界に死生観はなく、常に転生をし続ける。転生ポイントが貯まると、好きなタイミングで転生出来るのだ。


 だが、その転生先は選ぶことが出来ず、時代も選べない。転生先の身分、見た目などは選べないし、魔法のある世界なのか知らない生き物がいる世界なのか転生によって違う。


 そこで共通しているのは瞳の虹彩部分に上から下にかけて白い線が入っていること、そして転生ポイントがあること。


 転生ポイントが貯まり転生を決意すると、その世界にいる自分は光と共に消えていなくなり新たな世界へと転生するのだ。


 転生ポイントについては10000ポイントより、もっと貯めることは出来るが、多く貯めても次の転生先が優遇されると言うことはなかった。


 それは、あくまでも僕の経験則だ。


 たが、他の人にも話を聞いてみると、皆似たようなことを言っていたので10000ポイントより多く貯めても転生とは関係ないようだった。



 ――――――



 その時、グレイブは誰かが叫ぶ声を聞き、強引に現実へと引き戻された。


「危ない!!!」


 目の前を走る魔道機関車の車輪から火花を散らしながら金属音の高い悲鳴が上がる。


 動く鉄の塊に土嚢どのうのような重く詰まった何かが当たる鈍い音が聞こえた。


 少しして魔道機関車の車輪は悲鳴を止めた。ホームではいつもの停車位置より3メートル先に魔道機関車がついた。駅のホームで見ていた駅員が運転席へと近づく。


 そこへ運転席の扉が乱暴に開いた。ホームにいた駅員に向かって大声を出す。


「人を轢いてしまった!」


 運転手は反対側の窓から顔を出して外を確認すると、また運転席からホームに出て近くの駅員に大声で伝えた。


「線路の邪魔になっていないからこのまま出発する! あとは“人形化ザドール”を頼んだぞ」

「分かった! ”ザドールガレッジ”もこちらで手配しておく。ダイヤが乱れて怒られる前に出発してくれ」


 運転手は慌てて運転手の扉を閉めると、車内アナウンスをした。その後すぐに電車は出発した。


 少し離れたベンチに座っていた人が隣の知人に話しかけていた。


「今、人形化ザドールがすごく増えているんですって」

「そうみたいね、ザドールガレッジがどんどん増設されているみたいよ」


 この世界では【死ぬこと】はない。代わりに心臓が止まる怪我や病気になった際は、通常2通りのどちらかが起こる。


 まず、転生ポイントが貯まっていれば、心臓が止まった瞬間に転生されること。


 もし、転生ポイントが貯まっていない場合は人形化ザドールといって、人形のように動かなくなる。


 それでも転生ポイントは貯まるようで、そのうち転生されるのだ。


 それまで人形化ザドールした人間を置いておくところがザドールガレッジなのだ。


 グレイブは駅からスピードを上げて離れていく魔道機関車を見送った後、ぼおっとそのまま景色を眺めていた。すると駅前のビルに設置された街頭ビジョンが目に入った。ニュースの下にテロップが流れている。


「5人を人形化ザドールした犯人に人形化ザドールの判決がつきました。刑罰の施行は午後から始まりそれが終わり次第、人形化ザドールが施行されます⋯⋯」


 つまり5人殺した犯人に死刑判決が出たということなのだ。ちなみに1人殺せば死刑判決だ。


 “好き勝手やって嫌になったら、転生すれば良い”


 そういう考えをなくすために刑罰として拷問に近いことを受けるようだ。死がないこの世界では心身の苦痛が1番辛いものだろう。聞いた話だと人形化ザドールの人数が多ければ多いほど拷問の時間が延びるらしい。


 それ以外にも転生直前に羽目を外す人が多いため、その抑止力になるように厳しい刑罰は多い。だから、破茶滅茶な人生を送ろうと企む人は多くないのだ。


 それから転生は簡単にはできない。


 今の世界は記録や資料がかなり残っている文明が発達した世界で、その記録によると歴史上最短で転生した人は20年3カ月と11日だ。

 平均すると40年くらいはかかるのだ。


 もう1つは記憶についてだ。


 それだけ転生するなら前世や前前世など膨大な過去のスキルと記憶を使って上手く生きていけるんじゃないか、と考えがちになるが、それは違う。この世界で1番記憶している人は、7回の人生を覚えていた。その人は物心つくと、すべての記憶を紙に書き出していたらしい。


 通常の人は前世と強烈な記憶くらいで、どんどん忘れていってしまう。


 グレイブは家へと帰るとあるものを書き始めた。

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